53話 ヤモリ
※◇の記号は、視点が切り替わる合図です!!
【全身を焼き焦がれた私は、間も無く死ぬだろう】
【結局…あの人との眩い約束は、何も果たす事が出来なかった】
【私に…もっと、もっと、もっと力があれば】
【【【【【猛炎の如く、全てを焼き払う力があれば―】】】】】
◇
「「「「「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオ―!!」」」」」
私とゼニィーは、下へと続く階段を足早に降りていました。
階段の中は、オレンジ色の眩い光で包まれて、炎が吹き荒れています。
とても高熱な事が伺えますが、それらはゼニィーのバリアが防いでくれます。
まるで…
全身に、防火服を着ている感じですね。
バリアが無かったら、瞬く間に灰になっているでしょうか。
何か…不思議な場所を歩いている気分です。しばらく…そんな階段を降りていきますと、その先には本日3回目の大きな扉がありました。
(ゴクンっ!!)
「…」(私)
この扉の向こうにルイアは、いるのでしょうか…?
私は、期待と不安を胸に力一杯、扉を押し開けます!!
「「バアアアアアアアアア―ン!!」」
「こ、ここは…!?」(私とゼニィー)
扉の先は、町中でした。
私達は、道の真ん中で立っていた―
「「メラメラメラメラメラメラメラメラ―!!」」
「「バチバチバチバチバチバチバチバチ―!!」」
辺りは…燃え盛る炎が音を立てながら、町全体を燃やしています。
空高く立ち昇った火炎は、明かりや人気の無い宵闇の町を眩しく照らしていました。私は、グルーっと周りを見渡します。
(どうやら、パーシャとは別の町みたいですが…)
4~5階くらいの建物がズラーっと建ち並んでいる。
更に空を見上げれば、舞い上がる火の粉と共に、黒煙の様な真っ黒な雲がビッシリと…見渡す限りの空を覆い尽くしていた。
その雲は…よく見ますと黒い何かが、沢山蠢いてる。
遠くからでも、それが分かってしまう程に。
(ゴクンっ!!)
あれは、全部『カコシ』なのでしょうか…
そんな、気がしました。
そして、振り向くと…いつの間にか大きな扉が消えていました。
(あっ、帰れなくなった…)
「この場所は、異空間だね~!!」
ゼニィーは、言います。
「「い、異空間っ!?」」
「そうで~す!!」
「異空間はね―」
「…」(私)
ゼニィー曰く…
呪具は異空間を作り、その中に在処を隠すタイプの物があり、今回はそのタイプらしいです。このカコシの呪具は、パーシャの町の地下の空間を歪ませて、異空間を作ったそうですね。
そして―
その異空間の大きさや構造の複雑さは、呪具の強さに比例して増していき…より強大な呪具になるほど、大きな迷宮を造り出してしまうとの事です。つまりですが…RPGゲームで言えば、ダンジョンみたいな感じなんでしょうか。
それで、今回のこの異空間の出来映えはと、言いますと…
「ここまで大きい異空間は、見た事はないよ~!!」
「町を丸々、造り出すなんて…これは、かなり強大な力を持ったヤバい呪具だね~!!」
…だそうです。
呪具専門家のゼニィーは、言いました。
「マ、マジですか…」
ここから、どうやってルイアを探すの…?
「…」(私)
私は、熱風に吹かれながら考えていますと―
「「「グルルルルルルルルルルルルル―」」」
「「「!!」」」(私とゼニィー)
あれれっ、おかしいぞ。
頭上から猛獣が、唸る声が聞こえますけど…
私達は、見上げると―
「「「ギャアアアアアアアアアアアア―!!」」」
建物の壁に、ヤモリの様に巨大なサラマンダーが張りついていました。
パッと見て、大きさは20メートル以上ありますね。
さっき、見た時はいなかったのに!!
「「あれは、擬態だよー!!」」
「「うそオオオオ―!!」」
そして、間髪を入れず勢い良く、私達に向かって火炎を吐きます。
「「「ヴアアアアアアアアアアアアアーン!!」」」
爆炎が、辺りの物を吹き飛ばす!!
「「ヒィィィィィィィィィー!!」」
私は火炎に飲み込まれながら、走ってその場から逃げます。
「「あれは、巨大サラマンダーだ!!」」
「「サラマンダーは、あんな感じで…擬態で待ち伏せして攻撃する事があるんだー!!」
ゼニィーの解説が入る。
「「そ、そうなのね!!」」
「「だけど…サラマンダーは攻撃力は強いけど、動きはとても鈍いんだ。それは、イブの足でも逃げ切れる程だよ~!!」」
「「それ、どうゆう意味よっ!!」」
「「走って、離れるよー!!」」
「「わ、分かったわ」」
「「ハァハァハァハァハァハァハァ―」」
私は、ひたすらに町中を駆けていきます!!
息を切らしながらも、懸命に―
そして、曲がり角を曲がった時でした。
「「ドシンっ―!!」」
「「ギャっ!!」」
私は…何かに、ぶつかって尻餅をつく。
私は必死に走っていましたので、前をよく見ていませんでした。
ここが普通の町ならば…何か運命的な出会いを期待する展開ですけど。
恐る恐る、顔を見上げると―
「「ウォっ―!!」」
それは、大きな岩で出来たゴーレムでした!!
「「ギャアアアアアア―!!」」
「「ゼニィー、これは何の魔獣ですかアアアア!?」」
「「いや、何コレー!?」」
「ええええええええ―!!」
私は叫びながらゼニィーに聞くが、ゼニィーも分からないとの事。
…ていうか、これはまさか―!!
このゴーレムはー
私がパーシャの本屋の文献で見た、バルキードのゴーレム兵と同じであった。形も大きさも全く同じです。これは、バルキードのゴーレム兵だ!!
何故、この空間にー!?
「「!!」」(私)
そして、ゴーレム兵は間髪を入れずに魔法陣を発現させて、そこから私達に向かって凄まじい光線が発射される。
「「「ピカアアアアアアア―ン!!」」」
「「「ギャアアアアアアアアアアアアー!!」」」
「「「「「「「ドゴオオオオオオオオオ―ン!!」」」」」」」
私達の今日、何度目かの叫び声は…爆炎の中に消えていきます。




