恋か死か卒業か
タイトルは面白そう【卒業】でメール採用して頂いたタイトルで作品を書いてみました。
ここはスパイ養成学校。生徒は入学時点からコードネームが与えられお互い素性を明かさず学園生活を送る。卒業式前に卒業試験があり試験はペアを組むことが必須である。
「貴方、私とペアになりなさい」
成績優秀で眉目秀麗を絵に描いたようなリリーが何もかも中の下でしかないコーサクを卒業試験のペアに誘っていた。
「えっ?よ、よろしく」
教室は明らかにザワっとした。
実際、男子13人女子7人のクラスの男子全員がリリーと組みたいと思っていて彼女に猛烈アピールしていた男子も少なくない。リリーがコーサクと組んだ直後、リリーの二番煎じにはなりたくないと女子はさっさと3組のペアになった。
そしてその日からコーサクは嫉妬に狂った男子達から狙われることになった。
廊下を歩くだけで狙撃され、弁当に毒を仕込まれ、机、下駄箱に毒針が仕掛けられ、自宅も特定されて罠が沢山仕掛けられた。
コーサクは素直にリリーに助けを求めた。
「私の家に住めばいいじゃない。お弁当も貴方分も私が持っていってお昼も一緒に食べましょう」
と提案された。
その日の夜、
「あの、どうして俺をペアに?」
リリーは小首を傾げ
「理由は色々あるけど一番の理由は私もスパイになりたくないからよ」
「私も?俺が手を抜いているのに気づいていたのか?」
「当然よ。卒業試験の3位まではスパイ、4位から8位がスパイのサポート、それ以下は失格。私は4位になりたいの。貴方もじゃなくて?」
素性は明かさない決まりなので多くは突っ込まず語らず「そうだ」とだけ答えた。
どうやらリリーは手を抜くことが苦手らしい。だがこれで心置きなく4位狙いで作戦を立てることができる。
試験日までリリーとはなるべく一緒にいて昼も二人で食べていたことからコーサクは益々標的にされたがそれで良かった。
試験当日、男子達はコーサクとリリーで早々に叩き潰した。
無理もない。彼らはコーサクの襲撃に時間を費やし、恋のライバル同士の即席ペアな上に何の準備もしてこなかったのだから。女子3組には上位3位に入って貰い俺たちは余裕で4位になった。
「ペアに誘った理由は色々あるって言ってたけど他の理由はなんだったんだ?」
卒業試験を経てちょっと仲良くなったはずと思って気楽な感じに尋ねると、リリーはちょっと怒りながら
「わ、私だって皆とおなじ理由もあるに決まってるでしょ!」
「えっ?それって」
「それ以上聞くことは許さないわよ!」
なお、ペアは仕事でも継続される。