修行1日目……にして最終日
約3年ぶりの、と言うより小説家になろうを開けるか触ったら開けたという話なだけな影月なのでした
木に寄りかかり、ユキトは目をつぶっていた。
周りはもう朝日により明るく、しかし木々により影が出来ていて暑苦しくはなかった。
くぅはあくびをしながらしっぽをフラフラと振りながら、ユキトの頭の上で器用に丸まっていた。
すると横の茂みがかすかに音を鳴らし揺れる。ユキトは目を開けそちらを向くと、
「水浴びは終わったかい?」
そこから現れた少女、フィフナに笑いかけた。
ただしフィフナには口元しか見えておらず、本当に笑っているのか判断に困っていた。
「……はい。ありがとうございます、見張りまでしてもらって」
水浴びに男が見張り。深い繋がりもなく、ましてや昨日あったばかりの二人であったがフィフナはその卓越した嗅覚によりユキトの距離感を感じ取っていた。
結論から言えばアキトは全く木の陰から動くことはなく、覗こうという行動もしなかったため別意味でショックを受けるのだった。
別に覗かれたいとかでは全く持ってない。ただ……ただ女としてやるせないのだ。
「なら飯を食ったら始めようか」
ユキトは袋から昨日作った魚の干物を取り出す。
ハンター、事実上【冒険者】はその登録時に一定のお金、カード、そしてこの袋を支給される。
その実態は匠達により作られた空間拡張の行われた俗に言うアイテムボックスである。小さな見た目からは想像できないほどの量、サイズの物を収納できる。
取り出す時はどういう原理か取りたいものを考えながら手を突っ込めばいい。原理は機密でその匠達だけの秘術とも言える。
「あっはい……」
干物といっても火は通している。簡易食なので二人はそのまま食事を開始した。ユキトは肩あたりからくぅに横から取られながらなのだが……
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「よし、じゃあ軽くこれを蹴ってみようか?」
ユキトは手をフィフナの頭あたりの翳す。
ちなみにフィフナは身体強化を発動しており、困惑したような表情をしていた。
「えっでも今私……」
「大丈夫だよ」
ユキトのその言葉にフィフナは少しムッとした。ユキトには全くその気はなかったが、フィフナには自分ではアキトの防御力を貫けないと言われているように感じたからだ。
フィフナは少し息を吐くと手に向かいハイキックを行った。ユキトはその【軌道】・【早さ】・【キレの具合】を見て、ほうと感心した。
フィフナは別段得意ではないといったが師が良かったのか、それとも師がフィフナは足技が向いていると知っていたのか……そこら辺はどうでもいいとして新人としてはかなりのキレの良さと速さを持っていた。
教えると言っても魔力を纏わせた時の用途だけで化けるな。
そうユキトは実感し、その足を受け止めた。
「えっ!?」
「うん、いい蹴りだ。これじゃあ俺が蹴りを教えることはないな。
予想外って言えるけど途中過程はすっ飛ばしていいな」
肉体強化をした獣人、亜人種の蹴りを簡単に止められるとは思ってなかったフィフナは驚きの声を上げる。
ユキトはユキトでこれからの内容を考え、足を離すと近くにあった同じ大きさくらいの石を拾う。
「よし、今から石投げるからそれを蹴って」
「あっはい」
驚きからなんとか復活したフィフナは構えを取り、ユキトはそれを確認すると石をフィフナに軽く投げた。
フィフナはその軌道に合わせるように素早く蹴りを行う。その蹴りは正確に石を捉え、バキッと言う鈍い音と共に石は砕け散った。
「これでいいんですか?」
「よし、じゃあ体全体に纏ってる魔力を足優先に纏って。
具体的言うと体4、足6くらい?」
「足優先……?」
フィフナは少し困惑したように足に魔力を纏わせ始めた。しかし初めてということもあり、なかなかうまくいってないようだ。
元々魔力操作も得意じゃない方というのも理由かとユキトは考えていると、何とか纏わせることに成功したようだ。
「よし、それじゃあさっきと同じくらいの力で蹴ってね」
先程とほぼ同じ軌道で石が飛び、フィフナはそれを先程と同じように蹴り飛ばす。
しかしその石はパンッと言う小粋のいい音と共に、塵のように弾けた。
「うわ!?」
魔力の込め方で威力が変わるとは確かによく聞くが、これは魔法や武器のみだと考えていたフィフナは驚きの声を上げ、先ほど蹴った石の破片と見比べる。
「まぁ肉体強化でこれする奴ってなかなかいないし、知ってても喋る奴って少ないしな。それに武器に纏うってのが一番やりやすいのも事実だし」
そう言いながらユキトは袋をあさり、それをフィフナに投げ渡した。
受け取ったフィフナはそれを確認すると、それはだいたいつま先から太腿あたりまでの長さのある……俗に言う紺色の靴下だった。
「それあげるよ。着けてみて」
「ユキトさん、そんな趣味が?」
「いや、どんな趣味だよ。ちゃんと理由あるから」
フィフナは訝しげにブーツを脱ぎ、靴下を履き替える。
「よし、じゃあさっきみたいに足に多く纏うようにやってみて」
フィフナは目を閉じ肉体強化をする。しかしどうも足に多めにというのがなかなか出来ずにいた。
「……今渡した靴下との間に膜を張るように考えて」
「膜、ですか?」
武器に纏わせる感じだろうか?いや違う……境に流すようにしろという意味かな?
そう考えながらフィフナは強化を行うと先程よりもイメージが固めやすかったのか、早い時間で成功させた。しかしそれ以上に奇怪なことが起こっていた。
「な……なんですかこれ!!!???」
それはまるで水晶のような装甲。滑らかであるものの鋭利な印象を纏う脚甲がつま先からひざ下あたりまで覆っていたのだ。しかし不可思議なことに足首などの動きは阻害せず、重さによる違和感も感じなかった。
「足技だと脚甲はいるだろうし、日常的にある方がいいけ度邪魔にならない……
さっき上げた靴下の特性でね、魔力に反応してその魔力を結晶化させて装甲を作るんだ。
と言っても肉体強化の阻害にはならないよ。放出してる魔力を結晶化してるだけだからね。フェンリルだから氷の結晶ってところか」
「えっ!?そ、そんなもの貰っていいんですか!?」
「うん、使う当てないしね」
フィフナは唯々慌てるしかない。なんせそんなマジックアイテムは聞いたことがないし、どう考えてもかなりの高価な物のはずなのだから。
「よし、じゃあその身体強化の纏具合、そして発動の練習を始めようか。
目指せ魔力調整の上達!!目指せ反射発動!!!」
「え……」
フィフナのそんな間の抜けた返事から途端に厳しさの増した修行が始まった。
組手中に強化の発動。そしてそれの維持。蹴りの練習。
失敗するたび投げ飛ばされ、こかされ、軽く吹き飛ばされ……
あまりの力の差を感じながらもフィフナは調整、発動の短縮、維持を日が落ちるまでに何万回と倒されながら習得するのだった。
「いや、やっぱ才能あるな」
そんなユキトの声を聞きながらフィフナは突っ伏し、くぅは主であるユキトのむちゃぶりに呆れるもあくびをするのだった。
フィフナ・フェンリル
17歳
獣人種 フェンリル族




