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赤と青
父ちゃんは七時頃に帰ってきた。
真っ赤な服を着て、手には青い紙袋を持っていた。真っ赤な服は父ちゃんの会社の作業着だ。父ちゃんは、今日も仕事を頑張ったようだった。真っ赤な服が、燃え上がる炎のように僕らを照らした。
「おかえり」
「ただいま」
父ちゃんは、青い紙袋をテーブルの上に置き、僕の隣の椅子に座った。兄貴の正面でもあった。母ちゃんの右斜め前でもあった。とにかく、父ちゃんは椅子に座った。赤い作業着のままで。
「では」
と、父ちゃんが口を開いた。
兄貴も母ちゃんも僕も、ゴクリと唾をのみ込む。兄貴のゴクリが一番大きかった。僕は二番目くらい。母ちゃんは三番目だ。
ドキドキ。さあ、一体どんないいことが起きたんだろう。
「ではみんな、今日は良いことがあった日だ。だから今日は風呂に入らなかったはずだ。今からそれを話すぞ」
うん、と僕は頷いた。
「まず、これを見てくれ」
といって、父ちゃんが青い紙袋の中身を机の上に置いた。兄貴と僕は、身を乗り出すようにしてそれを見た。
それは、