寂しい山脈の冒険(part8) ~さて今日の大物です~
「サアアアアアアアアア-」
「ハァハァハァハァ…」
星屑の天蓋までの道をひたすらに歩く私。
途中で朽ちたグリフィン達が、追いかけてくるかと思いヒヤヒヤしながら、歩いていましたが、彼らの襲撃はありませんでした。
もう完全に諦めたのでしょうか。
なら、良いんですが…
そして、時間も何だかんだで4時を過ぎていました。
やっと、夜が開ける。長い鬼ごっこが終わる。
私の心には、一筋の光が見え始めていました。
「…」(私)
まぁ、まだ辺りは…
深い霧に包まれていて、真夜中と変わらないんですけどね。
それで、とりあえず私は、星屑の天蓋に向かって歩いていましたが…
次第に、ある懸念を抱く。
(でも、どうしよう…?)
星屑の天蓋には、まだミズナさんがいるかもしれない。
私は…
いつ朽ちたグリフィン達に襲われるのではないかという不安で、村からガムシャラに逃げていましたが…考えてみれば結局、どこに行こうが朝陽が昇る瞬間まで、安全な場所は無いのかもしれない。
この道を進もうが、戻ろうが、立ち止まろうが-
結局、どの選択肢も棘の道である事は変わらない。
ミズナさんはー
私を騙したのか。一体、何の為に。
そして、凄く会いづらい。
ミズナさんに会ったら、何て言うべきか。
「それじゃあさ~」
「シラをきって『村なんて、何もありませんでしたよ』と言ったら~!?」
迷う私に提案するゼニィーですが。
「いや、流石にそれはダメでしょ…」
「適当過ぎでしょ」
「ええ~、そうかな~!?」
「てか、よくよく考えればボクって飛べるからさ…」
「わざわざ、星屑の天蓋を通る必要もないんだよね~!!」
「先に、サウスヴェルに行ってるね~!!」
そう言って、気まずそうに逃げるゼニィ―。
「「コラアアアア、1人だけ逃げるなアア!!」」
「もう冗談だよ~!!」
「「「!!」」」(私とゼニィー)
で-
そうこうしている内に、星屑の天蓋に辿り着いていました。
「サアアアアアアアアアア-」
星屑の天蓋も、相変わらず深い霧に包まれていました。ミズナさんどころか…全然、前が見えないです。
私は、恐る恐る慎重に歩いていきますが―
「ハアアアア~…」
私の吐く息は、異様に真っ白になる。
寒さは、あまり感じないが…猛烈に寒い事が伺える。
もう温度計は、怖くて見れなかった。
(ツルツルツルツル-)
(ツルツルツルツル-)
「うわ、なにこれ…!!」(私)
そして…
今、歩いている所ですが…何故かツルツルとして結構滑ります。
普通の地面では、無いみたいですが…ここは、一体!?
ま、ま、まさか-!!
もしかして、私は凍った湖面の上を歩いているのでしょうか。
湖がまるごと凍るなんて-
―何て、寒さだ―
「サアアアアアアアアアア-」
「あら、どうしたの―!?」
「戻って来ちゃって!?」
「「「!!」」」(私)
うわ、霧の中から、ミズナさんが現れた!!
ミズナさんは…冷凍庫の中にいる様な、凍り付いた湖面の上を、純白の染められた半袖のワンピースとサンダルを履いて、微笑んでいた。
いや、その格好で寒くないのか-!?
彼女は一体、何者なんだ!?
身が竦む私。
それで、ミズナさんからの質問だ…
でも、どう答えれば。
「フフフフ…」
ミズナさんのニッコリと無邪気に笑う顔は、私を罠に嵌めた様にしか思えなかった。穏便に、ここを切り抜ける方法は…
「…」(私)
「あの~、村なんて無かったよ…」
私は、シラをきる事にする。
「ええ~、結局シラをきるの~!?」
ゼニィーから不満の声が上がるが、私は気にしない。ミズナさんは、相変わらずニッコリとしていた。
そして-
ミズナさんは、その可愛い笑顔を隠す様に
後ろを振り向いてしまう。
「騙して、ごめんなさい…」
「でも、確かにあそこは私の村だったわ」
「…」(私)
「私は、その村の子供だったよ…」
「だけどね…ある日突然、私の村はグリフォン達に襲われて滅んでしまった。幸せに暮らしていたのに…全てを壊されて、殺された。あそこにいた忌々しいグリフォン達は、その時の村人と闘って死んだグリフォンの亡骸よ」
「そ、そうだったの…」
「でも、何で私をあの村に…?」
息をのみながら聞く私。
「私はね、只…」
「かつての幸せの日々を取り戻したいだけなのよ」
(かつての幸せの日々…?)
「だから…」
「だからね」
((だ、だから、何なの…!?))
「「「!!」」」(私)
私は、オロオロしていると-
ミズナさんの純白のワンピースがジワジワと赤く染まり出す。
多量の血で、滲んでいる。
手からは、滴る血がボタボタと地面に落ちる。
【そう、だからねええええ】
【アナタの命も欲しい】
「「ヒィイイイイ!!」」
血まみれの顔で振り返り、ミズナさんは言った。
私は、後退りする。
「サアアアアアアアアアアア―」
【グルルルルルー】 【グルルルルルー】
【グルルルルルー】
【グルルルルルー】 【グルルルルルー】
【グルルルルルー】
「「「!!」」」(私)
同時に、霧が晴れていくと-
そこには、何十体の朽ちたグリフィン達がいました。
皆…槍や弓矢が刺さっている。これは、村にいたグリフィン達でしょうか。
どうやら、追うのを諦めたのではなくて、ここで皆で待ち伏せされていたみたいですね(汗)
【フフフフフフ…】
ミズナさんは、朽ちたグリフィン達の中央に禍々しい魔力と共に浮かんでいた。その身体は、透けている。
「あ、あれは、生きている人間じゃないね~!!」
「典型的な悪霊だよ~!!」
「「えっ、悪霊!?」」
ゼニィーは、怯えながら言う。
「悪霊は、最低でも竜より強いから気を付けてよ~!!」
「「マ、マジですか~!!」」
【よく…あの村から逃げてこれたわね】
【このグリフォン達は、私が魔法で蘇らせたのよ】
【私の目的は、この亡骸を蘇らせる魔法を使って、かつての幸せだったあの日々を取り戻す事なの…】
【村の皆を蘇らせてね】
【只…それには、私だけの魔力じゃ足りないよ】
【だから、貴方の魔力も使わせてくれるかしら…!?】
【生け贄としてね】
【【【【ハハハハハハハハハハハハハハハ~!!】】】】
ミズナさんは、満面の笑みで言った。




