01 アイドル転生
異世界転生、それはもう魅力的な言葉だ。
日々の仕事のストレスを考えてみれば、あんな主人公になってみたい。
異世界転生の主人公はミスをしたり、困難を迎えても何やかんやクリアして成長していく。
だが現実はそうでもなく、ミスをすれば怒られるなりで何やかんやうやむやになって、ストレスが溜まって終わるだけだ。
一人東京の荒波に揉まれていると、一体何やってんだろう。という気持ちになる。
なるほど、家庭を持つというのは、こんな荒波に耐える手段の一つ。家庭の維持という、安直だがこれほど確固たる理由もなかなか無い。そろそろ男ながらに婚活でもするかな、とつい思ってしまう。
だがまだ20代後半。ちょうど金に余裕も出来始めて遊びたい気持ちと、貯金して将来に備えなければという気持ちも芽生え始め、転職など色々と選択肢を考える年齢でもある。
もっとも選択肢はありながらも、当然10代の頃と比べれば選択肢はかなり狭まっている。いや、芸事を軸に生きていく事を考えてみれば生まれた時から選択肢に差が生まれている。
例えばアイドルや俳優。生まれた時の顔で売れるか売れないか、その最低限のラインが決まる。ブサイクなアイドルに金を落とす男はまずいない。
将来、大過なければまだ50年くらいは生きるのだがどうなるのだろうか。
そんな事を考えながら寝入り、目覚めると俺は幼女になっていた。
えっ幼女!?幼女ですか!?
俺は目覚めると同時に、ああ夢の中か…と思い二度寝をかますが、どうやらそういうわけでも無い。
まず思ったのが、会社にどうやって報告しよう、という所が社畜として飼いならされてしまったんだな、と自分に対する憐憫を湧き上がらせる。
次に状況確認。
まず自分は幼女。部屋にある鏡で確認した所、どうやらこれが魔法の鏡でも無い限り、自分が幼女として転生したのは間違いないようだ。
というかこの部屋どこだ?と思ったが、すんなりと自分の部屋として受け入れている自分がいる。
自分が小学校3年生、クラスの男子からはからかわれ、女子からも避けられている。という事。
更に自分の名前が久瀬愛梨、という事。などなど。
ああ、どうやらこの女の子の記憶、9歳まで生きてきた記憶が参照出来るようだ。
これならこの世界に馴染むのも、そう難しい話でもない。と思いつつ、それまでのこの女の子の人格は記憶としてしか残っていない。つまり、自分がこの女の子に転生した?が故に人格を殺してしまったのでは?という恐怖が襲ってくる。
いや、待ってくれ、俺にはそんなつもりは無かった。
怖い…怖い…怖い…
自責の念に囚われながらベッドに潜り込み、怯え、悩んでいる中。
「愛梨ー!朝ごはん早く食べないと遅刻するわよー!」
と、母親が呼ぶ声が聞こえる。




