5、再開
非常に単純な事。
単純すぎて、特に気にもとめなかった。
(もう少しゆっくり来ても良かったのかな…)
青年は肩を軽く落とし、少し後悔する。
しかしその推測を、到達する以前の時点で気付いていたとしても、この結果は変わらなかっただろう。
既にそこ来て居るかもしれないとう可能性が、全くの零で無い限り。
そして青年は継続する。
すぐそこに見えている頂上に向かって進む事を。
(さて、ゆっくり待つとするかな)
青年は昨日景色を眺めた場所に辿り着く。
どうせいないだろう。
自分のそんな推測から、青年は望絵がこの場にいないと決め付ける。
しかし青年の推測とは裏腹に、望絵は樹木に自分の体を預け寄り掛かり、静かに佇んでいる。
青年は、思わぬ再開に胸を躍らせる。
再開といっても一方的なもの。
青年の一方的な思いのもとでの再開だ。
しかし、そんな思いを寄せられる望絵本人は、青年などは気にも止めない。
ただただ、夕暮れに染め上がっている町並みを見下ろしている。
その姿からははかない空虚さが感じられるかのようだ。
それでも、青年はそんな空気を知ろうとする事も無く、一心に望絵のもとへ歩を進める。
今年も紅白みて年越しですw