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6、高揚
「久しぶり!」
青年は声をかけるが、この挨拶は、この場には不釣り合いなフレーズだ。
青年が体感して来た時間がどれだけ悠久なものであっても、標準時刻的に最後に会ったのは昨日。
それに気付き、青年は少し戸惑いなが訂正する。
「…じゃないか、ここは普通にこんにちはが妥当かな?」
昨日はしどろもどろだった青年の態度は一変して、活気に満ちるはきはきとした態度だ。
それもそのはず、一日といっても青年にとっては、長い長い退屈を越えて再開を迎えたのだから。
感動の再会…、そんな感じだろう。
そんな青年にたいして望絵は
「あら、始めまして」
軽く微笑みさらりと応える。
皮肉の積もりで言った言葉だったが、青年にその意図は伝わっていない様だ。
「そうだな、まだ自己紹介が終わって無かったな。改めて、はじめまして」
青年はぺこりとお辞儀をして話しを続ける。
「え~と、僕の名前はあゆむ。歩くって漢字一つで歩。よろしく」
微笑みを絶やさずに歩は自己紹介、といっても名前だけだが、を伝えた。
望絵は特に興味を示している反応は伺え無い。
まあ、始めから求めてなどはいないのだから仕方の無い事だろう。