舞踏会
あれよあれよという間に私はメイド達にドレスを着せられ、化粧を施され、長く黒い髪を結い上げられた。
メイドは私の真っ黒な髪に緊張した面持ちで触れていた。
黒い髪はこの世界であまり縁起のいいものじゃないのかな?
そんなメイドの様子に、変わった髪色だし自分でするわ、と声をかけると、慌てた様子で髪を結い上げてた
。
そして窓から差し込んでいた光が消え、辺りが薄暗くなった頃、扉ノックの音が聞こえた。
メイドは慌てた様子で扉へと向かったかと思うと、急ぎ足で椅子に座っていた私を立たせ、扉へといざなった。
私は促されるまま扉の前に立つと、ゆっくりと外から明かりがさし込んだ。
そこには礼装を纏ったルイスが佇んでいた。
かっこいい・・・似合いすぎでしょ・・・。
彼はブロンドの髪をオールバックのように固め、ビシッとした黒いタキシード姿だ。
私は彼の美しい姿に目を奪われ、言葉を失った。
そんな私の様子に彼は優しい微笑みを浮かべると、徐に手を差し出した。
私は差し出された手に恐る恐る重ねると、彼は強く私の手を握りしめた。
彼に先導されるように、舞踏会の場所へと向かうと、そこは煌びやかな人たちが集まった大きな広間だった。
天井にはキラキラと輝く大きなシャンデリアがいくつも並び、辺りを照らしている。
わぁ、私・・・本当にここに居てもいいの・・・?
私は不安な様子でルイスに視線を向けると、彼は握っていた私の手を緩め、そっと私の手をルイスの腕に回した。
会場へ入ると、貴族たちの視線が一斉に私たちに集まった。
ちょっと・・・勘弁してよ!
私は焦った面持ちで彼に視線を向けると、彼は笑って、と小さく耳元で呟いた。
女は度胸・・・レイラが身に着けていた貴族用のスマイルを思い浮かべながら、私は真似るように微笑みを浮かべ、背筋を伸ばししっかり前を見据えた。
集まった貴族たちは私たちが歩き出すと、綺麗な礼と取り、じっと見つめていた。
私は頬に力をいれたまま、彼に導かれるまま中央の椅子まで歩いていった。
豪華な椅子が見えてくると、そこには懐かしい姿があった。
王子・・・。
私は微笑むことも忘れ、呆然と彼を見つめた。
あの頃私と同じぐらいの年齢だった彼は、髭を生やし、目元には軽い皺が見え、ダンディーな男性に変わっていた。
変わらないのは、ダークブルーの真っすぐな髪と、澄んだ青い瞳だけだ。
「久しぶりだな、スズナ殿」
彼の言葉に正気を取り戻すと、慌てて礼をとった。
彼はどこか寂しそうな様子を見せると、ルイスへ挨拶をする。
王子の隣には見たことのある、気がきつそうな懐かしい顔ぶれが見えた。
彼女はレイラの親友で、気がきつそうに見えるがツンデレな可愛いお姫様だった。
彼女も出会った頃同じ年ぐらいのはずだったのに、今目の前にいる女性は目尻に皺が寄り、あの頃は可愛い感じだったが、今は大人の色気を醸し出していた。
あの頃から・・・何年たったのかしら・・・。
変わっていない自分に少し寂しさを感じながら、私はルイスに連れられるままに席へと着いた。
私が席についてしばらくすると、国王の挨拶が行われ、舞踏会が開かれた。
ふと、貴族たちを眺めていると、デニスと目があった。
いつもすぐに目を逸らしていたデニスだが、今日はじっと私を見据えていた。
デニスもついこの間は私と同じ年ぐらいだったのに、立派な成人男性となっていた。
不思議な感覚に、私はデニスから目を逸らせると、会場に音楽が鳴り響いた。
音のする方へ視線を向けると、ヴァイオリンやピアノなど演奏家たちが優雅に奏でていた。
次第に会場の中央がひらけていくと、音楽に合わせて貴族たちが踊り始めた。
私はぼんやりとその風景を眺めていると、ルイスが私の手を握った。
「踊りませんか?」
「私、踊れないわ!」
彼はそんな私の言葉を華麗にスルーすると、私の手を引き、会場の中央へと誘った。
「本当に踊れないのよ・・・・」
私は泣きそうな表情で彼を見上げるが、彼はただただ微笑みを浮かべるだけだ。
中央へ向かうと、貴族たちが私と王子の道が作るように、移動していく。
そして私たちが中央へ立つと、音楽はなりやみ、貴族達の視線が私たちに集中する。
もう・・・どうするのよ・・・・・!
私は冷や汗をかきながら、ルイスに視線を合わせた。
ルイスは私に笑顔のまま頷くと、聞いたことのある曲が流れ出した。
この曲知っている・・・。
静かに耳を澄ませると、レイラの顔が頭に浮かび上がった。
私、この曲好きなの!スズナも聞いてみて!
この曲はね大切な人に捧げる優しい曲なのよ。
ダンスもあってね、ほらイチ、ニチ、サン!
そこでターン!
そう・・・イチニチサン・・・
私は音楽に合わせて無意識に体を動かしていた。
ルイスはそんな私の腰に手を添えると、サポートするようにステップを合わせていく。
ふと我に返ると、愛しそうに私を見つめていたルイスと視線が絡み合った。
初めて見る彼の大人な雰囲気にドギマギしながら私は顔を赤くした。
次第に音は小さくなり、一つの曲が終わった。
ダンスが終わり、中央から移動すると、ルイスは貴族令嬢達に囲まれた。
あら、やっぱりモテるんじゃない。
私は女性に囲まれた彼から手を話すと、楽しんでと会場を後にした。




