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私はあなたと異世界で  作者: 山田太郎
【一章】三人の神子達
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18部【エピローグ】

 二人の神子が城に呼び出され、国を動かす者たちと謁見している頃、サラシにジーンズの赤の他人が見れば間違いなく変態扱いするであろう赤い長髪の神が知の神子によって作られた爆心地の前に立っていた。


「こりゃあ、見事に木っ端微塵………いや、灰も残らず跡形もねーわ。お前んとこの神子、ちょっと恩恵強過ぎんじゃねーの?」


 神は呆れた様に、誰もいないはずの虚空へと話しかける。


『大丈夫だよー。マホはとってもいい子だからねー。

無闇に魔法を撃ったりしないよー。寧ろ魔法を撃とうとしないくらいー』


 すると、虚空からのほほんとした男の声が帰ってくる。

 神が虚空に目を向ければ、そこには一つの水晶が青白く光っていた。


「にしても、便利だな伝魔水晶。遠くの奴と会話できんだろ?」

『人間はいつも面白い事を思いつくねー』


 まったくだ、と神は返事をしながら爆心地よりも更に奥へと向かう。


「図書館の資料にはあんまり詳しくは載ってなかったが、三百年前、ここではある実験が行われていた」

『亜人達を使ったキメラの合成だねー』


 そうだ、と神は頷きながらライトを傍らに最新部へと足を踏み入れる。

 そこにあったのは一つの玉座と、その玉座ほどの大きさのある天秤だった。


「あの資料を読んだ時、ちょいと矛盾がある事に気付いたんだよな」

『矛盾?』

「いや、オレ様ってば一応生死の神様だからよ、人が死ねばその記録を確認して魂を次の生に循環させるわけ」

『昔聞いたことがあったねー。色んな世界の死者の魂が集まって均等に配分するシステムー』

「輪廻の輪のシステムだな。最近はめんどくせーからどっかの世界の生死の神が作った機械で振り分けてんだけど、ってんなことはどうでも良いんだよ!」


 玉座と天秤を舐め回す様に見ながら神はゆっくりとそれらに積もった埃を払っていく。


「確かに、三百年前に大量の亜人が実験の犠牲になったのは間違いない。実際に魂が流れてきたからな」

『………んー?おかしくないー?』


 神の言葉に伝魔の向こうにいるのんびり屋の知の神が疑問を抱く。

 何故なら彼らの神子が倒したキメラは数多の亜人達の魂を魔力の塊であるコアを楔にして捕まえておく事により、半分不死身の様な性能を発揮した。

 なら、三百年前に被害者の魂が流れてくるなど矛盾しているのだ。


「あぁ。そこでオレ様はちょいと過去に遡って調べてみたんだよ。ソールイーター絡みの事件以外で魂が大量に流れてこなかったのは無いか。すると、驚いたことに千年前にマジにありやがったのよ」

『千年前?初代最高神が亡くなった年だねー』

「あぁ。残念ながら千年前の世界の記録はありはしねーがな」


 神が埃を払い終われば、玉座には何やら朽ちて掠れた魔法陣が薄らと見える。


「これ、何の魔法陣が分かるか?てか、今更ながら本当にこっち見えてるんだよな?」


 神は眉を顰めながら水晶の向こうにいる神に問う。

 すると、水晶の向こうの神は誇らしそうな声色で答える。


『僕の自慢の仔たちの自信作だよー?伝魔に魔法をかけてー、そっちの伝魔に映る景色を見えるようにしたのー』

「へー、現代を生きる奴らはおもしれーこと考えるもんだ。で、最初の質問の答えは?」


 答えを聞いた神はどうでも良さそうに最初の質問の答えを催促する。


『……………認識阻害かなー?でも何か違和感があるかもー』

「おい、コラ知の神」

『怒らないでよー。だってこれ何か中途半端何だもーん。多分この魔法陣は始点にすぎなくてー、時が経って効力が無くなったから今更見つかったのかもー』


 水晶の向こうの神の答えに呆れたように神は溜め息を吐きながら今度は天秤に目を向ける。


「お前、死の世界が一つや二つじゃないって知ってるか?」

『知らないかなー。僕が知っているのはこの世界の事だけだよー』


 またもや、神は呆れたようにため息を吐く。

 神はポケットに入れていた指貫グローブを装着しながら語り出す。


「いいか?死後の世界ってのは幾つかある。神子たちの世界でも宗教が違えば死後の世界も違ってくる。ま、ウチの世界は宗教なんざ会ってないようなモンだがオレ様が一気に管理してる」

『君がそう言う仕事してるのは見たことないかなー』

「はー!これだから引きこもり体質のガリ勉君は!」


 神は天秤を思い切り蹴り壊してその上に唾を吐き捨てる。


「コイツは人の心臓で罪を測る冥界の神の模造品だ。精々心臓()を抜き取るくらいまでしかできはしねーが………。ふざけやがって」


 明らかに怒りを露わにしている神を見ながら水晶の向こうにいる神は考える。

 誰がこのようなことをしたか、では無い。

 誰がここまでやってきたのか、についてである。

 神子達がこの部屋に辿り着くまでに、誰か一人はこの部屋まで来たはずなのだ。

 でなければ、罠の解除の為に移動手段兼魔法の専門家としてシロコが当てが割れるはずなどない。

 そもそも、呼ばれた理由は遺跡の罠で進めなかったから、のはずなのだ。

 しかし、報告を聞いてみれば罠を解除して進んだなどと言う話はなかった。

 寧ろ最奥まで既に罠は突破されていたと聞いた。


『うーん。謎が多いなぁー』

「あぁ!?」

『うん、何でもないよー』


 知の神と持て囃されては居ても、結局のところは世界の記録を閲覧しなければ知識を得られないただの神だと自身を嘲笑しながら、情報の足りない今は何ともならないと、荒れている神を宥める。


『まーまー、今はとりあえず調査はこのくらいでいいんじゃないかなー?』

「………そうだな。悪い、少し荒れた」

『うんうん。仕方ない仕方ないー。じゃあ、ゆっくり戻っておいでねー』


 何千ものの亜人の心臓を抜き取った者、その目的、ここまで神子達よりも早く辿り着いた者、その何もかもを今の神達ら分からない。

 ただ一つ分かるのは、この聞いているだけで吐き気を催すような研究をしていた者の名前。

 研究日誌の最初に汚いながらに綴られていたその者の名は。

 ラッセンディル・ティンタジェル。

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