69話 忘れ事?
~数日後の朝~
「チュンチュンチュンチュン―」
私は、杖をついてパーシャ騎士団の建物前に立っていました。
フラフラですが、私はやっと歩けるまで回復していたのです。
天気は、相変わらずの晴天です!!
私は―
今度は朝陽に向かって、杖を高々に掲げます。
では、再び出発しますよ!!
「…」(ゼニィー)
「ん~ゴホンっ!!」
「あっ、良い匂い…」
私達は…緩やかな丘の道を下って、町のメインストリートを歩いていました。晴れ渡る天気もそうですが、レンガ造りの風情ある町並みからも、相変わらずに美味しそうなパンの匂いが漂っていますね。
とても食欲をそそる芳ばしい匂いなので、買って食べたい所ですけど…
しかし、お金がありませんので買う事は出来ません。
「お店の中に入って、匂いだけ嗅げば~!!」
「「いやっ、切ないよ!!」」
「「!!」」(私)
「んっ…このお店は!?」
そして私達は、とあるパン屋の前を通っていました。
それは…
子供が、とてもワクワクしそうな小さなお城の形をした建物でした。
このお店は、この町の老舗の『お菓子の城』とかいう菓子パン屋みたいですね。この町で一番美味しいパン屋と言われていまして、人気のお店みたいです。
この町を散策していた時に、町の人から聞きました。
私は童心に帰った様に、キラキラとした目でそのお店を見つめる。
さっきは…あんな事を言っていましたが、やっぱりお店の中に入って、匂いだけでも嗅いでいきましょうか。そうしたら、余計に食べたくなってしまいますかね。
(んん~、どうしましょうか…)
「…」(私)
「まぁ、この町には、また戻って来そうな感じがするし、その時でも良いかな…」
私は世界を一周して、この町にまた戻ってくる感じ…というか、そんな意気込みでした。
「じゃあ、また戻って来た時に匂いを嗅ぐんだね~!!」
「「いや、その時は、ちゃんと買うわよっ!!」」
冗談で言っているのか、本気で言っているのか、最早分からない…ゼニィーさん。
「ハァ…」
「それにこの町のパンは、まだ本調子じゃないみたいだし。もっと、美味しくなってから食べるのも良いんじゃないのかしら」
「ふ~ん、なるほどね~!!」
そう、それとあとですが…
私は、楽しみを後にとっておくタイプの人だから―
だから、用事を済ませた後に、ゆっくりと食べましょう。
私は、風に靡く髪を抑えながら、再び歩き始めます。
○
「ヒュウウウウウウウウウウウウウー」
「テクテクテクテクテクテク…」
見渡す限りの草原を、爽やかな風が駆け巡っています。私達は町のメインストリートを通り過ぎて、町の外に出ていました。そして、風が靡かせる草原の道をテクテクと歩いています。
しばらく、進みますと…
光のカーテンみたいなヒラヒラとした不思議な日差しが差し込んでいました。これは、麗光結界の境界の様ですね。私達は…光のカーテンを潜り抜けて、いざ結界の外に出ます!!
「ゼニィー、あの町に忘れ物とかは無いかしら!?」
私は、ゼニィーに確認で聞きます。
「いや…」
「ボク、何も持ってないし…」
ゼニィーは、困った顔で言う。
「イブこそ、忘れ物とか大丈夫なの~!!」
「私は、大丈夫だと思うけ…んっ!?」
「どうしたの、イブー!?」
私は、急に思い出した様に立ち止まって考える。
「そういえば…」
「忘れ物というか、何か忘れている事がある気が…」
「私達が、色々とお世話になった人…」
「えっ…!?」
「そんな人って、いたっけな~!?」
ゼニィーは、言う。
(ゼニィーは、知らない人なのか…?)
「!!」(私)
あ~、そうそう、そうです。そういえば…あのオッサンとは結局、会わなかったですね。パーシャの町で会える事を期待していましたけど、少し残念ですね。
まぁ…オッサンも旅人みたいですし、旅を続けていけば、その内にまた会えるでしょうか。きっと、そんな感じがします。
私はそんな思いを抱き、パーシャの町を背に再び歩き始めます。
「いや、それがね…」
「アンタを召喚する前に、ここでお世話になった人がいてね…」
「へぇ、そんな人がいたんだ~!!」
「アンタと同じ様に、能天気でどうしようもない奴だったわよ」
「「いや、ボクは能天気じゃないよー!!」」




