ヒディーとリラの花2
突然、木が大きくゆれた。
模様を考えるのに夢中になっていたナオはハッと顔を上げた。
ヒラリと銀色の枝をくわえた青年が降りてきてフェニがナオの肩に乗った。
「城のリラの花があんまりにも綺麗だったから届けにきた。」
赤髪に銀が入った青年はヒディー、三目一族の息子である。
「ありがとう。うわー綺麗な花。」
『雲の里』の近くにリラの木は沢山あるが花の色と香りが違う。
紫に銀がかかった花だがこの花は銀に金だ。
「綺麗だろう。王星がミィスリルに惹かれる年だけ王宮のリラの花は咲くんだ。水際に刺しとけば根を生やすぞ。ヨッ元気してるか?」
肩に止まったラベンダーに気づき声をかける。
『相変わらず無礼なひとね。エディ様ならまずはたよりを寄越してからおいでになるわ。』
ツンとソッポを向く。
いつの間にかきたミーシャも腰に手を当て同感と頷く。
「いいじゃねえか。オッ綺麗な布だなあ『風の民』のお嬢ちゃんが作ったんだな。」
カゴにかけてた布を手にとる。
「ユン達はラピスに移動したみたい。そんなに敵は危ないの?」
ナオがきくとヒディーが眉を寄せる。
「正体がつかめないから敵を食い止める手立てが見つからないんだ。『リバー』の聖獣達が捕まったとなれば龍族も出てくるだろうな。」
胸元の石をフェニを片手ににぎりしめる。
「安心しろ俺もひと暴れしてやるから。子どもが産まれるまでには敵を追い出してやるさ。」
肩をポンポンと叩きラベンダーに突かれる。
「イテーほんきで突きやがったなこのやろう。」
小さな風でラベンダーを飛ばそうとしてぎゃくにミーシャに体当たりされひっくり帰る。
「加減が出来ないんだから危ないでしょうが。」
本来の猫の姿で乗られて悪戦苦闘だ。
「エディ様とゼンゼン違うでしょフェニ、私の世界ではねヒディーみたいなのはたらし男ていうのよ。」
笑いながらフェニに話しかける。
ガサガサと秘密の水路のあたりの藪がゆれてベリーがヒディーめがけて突進した。
「ワー俺は敵じゃねえ。三つ目一族の御息子様だ。」
やっと立ち上がったヒディーがまた転ばされる。
『間抜けな龍ですこと。ベリーお久しぶりね。』
ヒディーに盛大に水しぶきを浴びせてからナオに鼻を寄せてくる。
「コラ、びしょ濡れになったじゃねえか。」
ヒディーを無視する。
『お久しぶりです。姫、ただの暴れ龍で良かった。』
優しい声て暴れ龍と言ったのでナオは吹き出してしまった。
「カズラの呼び名が名前になっちゃったのねえ。 」
ラベンダーも羽を震わせ笑い出す。
「暴れ龍にたらしてひどいな。たしかに一族では変わりもんだけど俺の心は姫、一途だぜ。契約なんてなくても俺はナオの守龍さ。」
ウィンクしてベリーとラベンダーがシラーとみる。
「また敵さんきたか。こりゃ一戦あるなひと暴れしてくるか。」
気を外に飛ばすと『銀の草原』あたりにぞくとする気がある。
「そんな顔するな。俺がいれば誰も死なせねえよ。闇の術が使えたって俺は支配されない、なんといっても三目一族ね御息子だからな。」
ヒディーの言葉にナオも笑顔になる。
「気をつけてね。」
片手をあげて身軽に木に登ったいく。
「フー相変わらずですね。ホセ様にヒディーがいれば無敵でしょう。そういえばミーシャ、水路に落ちた時にみょうなことに気づいたんです。流れが早くなってるんですよ。」
ミーシャの言葉にベリーが顔をあげる。
『どこからの流れ?私が乗ってきた【水の郷】のシィーブルーのほうは穏やかだったけど。』
ミーシャがウンと考えこむ。
「ミーシャが良く落ちるのは炊事場の水汲み口だと思うからあそこはタイガーの丘の地下が源よ。水の精が怒りに反応してるのかしら?行ってみましょう。」
布と道具をいつもの溝におく。
『私とベリーが行くわ。もし敵が地下水源に気づいたなら危険だわ。』
ラベンダーが止める。
「だいじょうぶよフェ二がいるから。」
自分の目で少しでもみて危険があるならパリスに知らせたかった。