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いくら何でも早すぎ…

「こちらが、白木澄和(しらき とわ)さん。

僕のとこの会社のペンションで働いてくれてる白木さんの娘さんでね、今はこっちに出てきて総合病院の看護婦さんをしてるんだ。」



クイズです。「ジャジャン!」

私はなぜここに座り、紹介をされているのでしょう?



それはね、母親がまさかまさか例のお見合い相手を見つけてきたからでーす、きゃはっ。



きゃはっじゃないしっっ!



顔はニコニコ、頭は大パニックになりながら、今に至った経緯を思い出した。






「イケメンとならお見合いする!」宣言をした私に母は冷たく言い放った。


「あんた自分の顔と体を鏡で見てから言いなさいよ」


(ちょ、ちょっと、今、体って言った?それでも母親?!

まぁ、否定はしないけど)



むくれている私をよそに、母はいそいそと携帯を取り出し電話し始めた。

その後ろ姿を見つめながら、ため息一つ。


(ま、イケメンなんてなかなかいないだろうし、もし、いたとしても好みじゃないって言えば良いし♪

しばらくは何とかなるかな〜)



そんなことを考えながら、その日は実家から一人暮らしをしている街まで帰ってきた。


私の実家は山と川と田んぼしかないような田舎にある。

夏は避暑、冬は雪がたくさん積もる気候であることや、ゴルフ場やスキー場がいくつかあるため、企業の避暑地となっていた。

企業のペンションがあるから地元の職もなんとかまかなえるような所だ。母もその恩恵を受けている。



そんな田舎だから希望する職があるわけではなく、街に出て行く若者は多い。

私もその一人。

寂しい時もあったけど、就職して一人暮らしが8年も続けば気楽になるもの。


仕事は大変だけど、生活には困らない。悠々自適って言葉がぴったりな生活を送っていた。

結婚も良いけど、しばらくはこの生活のままでも良い〜が本音だった。



だから一人暮らしのアパートに帰り、翌日からいつも通りの仕事をしているとお見合いのことはすっかり頭からなくなっていた。




悠々自適生活の終わりを告げるベルが鳴ったのは、イケメン宣言して3日目のことだった…



その日はいつもよりハードな夜勤が終わり、帰ってからベッドに直行し、意識を手放した。



どれくらいの時間がだっただろうか。


ピンポーン…


最初は夢の世界でもナースコールが鳴っていると思った。


ピンポーン、ピンポーン

何度もならされるナースコールにイライラしつつ、ふと気がつく。いつものナースコールと音が違う。


だんだん意識が浮上してきて、初めてドアのチャイムが鳴っていることに気がついた。


(そうか…家だった)


ボサボサ頭をもたげて起きる。時計をみると寝てからまだ一時間半しか経ってなかった。


眠さに出て行くのが億劫だ。


(諦めて帰らないかな?)

なんて思いながら、ドアフォンで来客を確認すると、そこには母が恐ろしく綺麗な笑顔で立っていた。



何も連絡なしに来るのは珍しい。

急いでドアを開けると、大荷物を抱えた母が立っていたが、私の顔を見たとたん渋面がひろがった。



「なに?その頭は?女の子のくせに髪の毛が鳥の巣になってるよ」



「夜勤が終わって寝てたの!っで、何の用?」


顔を合わせたとたんにお説教され、イライラMAXの私を気にする様子もなく、「あら、そうだったわね」なんてつぶやきながら渋面だった顔が、とたんに微笑になる。



「あんたの条件に合う人がいるの。

その人ね、忙しくって、なかなか時間が取れないんだけど…でも、このご時世、忙しいのはいいことね、仕事はきちんとしている人でないとね。


あら、何の話だった?あぁそうそう、忙しい中でも時間を作ってくれてね今日の4時からなら良いって。だから準備して行くよ」



「……………は?」


目が点の私をよそに、母は弾丸のように喋る。



「夜勤終わったばかりなのね。目の下にくまがある。エステとか行ったほうが良いけど、時間がないねぇ。

着付けもしなきゃいけないし…」



「……………は?!」



何か私のわからない所で話がすすんでいる。

危険の点滅が見える。

睡眠不足の頭を叱咤した。



「ちょっとまったぁ、話が見えないんだけど?

着付け?エステ?っ

っていうか、行くってどこに?」



必死な私に母はきょとんとした後、「何言ってるの」とカラカラ笑いながら爆弾を落としかえした。



「決まってるじゃない。お見合いよ。お・み・あ・い」



ええ、再起不能になるくらいの威力はあった。


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