雨の町の冒険(part6) ~さぁ、思い出せ!!~
あの少女はー
一体、誰だったんだろう?
あの少女が、魔法陣を壊すと言った瞬間に―
私は敵と判断して、即座に殺すつもりだった。
しかし、身体がそれを拒否していた。
【何故だ…】
そして、それ以降身体が鉛のように重たい。
まるで、私の意思に身体が抵抗している様であった。
これ以上、剣を振るうなと心が叫んでいる気もする。
上手く表現が出来ないが…
(心が葛藤している…?)
そして、何かを思い出しそうな感じもする。
アイツに会ってから、何かがおかしい…
「「「「「ゴオオオオオオオオオオオオオ―!!」」」」」
「「「ガシャアア―ン!!」」」 「「「ガシャアア―ン!!」」」
「「「ガシャアア―ン!!」」」 「「「ガシャアア―ン!!」」」
「「「ガシャアア―ン!!」」」
燃え盛る町の中…
気付けば、私はバルキードのゴーレム兵達に囲まれていた。
【…】(私)
アイツの事は、もう忘れよう。
私は、剣に業火を纏わせ向かっていく。
【【【ウオオオオオオオオオオオオオオ―!!】】
「「ズバン―!!」」 「「ズバン―!!」」
「「ズバン―!!」」 「「ズバン―!!」」
「「ズバアアアアアアアアン―!!」」
「「「「「「「ドゴオオオオオオオオオオオオ~ン!!」」」」」」」
「…」
「…」
【ハァハァハァハァ…】
私はー
アイツと会った後、何十体…いや、何百体のゴーレム兵とサラマンダーを斬っただろうか。しかし、身体の重たさが治る事はなかった。
そして、次第に激しく息切れをしてくる。
【ハァハァハァハァ…】
私が疲れながら、切り倒した敵の屍の山の上で佇んでいると、その少女はまた…また私の前に現れた。
【【【お、お前は、一体…!?】】】
◇
「ゴオオオオオオ…」
「ゴオオオオオオ…」
「ゴオオオオオオ…」
私は、またルイアの目の前に立っていた―
燃え盛る町の大きな広場で、数多のゴーレム兵とサラマンダーの屍が…
山の様に積まれた頂上にルイアはいました。
そして…
地面の下からは、何かが激しく流れる様な『ゴオオオオオオ…』と言う不気味な音が聞こえる。
(これは、何の音でしょうか…?)
(((いや、それよりも―!!)))
「「ルイアアア―!!」」
私はー
真剣な目でルイアを見つめます。
【【【お、お前は、一体…!?】】】
ルイアは、そんな私の気迫に押されたのか、困惑しながら言う。
そして、酷く疲れているのか、息切れもしていました。
その内にルイアは、手で頭を抱えてしまう。
【【ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ…】】
【【ギリギリギリギリギリギリ…】】
その手には、凄まじい力が籠っていて、そして…
激しく歯を食いしばっている。
次第に手の中の表情は、禍々しくなり…
憎悪に満ちた凄まじい形相で、私を睨み付ける。
【次に会ったら、殺すと言ったよな…】
屍の山に立ち、禍々しい言葉と表情で私を見下ろすルイア…
それは、まるでー
あの悪夢と同じ様な状況であった!!
「ゴオオオオオオ…」
「ゴオオオオオオ…」
「ゴオオオオオオ…」
だけど、私は全く怯みません!!
「「「「ルイア、私は―」」」」
「「「「「グウオオオオオオオオオオオオ―!!」」」」」
「「「「「!!」」」」」(私とルイア)
私が言いかけた、その瞬間であったー!!
突然、辺りで死んでいたはずの巨大サラマンダーの1体の目に、赤い光が灯ったのだ。そして、けたたましい唸り声をあげて、ルイアに爆炎を吐こうとする!!
【【しまったっ!!】】
【【斬り込みが、浅かったか―】】
ルイアは、そう言って剣を振ろうとする。
しかし、力が抜けていたのか、屍の山の血に足を滑らせて転んでしまう。
ルイアが危ない 助けなければ―!!
(((少しでも、ルイアを遠くに!!)))
「「「「「ルイアアアアアアアアアアアアア―!!」」」」」
私は、力一杯に叫んだ!!
そして、頭で考えるより、先に身体が動いていた。
私が持てる全ての魔力を推進力に変えて、凄い速さでルイアの所に行き、ルイアを屍の山から突き飛ばしたのだ!!
「「バアアアアアアアアアアアア―ン!!」」(ルイアを突き飛ばす音)
【【【【【!!】】】】】
◇
「「バアアアアアアアアアアアア―ン!!」」(イブに突き飛ばされる音)
『ルイア!!』と叫び、私を突き飛ばしたイブ…
直後―
私は雷に打たれたかの様に、全身に凄まじい衝撃が駆け巡った。
その姿は、あの日の光景と重なった。
私が生きていた時に、一番心に残っていた記憶ー
私の頭の中の大部分を占めていた記憶。
それは…
和やかで、楽しかった時の思い出か。
それとも、喜ばしく感動した時の思い出か。
いや―
それは、必ずしも良い記憶とは限らない。
その記憶は、あの人の最期の姿だった
私を…命を省みず突き飛ばして助けてくれた
遠く彼方に、消えてしまった大切な人の記憶
思い出す度に
私の胸をいつもギュウギュウに潰れる程に締め付けていた
(((((狂おしく悲しく辛い記憶―!!)))))
張り裂けそうな悲しみが今、私の記憶を呼び覚ます!!
【【【お、お前はアアアア…】】】
「「「いや、貴方は…」」」
「「「「「貴方様はアアアアアアアア―!!」」」」」
―イブ!!―
私は、目に涙を浮かべる。
「「「「「「「ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ―ン!!」」」」」」」
そして、私達は巨大サラマンダーの凄まじい爆炎に飲み込まれた。




