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第一話 お説教

 世界には古くから人ならざるものが存在する。日本ではそれらのことを‘‘魔物"と呼び、共存することは不可能と判断した。我々のように言語を話すこともなく、また一定以上の知能を持っている様子もない。人間を認識すると襲ってくる存在、それが“魔物"だ。

 各国それぞれ独自の国家機関を持ち、人ならざるものへの対策を講じている。日本も霊魔庁を設立し、人材育成から実際に魔物の研究や駆除を担う機関として地位を築いた。多くの人間が昼夜問わず任務についている。

 そもそも魔物の特性として、夜間に出現することが多い。日中にも奴らに遭遇することはあるが、数は圧倒的に少ない。自らの存在が闇に溶け込むことは本能で刷り込まれているのだろう。そのため魔物を駆除する役割をもつ退魔師とその後方援助を担当する陰陽師たちは、基本的には夜中に活動している。

 霊媒師と呼ばれる者たちは、退魔師と陰陽師とは異なり昼間に活動することが多い。彼らは魔物についての研究を行っている。まだ理解できていない魔物の謎を、少しずつ解明していくことを目的とする役職だ。


「おい、夏樹(なつき)。聞いてんのか?」


 目の前でお説教……いや、ありがたい指導をしてくださっているのは、(ひいらぎ)伊織(いおり)班長だ。班長と呼ぶとなぜか機嫌を損ねるため、いつも先輩と呼んでいる。


「聞いてます……ご迷惑おかけしてすみませんでした……。」

「全然聞いてねぇじゃねぇか。迷惑かけられて怒ってんじゃないの、俺は。」

「夏樹、一人で頑張れるのはすごいことだけど、頑張りすぎるのもよくないよ?」


 班長にお説教されるのは分かる。部下の指導も班長の任務の範疇だ。だけど、なんでこの現場に兄さんがいるんだろう。確かにここは兄さんの研究室だけど……。


結樹(ゆうき)さんの言う通り!お前、冷静に判断できる人間なんだから、ちゃんと仲間を信じろ。次からは応援が来るまで待てるな?」

「……はい。」

「うっし、じゃあこの話は終わり!飯でも食いに行こうぜー!」


 僕も一緒に行ってもいいかな、なんて聞きながらしっかりと財布を手に持っている結樹兄さんは、私の実の兄だ。随分とかわいがってもらっている自覚はある。柊先輩は兄さんの一つ下の学年で、お互いに首席で沙庭院(さにわいん)を卒業したこともあり、どうやら仲が良いらしい。一見性格は反対に見えるけど、おおらかで優しいところは似ているから相性はいいんだろう。

 兄さんや先輩のような華々しい成績を、私は沙庭院で納めることはできなかった。退魔師や陰陽師、霊媒師になるための学校である、沙庭院。代々霊媒師として優秀な活躍をしてきたーノ瀬家の人間として、私も首席になる必要があったのに。首席になるどころか、霊媒師になることもできなかった。霊媒師は、一定以上の霊力保持が条件となる。私の霊力では基準を満たすことができなかった。退魔師になったことを後悔したり引け目に感じたりすることはないけど、一族の期待に応えられなかった負い目はある。いくら私が分家の娘で、家族が一切そんなことを気にしていないとわかっていても。


「ほら、夏樹。早く行かねぇと食堂混むぞ。」


 先輩は実力主義者で、家柄なんて興味がない。そんな先輩のそばにいるのは心地いい。


「今行きます!」


 まだもう少しくらいは、甘えさせてもらってもいいだろうか。

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