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おやすみ、ドラゴン  作者: 墨谷幽
おやすみ、ドラゴン
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2.親友その一

 とら子ちゃんはいつも無表情だ。彼女が笑ったり泣いたりしているところというのを、わたしは一度も見たことがない。

 でも、それは彼女が特に無愛想というわけではなくて、自分に表情を変える機能が無いからだ。と、いつだかそんな話をとら子ちゃん自身から聞いた。

 わたしたちの通う鈴比良市立ゆうぜん高等学校の兵事部には、彼女のようなアンドロイドが何人かいる。いずれも戦闘用のアンドロイドで、訓練中なんかには人間にはできないようなすごい動きを見せてくれたりする。

 友達の中には、アンドロイドと話したがらない人が結構多い。無表情で怖いんだそうだ。彼女たちの話す並列圧縮言語も良くわからないんだとか。

 でもわたしは、ちゃあんと話してみればみんないい人たちばっかりなんだ、というのを知っている。ハヤりの服についてとか、おいしいケーキのお店の場所とか、相談ごとにだって乗ってくれるのだ。

 だから、とら子ちゃんはわたしの親友だ。

 時々、わたしがとら子ちゃんの愚痴を聞いてあげたりもする。

「Dragon and Tigerだから”とら子”なンテ。ナンセンスってゆーかno sence・・・」

 そんなはなしをするときでも、彼女はやっぱり無表情だったけど、声だけは不機嫌そうなのがちょっと面白かった。彼女には悪いけれど。

「そもそも、ライフ is フリーダム。birth前に引かれたレール、ノーセンキュウ。生まれちゃったカラにはいろんなlife-styleしてみたい。L・O・V・Eトカ・・・」

 そう言うとら子ちゃんは至って普通の女の子で、まるで厳しいお父さんやお母さんのいる女子高生みたいだった。言葉がほんのちょっぴりわかりにくいだけで。

 彼女たちにももう少し自由があってもいいんじゃないかなあ。といつも思う。何しろ、彼女たちアンドロイドは、何かあったときにはいちばん頼りになる存在なのだから。

 その日は、学校帰りにとら子ちゃんとショッピング街の古着屋へ寄った。千円のジーンズを買った帰り、わたしはとら子ちゃんに声をかけた。

「今度、一緒にカレーパン食べにいかんー?」

 とら子ちゃんは、少しだけ笑った。ような気がした。

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