68話 地球へ…
「ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウ―」
私は―
遠くの彼方の地平線に見える朝陽に向かって、歩き出していました。
朝霧を吹き飛ばす、爽やかな草原の風を全身に浴びながら。
今日は、とても良い天気が期待出来そうですね!!
さて、これからどこに行きましょうか!?
この果てしない世界で一体、何をしましょうか!?
そんな事を考えていました。
ですけど…
そんな、私のこれから始まるであろう旅ですが…
それは、パーシャ騎士団だった建物から数歩、歩いた所で終わっていました。
「「バタンっ―!!」」
「「ちょっとイブ、大丈夫~!?」」
ゼニィーの声が遠くに聞こえる…
そして、目の前が真っ暗になる。
私は…
パーシャ騎士団だった建物から数歩、歩いた所でぶっ倒れていました。
「…」
「…」
「…」
○
「「ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ―!!」」
「んっ…」
「ここは、俺の部屋…?」
俺は目を覚ますと、部屋の畳の上で仰向けに寝ていた。
そこは、いつも通りのボロアパートの俺の汚い部屋であった。
窓ガラスからは…
燦々と日差しが差し込んで、ゴミ溜めと一緒に俺を照らしていた。
「…」(俺)
(もう、朝か…)
俺は、ボンヤリとそう思う。
「「ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ―!!」」
遅れて気付くと、けたたましい目覚まし時計の音が、嫌な朝の訪れを教えていた。昨日バイト帰りの俺は、どうやら…疲れて、そのまま寝てしまったらしいな。仰向けになった俺の隣には、昨日コンビニで買った晩飯が転がっている。
「はぁ、夢か…」
俺は天井を見つめて、ため息を吐く様に言う。
だが…
だがだ…
それにしても、何か壮大な夢を見ていた感じがしたな。
本当に遠い世界、異世界にいたような感じだ。
そして…
これから旅が始まる所で、ちょうど終わってしまったな。
出来れば、あのまま旅を続けたかったけど。
なんか、良い所で終わってしまったな。
(まぁ、夢なんて、そんなもんだろうか…)
「ハァ…」
俺は、もう一度ため息を吐いていた。
しかし、少し寂しい気持ちもあったが、俺はウッスラと笑みを浮かべて、身体をグ~っと伸ばします。
「んんんん~」
「ハハハっ」
でも、楽しい夢だったじゃん!!
俺は、鳴り響く目覚まし時計の音を気にせずに、しばらくボーっと天井を眺めていたが…しかし、流石にうるさいので、仕方なく…重たい身体を起こして、目覚まし時計の音を消そうとする。
「よいしょっと…」
「あ~あ、今日のシフト何だったけな…!?」
(んっ…?)
(そういえば、昨日…目覚まし時計なんてセットしたっけな?)
微かな疑問を抱き、目覚ましを消そうとする俺。
いざ、目覚ましを見てみると―
「んっ―!?」
「「「ギョギョギョっ!!」」」
その目覚まし時計は、ゼニィーの形をしていました!!
(((((何だ、この目覚まし時計―!?)))))
「「「いや、違うぞ!!」」」
これは―
「「「「「夢だアアアアアアアアアアアア―!!」」」」」
「「「「夢だアアアアアアアアア―!!」」」」
「「「夢だアアアアアア―!!」」」
「「夢だアアア―!!」」
「夢だぁ~」
「…」
「…」
○
「おはよ~!!」
「「「ハっ―!!」」」(私)
眩しい光の中から、ゼニィーが話しかけてくる。
―目を覚ますと、私はパーシャ騎士団だった建物の中にいました。
「何だ、夢か…(汗)」
最早、どっちが現実なのか分からない感じがしました。
「あ~、ゼニィー…」
「私に一体、何があったの…?」
私は弱々しい声で、ゼニィーに聞きます。
あとですが…身体を動かそうとしても、痛くて動かす事が出来ません。
私は仰向けに倒れたまま、廃墟の部屋の天井を力無く見つめます。
「痛てててて…」
「この全身の痛みは、一体…!?」
「どうやらね~」
「果ての魔法を使った反動で、筋肉痛になったみたいだね~!!」
ゼニィーは、言う。
「反動…筋肉痛…ですか!?」
「全身、酷い筋肉痛みたいだからね!!」
「数日間は、安静が必要で~す!!」
「そ、そうなのね…」
この全身の酷い痛みは、筋肉痛なんですね。
てっきり、全身の骨が折れている感じがしましたけど…なら、良かった。
廃墟の部屋に横たわる私は、少し安堵します。
「てか運ぶの、大変だったよ~!!」
そしてゼニィーは、いきなり倒れた私をこの廃墟の中まで、引きずって運んでくれたらしいです。はぁ、そうだったんですか…
「有難う、ゼニィー…」
私は弱々しい声で、ゼニィーにお礼を言う。
「…」(私)
ところで、何で筋肉痛だと分かったのでしょうか。
お医者さんに、診て貰った訳でも無いですのに…
「それは、あのワンちゃん達が言っていたからだよ~!!」
疑問を顔に出している私に、ゼニィーは言います。
「そ、そうなの…!?」
「そうだよ~!!」
「ボクはね、動物の声を聞く事が出来るからね~!!」
ゼニィー(精霊)は、動物の声を翻訳が出来るらしい。
「あのワンちゃん達はね―」
ゼニィー曰くー
あのワンちゃん達…ゴケンジャーが異界に戻る際にゼニィーの所に来て、言ったみたいです。『反動で数日間は、全身の筋肉痛で動けなくなるから、様子を見てあげてね』と―
そして、全身の筋肉痛が治るまでは、果ての魔法も使えないとの事です。
更にこの反動による筋肉痛は、あらゆる回復魔法や回復薬が効かないので、地道に安静にして治して下さいとの事です。
そして…
更に、何かを言いかけていたみたいでしたが、尺が足りずに途中で消えたみたいです。
「は、はぁ…」
「そうなんですね」
(親切なワンちゃん達ですね…)
果ての魔法の反動については気になっていましたが、私はジワジワとそれを実感していました。そして、言いかけた…何かも、気になる所でありますけど。
「ハァ…」
私は、廃墟の部屋の天井を見つめて、ため息を吐きます。
まぁ、筋肉痛は数日で治るのならば、また旅は続けられそうですね。
とりあえず、今はこのまま休みましょうか…
私は再び、眠りについた。
~作者より~
ここまで、読んで頂き有難うございます。
それでなんですが…
なるべく、小説内にて設定をお伝えする様にはしたいんですが、ここで1つだけイブゼニの世界観を構築している大きな設定をお伝えしたいと思います。
イブゼニの世界のパワーバランスを作っているのは…
『代償』『制約』『反動』
になります。例えば…
悪魔は力が強いが、使用する闇の魔法の強い『代償』により、その心は酷くグニャグニャに歪んでしまっている。
天使は力が強いが、使用する光の魔法の強い『制約』により、その姿は夢の中でしか見せる事が出来ない。
果ての魔法は強いが、強い『反動』により、そう易々と使用する事が出来ない。
…といった様な感じです。ざっくりとね。
これからも更に、不思議で凶悪な設定や伏線が多々出てきます。
お楽しみに!!
それではー




