4-5:純利
スフレに出来上がったのは行列であった。
マンデルの部下たちがやってきたというのもあるが、アリスの思っていた以上に人々がスマートボールに熱中しているのだ。
面白いぐらいに銀貨が消費されていき、想定を超える売り上げを叩きだしてしまっている。
これにはアリスも思わず顔を驚かせながら対応に当たっていた。
「すみません!一人最大で1回までのプレイとなります!連続はできません!」
「フルコース料理無料券と交換ですね!はい、はい……!どうぞ!」
「並んで!一列に並んでください!まだまだエール酒無料券はありますから!」
アリスたちだけでは人手が足りず、スフレの従業員も動員して整理券を配る程であった。
そのため、スフレの店内は今までにないほどの活気が蠢いていたのである。
(これはブームの導火線に火が付きましたね……!)
アリスは確信した。
これで人々を呼び込むのに必要な口コミが広がっていくだろうと。
冒険者だけでなく、仕事を終えた労働者も挙ってスフレの前に並んでいる。
券を渡していたイライからアリスにSOSが出される。
「アリスさん、もうエール酒無料券が底を突きそうです!」
「本当?!残りはどのくらいありますか?」
「あと50枚です!」
「50枚ね……!分かりました。すみませんアムールさん!スマートボールの対応を任せてもらってもいいですか?列に並んでいる方の対応をこれから行います!」
「はいっ、こっちは任せてください!」
エール酒無料券があと50枚で切れるのを確認するアリス。
既に並んでいた50人を除いて今日のプレイ人数を制限することになった。
「すみません、もうエール酒無料券は販売終了です!」
「えええーっ!」
「そんなー……!」
「ただし!今並んでいる皆さま方には明日以降にエール酒無料券をお渡しできるように今日限りの特別措置としてお名前をご記入くださいませ!こちらに用紙を用意しましたので、名前を書いてください!」
アリスが用意したのは白い紙であった。
無論、それまで並んでいた人達には名前を書いて貰い明日以降にエール酒無料券を渡すと約束を取り付ける。
ペンを渡して一人一人に名前を記入してもらう。
今日だけでプレイできなかったのは67名にも及んでいた。
午後4時30分には最後の一人がスマートボールでの遊戯を終えて、アリス・エンターテイメントは営業を終了。
別室にて、顧客がプレイをした際に発生した銀貨の枚数を数える。
これが一番時間のかかる作業だ。
事前に銀貨を100枚揃えることができる器具を用意していたのだが、それでもすごい数の銀貨が集まっており、100枚単位で並べるとまるで都内のタワーマンションのように銀貨が積み上がっていく。
次々と積み立てていく銀貨。
「売り上げは……銀貨1750枚!!!」
「1750枚?!」
「すごいっ……すごい数ですよッ……!?」
総数は1750枚。
金貨に換算すれば17枚と半分だ。
これは庶民の平均月収の8か月と半月分の給与に匹敵する。
そこから経費であったり、景品である無料券を差し引く作業が始まる。
売れた枚数を数えながら銀貨を分けておき、掛かった費用を差し引いていく。
1750枚からエール酒無料券やフルコース料理無料券、宿泊券などを差し引くと、銀貨1020枚であった。
金貨10枚以上の純利益であり、アムールとイライへの給与を差し引いても金貨10枚分である。
これで、アリスは食券や宿泊券だけでなく現金と引き換えに高額景品などと交換できるパチンコの三点方式に必要な経営資金を獲得したのである。
「アムールさん!イライさん!やりましたよ!!!」
「ええ!本当に頑張りました!」
「おめでとうございます!」
アリスはアムールとイライに抱き合って、喜びを分かち合った。
そして、アリスは次なる計画を発動するために、すぐにパトリシアと相談してエール酒を大量に仕入れると同時に、リアファー印刷所に赴いて券を更に倍近い枚数の発行を依頼したのである。
アリス・エンターテイメントの開店は大成功となり、ここからアリスの快進撃が始まるのであった。




