雲の里
『雲の里』に向かいながらパリスはもの思いにふけっていた。
ナオを異世界から連れてきた時、まだネプチューンの王宮にいた。
重臣、カサブランカ一族に産まれ掟だらけの城づかいが嫌になり異世界に行っていた。
水に近い所のほうが落ち着くので海と呼ばれる場所の近くにしばらく暮らしていたのだが、都会に興味を持ちでた日だった。
そこでナオとであったのだ当時はまだ少女だったナオが思いつめた顔していたので見守っていたのだが。海に飛び込もうとしたのを止めたのが出会いだった。
『娘にほれたのはわかる。うちの娘は可愛いからな、でも嫁にするのは二十歳になってからだ。』
ナオの父親の言葉にしたがいまった。
二十歳すぎてからこのネプチューンに連れてきたが、黒髪、黒瞳だからという理由なだけで父は反対した。
勘当されても構わないと思った。
そんな時にこの『リバー』への派遣が決まったのだ。
聖獣達が子育てする星
気の結晶を作る人々のいる星
美しい星を二人で探索して繋がりを作ってきた。
地球で何もないつまらない日々を過ごすより楽しいとナオも喜んでいた。
もとから動物が大好きというナオはすぐに聖獣達と仲良くなった。
気性の荒いタイガーまで手なづけてしまったナオにラパも驚いていた。
ちょっと気難しい水の里の術師ともうちとけてパリスの知らないことも知っていて驚いたものだ。
この星だからこそ自由で入れる安心できるなのに闇の者が手を出すとは。
「オイパリス、その気まぐれ君の自由にさせてると頭をぶつけるぞ。」
ティトゥリーは岩が低い穴を通過しようとしていた。
「危ないだろうが。」
無視である。
飛ぶのに疲れたので岩場を走りたかったらしい狭い空間を行くのでパリスは伏せてなければならなかった。
「確かに近道かも知れないがお前は俺に怪我をさせる気か。」
ティトゥリーの腹を軽く足でこずく。
『ごめんごめん、乗ってるの忘れてた。』
ナオのすました言い訳をいつのまにやら覚えている。
思わず笑ってしまった。
白い雲で覆われた里はもう目の前だ。
「ホセを置いてきてしまったな。まあいいかメロスはお前と違って安全なとこをきてるから少し時間かかるな。」
嫌味を言うとフンと鼻をならして急降下する。
> 白い雲を抜けると黒い建物が見えてきた。
『雲の谷』の中心部だ。その周りを囲むように銀の幹を持つリラの森がある。
高い切り立った山々に囲まれた谷は不思議な谷でここの一体だけが白い雲に覆われている。
不気味だ、たまに地上も走ってきたのに聖獣達の気配がない、まさかみんなつかまったのか?
> 不安な気持ちを抑えて美しい花々に囲まれたひときわ高い建物の広場におりたった。
> バードの一族とティティ達が住む『アムールの塔』だ。
黒は闇と嫌う人間達にはこの黒い塔にティティが住んでいるとは思わないだろう。
ティティは金色に輝く体を持ち美しい長い尾を持っている。
人々の記憶から忘れられているが彼らは闇をくぐり抜けその底まで行けるのだ
。 この塔に住むティティは闇で産まれて光に飛び立つ。
ネプチューンの重臣の一族に育ったパリスも闇は苦手だがこの花に囲まれた黒い塔は好きだ。
黒い皮で出来たチョッキになめしたタイガーの毛皮でできたズボンを履いた少年が出迎える。
「お待ちしておりました。パリス様。」
懐からだした金色の羽を頭を下げ両手で差し出す。
敬愛を示すあいさつだ。
「元気そうだな。ピース。」
羽を受け取り耳元に付ける。
この里の独特な挨拶だ。
尊敬の意味をこめティティの羽を身分の高い者に差し出す。貰った相手は頭につける。
「戦火はこの雲が覆う奥までは来ておりません。ホセ様のおかげでどうにか食い止めました。」
階段を下っていく。
「そうか良かった。バードは留守かい?」
「バード様は草原のほうに出向いております。ティアは子育て最中ですので部屋におります。」
これはタイミングがわるい。
ティアは子育て中は気がたちやすい果たして話せるか。
下に行くにつれ金色の鳥が行ききしている。
ティティの子供達だ。
その広間の真ん中にひときわ輝く長い尾を持つ鳥が見守っていた。
バードの一族に使えるティアだ。
「みんなお部屋にお帰り。」
母の言葉に上に空いた白い穴に子供達は入っていく。
「私から出向くべきだったのでしょうが。子供達の自立がまだなので出向けなくて申し訳ございません。」
首をまげる。
「外にはでない方がいい、闇の者につかまるかも知れないから。草原のほうは襲撃を受けたようだな。聖獣達は無事かい?」
「つかまったものもいますが。無事に逃げおおせた物はみな『月の泉』の底に避難しております。」
それだけ告げると自分も部屋に帰ってしまった。
「相変わらずそっけないな。草原で戦いあったならホセはきっとあっちにいるな。」
パリスはつぶやく。
「パリス様、妹からこれを預かって参りました。あとこれは姫さまに丈夫なお子が産まれますよう里の女達が心を込めて作ったものです。」
ピースが銀色の斑点がある白いマントと細かく編まれてできている帯びを差し出す。
「ありがとう。必ずこの星を守る。」
マントの内側に帯をいれはおる。
いつの間にやらこの里にもナオの妊娠はつたわっているようだ。
ほんと不思議な姫様だ。
魔力をではない優しい力が人の心を動かすのだろう。
パリスはどうも女性世界に入るのは苦手なのだ。
『雲の里』も『水の里』も女性が大半の里なのだ。
『それ着てたら僕の背中の一体化しちゃいそうだね。』
ティトゥリーの声で我に帰った。
『あのすました鳥に会えたの?僕、草原のほうに一飛びしてきたんけどあっちは酷い有様だよ。後ね、まだ遠いけど嫌な気を発してる一団が向かってるよ。闘いになるかも。』
ついに現れたか。
「ティトゥリーいこう。」
蔵につけていた旅用マントを上に羽織った。
冷え冷えとした風が吹きはじめていた。
雲が濃くなっている。里に続く岩門は閉ざされ兵士達がたっているのが見えた。