44話 書きたい作品×ヒット作は成立する~『押しの子』の場合
本日は
『作者の書きたいもの×興味の持続』
が果たして成立するのか??
そして物語の終わらせ方の作家にとっての意味は?
をメガヒット作『押しの子』から考察します。
よく、プロスポーツ選手で
『未完の大器』
と言われる選手がいます。
フィジカルは最強。体格もいい。
でも、何かが噛み合わなくて、結局終わってしまう……。
「なろう」でも、すばらしい作品は多いです。
でも『なんでこの作品』があまり注目されていないのだろう……。そういった作品も多い。
書き手としていろんな作品を読んでいると、切ないときがあります。
「切ない作品」だらけだけということにしたい、相馬ゆうです。
楽しければいい。けど『プロの世界』は、成功しなければいけない。
さらに実績がある作家は、『失敗が許されない』。
たとえば鳥山明先生は、『ドラゴンボール』のインフレが続くストーリーの中で、やめたくてもやめられなかった——みたいな話を、どこかで聞いたことがあります。
**********
この構造は、以前お話しした週刊連載における『興味の持続』の話にもつながるのですが、
“新時代のひとつの答え”を出したかもしれない……と私が思う作品
『推しの子』です。
私は、よく見るとイっちゃってる1巻の表紙絵に、まずやられてしまいました。
**********
あらすじは、ある主人公とあるヒロインが、「死」をきっかけに、自分の“推し”アイドルの子どもに転生する。
そのアイドルは非業の死を遂げ、主人公は復讐を誓う。
というメインストーリー。
いわゆる「転生×ミステリー」です。
ただ、芸能業界やメディア論、作者と演者(あるいは制作側)の葛藤のようなテーマが、サブストーリーとして連続していく。
もちろん、メインの復讐のラインも、時々回収されて物語は進んでいきます。
**********
そこで私は、こういう仮説を立てました。
赤坂アカ先生は、大枠で押し切るというより、ディテールを高解像度で描きたい作家に見える。
大枠は“引力の器”で、真に描きたいのは中身のディテール——
そんな仮説(という名の妄想)です。
たとえば『推しの子』の場合、芸能の現場の空気とか、メディアの歪みとか、作る側/演じる側の摩擦とか——そういう“手触りのある部分”を、実は一番描きたかったのでは?という理解です。
ただ、そのディテールだけを正面から積み上げると、どうしても届く範囲がニッチになりやすい。
読者は忙しいし、情報量も多い。入口で離脱されると、そもそも中身まで運べない。
だからこそ『推しの子』は、最初に“大風呂敷”を広げた。
転生×ミステリーという強い引力で読者を一気に連れてきて、そこで「本当に描きたいディテール」を走らせる。
つまり、大風呂敷は妥協じゃなくて、ディテールを世間まで運ぶための装置なんじゃないか。
そういう構成で作られたヒット作なのでは……と、私は邪推してしまうわけです。
**********
そして、とても物議を醸し、賛否両論になったラスト……。
これは、その終わらせ方も含めて「世間を巻き込む」ことを意識したのかも。
作品の終わらせ方、それ自体もバズにしてしまう。
もし、それが仮説じゃなく本当なら……「書きたいものへの執念」アカ先生すごい。
**********
『手塚治虫』先生が、夢オチを禁止した——と『さよなら絶望先生』で読んだことがあります。
(これは都市伝説を、絶望先生に語らせたものだった気もします。)
「物語の終わらせ方」って、とても大切で、読者の関心事項です。
でも、ヒット作を作ること×自分の書きたいものを描くこと。
この二つを両立させるためには、ラストの“評価”さえも、今の時代は作品の一部として設計されうるのかもしれない……と考えてしまいました。
**********
もちろん、これは私の邪推であって、本当は違うかもしれない。
でも、この作品のマーケティングのされ方やメディア展開を見ていると、あながち間違った邪推でもないような気がします。
**********
読んでもらうために、作家はめちゃくちゃ考えています。
自分の書きたいものもある。
それが行間から分かるようにもなってきた。
だから私は、『推しの子』をこう考察しました。
でも、これは時間と情報に追われる現代社会の、ひとつの正解なのかもしれない。
自分の作品は、どう終わらせるか。
それを、いつ決めるのか……。
そんな切ないことも考えなくては、と思う相馬ゆうでした。
**********
次回。
終わりから始まる「文学」。
『君の膵臓をたべたい』『世界の中心で、愛をさけぶ』を、一つずつ考察させてください。
作家様は、書きたいものと読者様の期待どうすり合わせてますか?
ラストハッピー・バッドエンドって読む前から知っておきたいですか?
いろいろご意見お聞かせください。
ブクマや★評価で応援してもらえると励みになります(気が向いたときで大丈夫です)。




