表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おやすみ、ドラゴン  作者: 墨谷幽
おやすみ、ドラゴン
6/34

6.カレシ

「休さん!」

 学校へ行く途中で、うしろからヨシズミくんに声をかけられた。振り返ると、彼は息をきらしてこっちへ走ってくるところだった。

 ヨシズミくんはわたしのクラスメートなので、当然これから学校へ行くはずなのだけど、なぜだか彼はいつもの制服姿ではなくて私服だった。

「いやぁ・・・この前、またやっちゃいまして・・・」

 頭をかきながら言う。ああ、そっか。またか。

 ヨシズミくんは、大昔に竜と一緒に暮らしていた征竜一族とかいうひとたちの子孫で、まだその力をキチンと抑えられないらしい彼は、時々暴走してしまうんだそうだ。

 たぶん、この前の16号のときに、戦車の一台や二台素手でこわしてしまったんだろう。

 暴走したときのヨシズミくんは、いつもの優しい笑顔からは想像がつかないような怖い顔つきに変わって、まわりのものを見境無くこわしてしまうらしいけど、わたしはその姿を直接見たことはない。

「キンシン?」

「ええ、謹慎。一週間」

 ヨシズミくんは苦笑いを浮かべている。今までにも何回か同じようなことはあったから、もう慣れっこなのかも。

 それからしばらく他愛の無い話をして、ふと腕時計を見るともう一時限目の授業が始まっている時間だったので、わたしはヨシズミくんにお別れを言って学校へ向かった。ヨシズミくんは、わたしに遅刻をさせてしまったことにちょっと申し訳無さそうな顔をしていた。そんなに気にしなくていいのに。

 ヨシズミくんと別れてから、わたしはもうしばらく彼とデートをしていないな、と思った。

 わたしがヨシズミくんにコクハクされたのは、たしかわたしがフランス留学から帰ってきた直後だから、もうだいたい一年のお付き合いになる。それなのに、わたしたちはこれまでにあんまり恋人らしい会話とか遊びをしたことがなかった。わたしはそういうのがよくわからないし、ヨシズミくんのほうから誘われることもあんまりない。

 これなら、別に友達でもそんなに変わらないのに。どうしてヨシズミくんは、わたしと恋人になりたかったんだろう?

 学校へつくまでの間、わたしはずうっと、年下の友達のような恋人のことを考えていた。

 あ、こういうふうに考えるのがコイビトドウシってことなのかな?と思った瞬間、一時限目の授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。

 わたしは教室のドアを開けようとして、中から出てきたナカムラ先生におこられた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ