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プロローグ

 その日はずいぶんと肌寒く、もう一枚上着を羽織ったほうがよかったと後悔するくらいだった。……まるで今日のように。

 派遣された先の任務はそこまで手こずることはないと聞いていた。私の能力値であれば一人で倒せるはずだと。確かに倒せない相手ではない。しかしそれは、この場にいる人間が私だけであったら、だ。逃げ遅れた家族を守りながら、この魔物を倒すことは私には難しい。――最初のうちは攻撃をしつつ、一般市民を守ることもできていた。だが体力の限界だ。防御一辺倒となった今、打開策を考えるも思いつかない。式神を飛ばす余裕さえなかった。誰かが気付いて応援に来てくれればいいが、それもいつになるのか分からない。自分で解決するしかないのだ。


「おねぇちゃん……。」


 小さな子どもが恐怖に震えながら、私のことを呼ぶ。私の任務は魔物を倒すこと。そして、一般市民を守ること。……勝算は四割程度だが、ないわけではない。術式を展開し、防御壁が家族を覆い隠す。私が死ななければ壊れないくらい、ありったけの霊力を込めた。あとは魔物の急所に一発、この銃弾を撃ち込めばいいだけだ。私の身長の三倍はある相手に厄介さは感じるものの、あの日と違って恐怖心は抱いていない。魔物と対峙するより、仲間がいなくなっていくことの方が何倍も恐ろしく、苦しいことだと知ってしまったからだ。背後にいる家族が、この家族を大切に想う人たちが、悲しみを味わうことのないように、私は宙に跳んだ。魔物からの一撃を避け、頭に狙いを定める。しかし相手も次々と攻撃を繰り出してくるため、なかなか最後の一撃を決めることができない。魔物の右手が私ともども地面を叩きつけようとする。それを避けるためにまた宙に跳んだが、その先には左手が待ち構えていた。まずい、捕まる。そう思った次の瞬間には。


「だーかーら一!お前は!もっと!頼れ!」


 私を覆い隠そうとしていた左手が地面に落ち、気付くと切り刻まれた魔物が消えゆくところだった。無事地面へ着地したところに、ずかずかと足音を立てながら近付いてくる人影が見える。あの日も今のように、圧倒的な力で魔物を消滅させ、私を守ってくれた人。


「お前を部下に持つと、心臓いくらあっても足りないんですけど!」

「柊先輩が心配性すぎるだけですよ…。」


 あの日のことを先輩は覚えていないと思う。それでも、あの日からずっと柊先輩は、私の憧れの人だ。

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