184話 対策済み
【ええ~ゴホン!!】
【それでアナタがさっき通った扉ですが、カミューラが “忍の魔法 騙し絵カーテン” で作り出した迷宮の入り口でね。足を踏み入れたら最後、二度と出られない迷宮となっているんですよ~!!】
ドップスは、くノ一の肩をポンポンと叩きながら言う。
-そう、カミューラはね-
【『無錠の牢獄』で作った記念すべき1体目の人形なんですよ…】
【そして…】
【1体目の人形は只の人形ではないんだ。その人形には自我が宿り、この『無錠の牢獄』の使い方を色々と教えてくれるんだよ。そして、魔法も使う事が出来てとても強いんですよ~!!】
「マ、マジですか…」
「…」(私)
うう、それはつまり-
カミューラは『無錠の牢獄』の説明書役みたいな感じなのか。いや、なんとなく直感ですが、カミューラは呪いのカメラそのものなんではないでしょうか。呪いのカメラが自我を持って、あの…くノ一の人形を通して喋っている感じがする(汗)
【形勢逆転ですね。イブさん…】
【鍵がささった時は本当に焦りましたよ。ですが、人形を戻す為には最後に私の意志が必要だったみたいですね。焦っている時にカミューラに教えて貰いました】
【まぁ、確かに…】
【この鍵は人形になった者を助けると言った生温い理由で作った鍵では無いですからね~!!】
【…】(ドップス)
【鍵をわざわざ作った本当の理由も忘れてましたよ】
【昔過ぎて、あの忌々しい戦火の記憶と共に】
【記憶の彼方に消し去っていました…】
「!!」(私)
【と言いますかアナタ、鍵に接着剤でも付けたんですか!?】
【全然、鍵が抜けないんですけど…いくら私の意志がないと戻せないにしても、これは気分が良いものではありせんね。まるで拳銃をこめかみに突き付けられている気分ですよ。生きた心地がしません…】
【しかし、カミューラよ…】
【人間に戻せない事を知っていたのに何でもっと早く教えてくれないんですか!?】
【ムシャムシャ…】 【ムシャムシャ…】
【焦る私を見たかったのですかね】
【ハァアア、嫌な性格ですね…】
【ムシャムシャ…】 【ムシャムシャ…】
【というかカミューラ、アナタ何を食べてるんですか!?】
【パン】
カミューラは言う。
カミューラは何故かパンの欠片をムシャムシャと食べていた。
【…】(ドップス)
【ん~ゴホン、それでイブ君…】
【アナタ、本当は強い防壁の魔法の使い手なんですね。いや、弱いかと思いましたが、我々を油断させる為のフェイクだったんですね。大変、失礼しました。天の爪なんかよりも全然手強いですね!!】
【本当に凄い焦りましたよ…】
【この世のあらゆる恐怖、死の恐怖すら克服した…この私が久々に恐怖を感じました。アナタを私の首を狙った数少ない敵として認識してあげましょう。そうゆう事なんで…】
【では、さようなら-】
(スウウウウウウウウウウウウ-)
「!!」(私)
ドップス達は何も攻撃を仕掛ける事なく、目の前から消えた。これからバトルが始まりそうな予感でしたが、これは一体…!?
「多分ね、この迷宮に閉じ込める事で魔力切れを狙っているか、餓死するのを待ってる感じだね~!!」
「あっ、ゼニィー!!」
突然現れたゼニィーが言う。
良かった、ゼニィーさんがいた。
「ドップス達と一緒に来ましたよ!!」
「イブ、突然行っちゃうからさ~!!」
「そ、そうなのね」
「でも、これからどうしよう、ゼニィー!?」
「向こうも中々の強敵だね」
「強い防壁の魔法の対策もバッチリだね~!!」
「…」(私)
対策か…
そ、そうか。いくら頑丈な防壁の魔法でも、補給を絶ってしまえばその内に魔法は保てなくなってしまうのです。頑丈なお城を攻め落とす戦法の兵糧責めと、やり方が似てるでしょうか。
ドップス達は、私にこの迷宮で永久的に迷わせて、力尽きるのを待っているのでしょう。
「まぁ、こうなる事は予想してましたよ~!!」
「フフフ、でも安心して下さい。なんと、ここまで来るまでの道のりにパンの欠片を落としてきたんですよ~!!」
「ゼニィー、それはつまり…」
「う~んと、どうゆう事なの!?」
「ボクはドップス達とここに来たんですよ。そして、ドップスは迷宮の入口からここに来たという事です。つまり、パンの欠片は迷宮の入口まで続いていると言う訳なんですよ~!!」
誇らしげに言うゼニィ-。
おお、でも今回ばかりは-
「凄いわゼニィー、やるじゃない!!」
「そうでしょ~!!」
「…」(私)
「いや、ちょっと待って」
「そのパン、多分食べられてるわよ」
「え、ウソ…」
これは精霊対策も万全という訳ね…
カミューラはゼニィーの事が見えているのか。分からないけど。
と言うかどうしよう、もう頼るのはこの魔法しか-
「「ピカアアアアアアアアアア-!!」」
―トリック魔法発動―
-これは私がこの世に遺した最後で最強の魔法-
-例え鍵がどんな離れた場所にあろうとも-
-どんな悪人の手に渡ろうとも-
-鍵は常に我が手の内の中に-
「「!!」」(私)
突然、私の目の前が光り出す!!
あとですが頭の中で『トリック魔法がなんとか…』とか聞こえましたが、これは誰かのテレパシーなので…
「「うわぁ!!」」(私)
((ええ、手っ…!?))
私はまた驚く!!
気付くと青白く光る手が私を腕を掴んでいます。そして、こっちに来いみたいな感じで引っ張っていますが…
いやちょっと待って。もしかして、また走るの!?
と思った瞬間に凄い勢いで引っ張られる!!
私は引っ張られるままに走り出します。
((ちょっと、待ってよオオ~!!))
((もうヘトヘトなんだけど~!!))