気の谷間 族長会議
谷間の奥にある、湖にリンとそびえる険しい岩山のふもとにパリスの住まいでもある岩屋はある。
ムーンを馬番にあずけて中に入り右の下に下る通路の突き当たりにある『龍の間』に向かった。
壁に黄金の龍を彫り込んだ洞穴に各地の部落の長が集っていた。
パリスが入ると手を胸の前にあて全員お辞儀をした。
ミモザが黒い石を置いた台座に腰かけるとターンと白いタイガーの姫を従えた地族の長ルパが槍で地をうった。
「帰りが遅くなりすまなかった。まずこのひどい有様になった訳をききたい。」
パリスが皆をみわわす。
一番こがらな鳥の長がパリスのまえに進み出た。
「ご報告しなくて申し訳ございません。ティアラがこの頃、闇の者の動きが酷くなったとさわいでおりました。まさかミィスリルに近いここまで攻めてくるとは我々も思っていなかったのです。」
鳥に乗って守りをしていたのだろう顔が疲れきっていた。
長たちは静かだ。
闇が近づいてきていることは皆知っていたのだ。
ただこの地はだいじょうぶだと思っていたので皆、油断していたのだ。
「パリス様、私は誠に恐ろしい魔物を目撃いたしました。あの銀色の兵士は我々の槍は聞かないので苦戦いたしました。
兵士の侵略が止まったときでした。荒々しい突風と共に我々どころかメト達までが動けなくなりました。しばらくすると魔物は現れました。光の綱を使いタイガー達を捕らえたのです。なんて恐ろしい。闇付きのものでも捕らえるなんていたしません。」
長達がルパの言葉でざわめいた。
パリスもまゆを寄せた。
ルパ達が仕うタイガーは大地の精霊だ彼らが滅びれば地も滅びてしまう。
捕らえてどうするきなのだろうか?
「ティティ達はみな無事か?」
「はい、我々のとこにつながりあるものは無事です。まさか捕まることはないと思いますが。」
水族の長がゆっくりと膝ま付き頭を下げた。メイド、ただ一人の女の族長だ。
「先ほどラズが帰ったと知らせが入りました。」
水族は心のつながりが強く離れていても会話ができる。
村の娘から連絡が入ったようだ。
「ルパ様が目撃されたというタイガー達を捕らえたものはラクールという名のようです。」
ラクールという名をききパリスの顔がよけいに険しくなる。
「皆の者、もうこのネプチューンに闇が放たれてしまった。私は王宮で嫌な話を耳にした、なんと闇の空間から帰ってきたものがいるというのだ。その中の一人にラクールという魔術師がいたときいた。」
バードが己を抱えて身震いする。
他の者も皆同じような反応だが火族の長カパだけは無表情だった。
「闇の王は止めなかったのですかその者を?」
メイドが静かにきく。
「私にもわからないなぜ闇の王が止めなかったのか。皆、早急に生きているものを『光の谷』に避難させるのだ。私は支度をして各地をまわってくる。」
ターン、ターン、と槍が二回打ち付けられ会議の終わりを告げる。
誓いの印に長達は髪を抜きミモザの座る黒い石の上に置いていく。
「パリス様、内密のお話しがあります。」
メイドが囁く。
パリスはうなずいた。




