2-13:教育教育教育教育……
今回のお話な暴力的なシーンが多いです。
小説家になろうのガイドラインに則り、執筆しております。
★ ☆ ★
スプリタの中心部に大きな屋敷がある。
レビン家の跡地に建てられた屋敷には、私服を肥やすことに情熱を注いでるダンパ伯爵が住んでいた。
贅肉が特徴的であり、一言でいえば彼は肥満体型だ。
そしてワガママな性格であり、些細なことで激怒する。
周囲の人間が苦労をするタイプの人間だ。
毎晩彼の屋敷から女性の悲鳴が絶えない。
何故ならダンパ伯爵は亜人種に教育を実施しているからだ。
彼の教育はシンプル。
まずダンパは鋼鉄のように固いグローブを両手に填める。
このグローブには魔力を増大させて威力を上げる強化魔法を掛けてある。
ダンパは笑いながらグローブを構える。
「ハハハ、歯を食いしばれよ~」
部屋に肉が軋む音が響く。
ドゴォという音が響き渡る。
サンドバッグのように殴られた相手は唾液を吐きだす。
殴られているのはトラの顔立ちをしている亜人種の女性だ。
人間よりも筋力があり、力のある存在だ。
一方的にダンパに殴られている。
両手には拘束具が取り付けられており、逃げられない。
ダンパは日ごろの鬱憤を晴らすように女性に殴りつけた。
腹部を力強く殴られており、既に彼女の腹筋には痣の跡が腫れている。
人間よりも筋肉質で鍛え上げられている亜人種の身体ですら、悲鳴をあげるほどの激痛。
悶えて、苦しんでいる。
「うごぉっ……」
「虎人でも悶えるとはな……流石、注文通りの代物だ。これで教育がやり易くなる」
「……クソがッ!亜人種から金を巻き上げている極悪人がッ!」
「おやおや、まだ物足りないようだな……それっ!」
「がばぁっ!」
ダンパは毎日、ボロ布を纏っている亜人種女性を徹底的に殴るのだ。
すでに屋敷にはティーガーのように数人の亜人種女性が身動きの取れない状態で拘束されている。
彼なりの教育であり、彼女たちに共通している事は一つ。
『人前でダンパの悪口や批判を行った』からである。
それだけの理由で密告された上に、屋敷まで連行されてダンパ直々に教育対象となっているのだ。
彼の教育はただ一つ。
自分への服従だ。
その服従さえ出来れば、命だけは見逃している。
しかし、時には反抗的な亜人種もいる。
特に女性に対してはダンパ自身の手で制裁を科す。
彼は性暴力ではなく、直接的な暴力行為を好んでいる。
それは人間種よりも醜く、人間の文化に寄生して生き長らえてきた種族ほど穢れだという考え方に染まっているからだ。
亜人種に対して性暴力を振るうこと自体が、自身の血が穢れる。
そうした排斥的な考えに則り、亜人種への暴力は徹底して肉体を痛めつけることに執着しているのだ。
何故なら『亜人種は人に値しない生き物』という考え方を持っているからだ。
レイシストでサディストという言葉が相応しい。
ティーガーの女性を殴る、殴る。
ダンパは微笑みながら何度も殴った。
腹部が赤く腫れあがり、肋骨にヒビが入っている。
涎を垂らし、痛めつけたダンパは女性に尋ねる。
「どうだ?少しは敬語を使えるようになったか?」
「だっ、誰が貴方なんかに!!アンタはノトレ家の加護がなければ何もできないデブの癖に!」
次の瞬間、ダンパは女性の顔を殴った。
「口の聞き方をわきまえろ!下郎が!!!」
「ぐぅっ!」
ダンパの逆鱗に触れてしまった。
ノトレ家のお荷物である事。
そして体形の事を揶揄したのだ。
これはダンパにとって一番気にしている事でもあるのだ。
顔立ちの整っていたティーガーの女性は、みるみる傷ついていく。
「これだから!亜人種はッ!」
「ごぼっ!」
「なんたるッ!不浄な生き物かッ!!!」
「がはっ!」
「お前たちがいるせいで国が発展せんのだ!」
「ぐぶっ!」
「その不道徳な精神を叩き壊してやる!」
殴る、殴る、殴る。
ひたすらに、グローブが血に染まるまで殴り続ける。
隣に捕まっていた他の亜人種の女性は震えながらその光景を目の当たりにしていた。
ダンパは亜人種女性に対する熱烈な教育を施すことに夢中であった。
彼が日常で感じた鬱憤などは、全て亜人種の女性にぶつけていたのだ。
彼らは人間と違って替えがいくらでも利く。
殴ったり、虐めたり、時にはやり過ぎて死なせてしまうこともあった。
それでも、彼は亜人種の女性を虐めることに独自の美学を感じている。
特に、ノトレ家と自分の容姿を貶す亜人種に対しては徹底的に殴る事にしていた。
ティーガーの女性は、ダンパに数十発も殴られてその場で失神していた。
顔は損傷しており、鼻は折れ曲がって前歯も何本か折れてしまっている。
まだ生きてはいるが、頭部にダメージを負っている状態だ。
人間の側近たちも、亜人種の女性相手に躊躇なく顔面を殴るダンパを見て恐怖した。
「ふぅーっ……これで少しは理解させてあげたわ……おい」
「はっ……!」
「この不届き者を今すぐ捨てておきなさい。ゴミ捨て場に捨てるように」
「はいっ、他の者はいかがいたしましょうか?」
「残りの連中は明日教育することにしよう。後は任せる」
ダンパはそう言って、血の付いたグローブを召使いに渡して部屋を後にした。
失神した女性は拘束具を外されると、ダンパの部下が二人掛かりでティーガーの女性の髪の毛を掴まされてゴミ捨て場へと捨てられる。
人ではなく『物』として捨てられるのだ。
「どうしてこいつらはあの方を怒らせようとするのかね?」
「誇りや尊厳を失ったからその捌け口さ」
「全く、亜人種はこれだから駄目なんだ……ほら、さっさと捨てるぞ」
「ああ、できればくたばってくれたほうが有り難いんだがな」
「そうすればさっさと処分できる。早く野垂死んでくれ」
部下はそう言って、ゴミ捨て場に無造作に捨てたのだ。
ゴミ捨て場に捨てられた彼女は一時間ほど気を失っていた。
生ゴミの放つ異臭が染みついてから、ようやく目を覚ます。
頭部にダメージを追っている状態でフラフラと立ち上がり歩きだした。
満足に歩くことができず、足をズルズルと引きずっている。
「くそっ……アイツに一発お見舞いすることすらできなかった……!」
女性は悔しさのあまり、地面に手を叩きつける。
ボゴォという音と共に、地面に穴が開く。
これほどの力を有していても、ダンパの拘束具を外すことは出来なかった。
捨てられたお陰で、ある意味では助かったが腹部と顔の痛みが響いている。
「絶対に忘れない……そして、必ず復讐してやるッ……!」
殴られた女性はダンパへの復讐を誓い、夜の街に消えていくのであった。




