水路のなかと疲労
敵は追ってはきてないようだ。
川にたどり着くとティトゥリーではなくエメがいた。
『聖獣達の御魂集めに行くのなら私が案内しましょう。ティトゥリーでは地下の水路を抜けれませんから。』
術師の誰かが情報をナオに伝えたようだ。
「ありがとう。エメたすかるよ。」
ティトゥリーより高い背に乗る。
ティトゥリーは帰ったのだろう。
胸の石に手をあてる。
外に出るなよ、ぜったいに。
奴らの狙いはなんなんだ?
エメは水の中でも走ることが出来る。
敵がいる地上よりも地下の水路の方が安全だということ長い茂サシャのツタに隠された洞窟からはいった。
不思議なことにこの薄紫の小さな花を付けたツタの近くに敵はいなかった。
水路に入った瞬間に異変に気付きエメが足を止めた。
「流れが速いしなんだこの光は。」
いつもは黒い岩に銀の光がチラチラ輝く空間が青くなっている。
『この流れは【タイガーの丘】が源ですなにかあったのかも。これは確か気の谷の下も……』
「エメ、いっかい岩間に帰ろう。」
胸元の石はいつも通りの温もりだが魔力が関わると心配だ。
ミーシャや他の従者の何人かは魔術は使えるが戦えるほどの力はない。
『水路を使う方が早いですよ。パリス様しっかりと私につかまっていて下さいね。だいじょうぶ水自体は濁ってませんから。』
エメの背に乗り水の中をはしりだした。
水路を進むうちに頭から完璧に水に浸かってしまった。
不思議と苦しくはない。
イナズマのような赤い光がたまにはしる。
何が起きたんだ?
すざまじい怒りの気がまとわりつく。
途中、苦しくなり限界という時にエメが躍り出た。
『エメ、パリス様。だいじょうぶですか?』
ラズの愛馬、ベリーがたっていた?
「ナオは、みなは無事か?」
息を切らせてエメから飛び降りる。
『低いところには水はありますがせき止めたのでだいじょうぶです。姫も皆様もご無事です。私は何が起きたのか見てきます。念のために魔封をして入り口を占めたほうがいいでしょう。』
ベリーが水がゴボゴボでる穴から水路に入って行った。
水を跳ね上げながらパリスとエメは走った。
炊事場に続く入り口の広場で立ち止まる。
「エメ、少し支援してくれ岩盤を集めて念のために入り口をふさぐ。」
エメが頭を少しさげると体が輝くエメの力とパリスの力がまぢりあい削られた岩盤が集まる。
最後に手から出た光で封じの文字を刻みパリスは息をきらして膝をついた。
「なんかすごい音がしたけど何があんだい?」
炊事場の婆やナズナがかけてくる。その後ろからミーシャもかけてきた。
「パリス様、だいじょうぶですか?エメもとにかく温かい所に行きましょう。ナズナ、エメをお願いします。」
ミーシャの言葉にナズナが頷く。
水が噴き出て皆、気は動転したようだがいつも通りの洞窟の気だ。
緊張が解けたのだろう急に体が重くなった。
「パリス様。キャーだれか。」
ミーシャの大袈裟な悲鳴が遠くにきこえた。




