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176話 天の爪




「「キャアアアアアアア~!!」」

「「誰か助けて~!!」」




えええ何だ!?

向こうから、誰かの叫び声が続けて聞こえてくるんですが(汗)


一体、誰の声なんだ!?

どうやら、女性の声みたいですが…

今までの楽しい歌声や歓声とはまるで違う、それは助けを求める声だ!!



((は、早く助けに行かないと-))



「「!!」」(私)


いやいやいや、待てよ!!

もしかしたら、この悲鳴も只の人形のセリフかもしれない。だとしたら、別に行く必要は無いと思うけど。




「「ゼ、ゼニィー、どうしよう!?」」


慌てる私は、もうどうしたら良いのか判断が出来なくなっていた。頭の中がもうゴチャゴチャだ。





「もしかしたら、サーラちゃんの声かもしれないよ~!!」



「ああ、そうか…」


我に返った私は言う。

そういえば、私はサーラちゃんを助けにここに来たのでした。色々あり過ぎて、忘れていた。私は急いで、叫び声が聞こえた場所に向かって走って行く。




「ハァハァハァハァ-!!」




「「!!」」(私)


すると、小柄で金髪の女の子が土佐犬みたいな大きな野犬に襲われそうになっていた。女の子は青いドレスの様なお洒落な服を着ていまして、この闇夜の墓場でそれはキラキラと光り、良く目立っていました。



サーラちゃんではないが-


見た感じ、女の子は人形じゃなさそうだ。

野犬の方は良く分かりませんが…

とりあえず、助けるわよ!!



「「ウオオオオオオオオオ~!!」」


「「ズテエエエ~ン!!」」


ですが、私は石に躓いて盛大に転びます。




「ちょっと、イブ大丈夫~!?」

「もうボクがやるよ~!!」

「えいマネーアタアアアア~ク!!」



「「キャイイイイイ~ン」」


ゼニィーは野犬に思い切り体当たりした!!

ゼニィーの角が野犬のお尻にプスリと刺さります。

すると、野犬はお尻を押さえながら、一目散に逃げていきました。




「ハァハァハァ、もう大丈夫よ!!」

「私が来たから、もう心配はいらないわ」


私は泥だらけにながら言う。




「セリフと状況が全然噛み合ってないけど、ハハハハ…」


女の子は苦笑いしながら言う。


まぁ、この女の子にはゼニィーの姿が見えてないので、目の前で良く分からない事が起きた感じになってますからね。


私が転んだと思ったら、野犬がお尻を押さえて逃げていく…




「ハァハァハァハァ…」

「でも助かったわ、有難う。普段はあんな雑魚にやられる私じゃないけど、ここまで来るのに魔法を使い過ぎて、魔力切れを起こしていたのよ。本当に助かったわ…」


女の子は安堵して言います。

そして、とても疲れている様で息を切らして、お墓に座り込んでいる。


魔力切れを起こしているとの事なので、回復するまでしばらく時間が掛かりそうですね。




「…」(私)



「私はイブと言います…」

「アナタは、ここで一体何をしていたの!?」



「それはお互い様の質問になるわね」

「アナタこそ、何故この場所に…!?」


女の子は言う。

逆に私の方が聞き返されました。



「えええと、私はドップスに拐われたメイドのサーラちゃんを助ける為に、ここまで来ました!!」



「ふ~ん…」

「と言う事は、ドップスの裏の顔を知っているのね。そんな私も、ドップスに捕まった人達を助ける為に、ここまで来たのよ。名前はマーシャルと言うわ。宜しくね、イブさん」




「へぇ、マーシャルさんと言うんですね」




「そして、私はなんと『天の爪』のメンバーでもあるのよ!!」




「て、天の爪…!?」


私は首を傾げて言う。



「アラ、知らないの!?」

「この王国では『天の爪』の事を知らない人はいないと思うけど、もしかしてアナタは旅人さんかしら。まぁ、不本意だけど世間からは悪い方に有名かしらね。世間からは『王国に楯突く犯罪者集団』とか『王国の景観を損ねるドブネズミ』とか色々と呼ばれているわ。まぁ、簡単に言っちゃえば王国のレジスタンス(反抗勢力)ね」



「そ、そうなんですね」

「まさか、そんな組織があったなんて…」




「この王国はね…」


「大きな町とかに住んでいる中流階級以上の人には優しいんだけど、それ以下の人には優しくないのよ。特に地方の村に住んでいる人の扱いが酷くてね。例えば、重税かしら。王国に納める税金が多額でね…それを払えなくなった村人は犯罪者として捕まって、大抵の場合は処刑されてしまうのよ」



「そ、それは酷いですね」



「それでね…」


「その処刑された人達なんだけど、その死体は全て『呪具』と言われる禍々しい能力を持った魔法具を作ったり、発動させたりする為の材料…生け贄として使われるわ。王国は今…呪具を沢山作る事に専念している。つまりね、王国は生け贄が欲しいが為に、どうでも良い人達を探して…適当な罪を被せて、処刑して生け贄要因としているのよ」



「それがこの王国の腐った現状なのよ」




「…」(私)




「私達『天の爪』は-」

「そんな生け贄にされそうになっている人達を助けたり、元凶となっている呪具を壊したりと日々、影で活動している集団なのよ!!」




「おお、凄いですね…」



「因みに、構成員の殆どは村出身の人達ね」

「皆、天の爪に入るまでの間に色々と大変な経験をしてきたみたい。勿論、この私もね!!」




「…」(私)


マーシャルさんは笑顔で言うが…

上手く笑えていなかった。


抑え切れない悲しみや怒りが、滲み出ている様にも見えます。





「そして、私達の最終目的は只1つ-」

「王国が『宝具』と呼んでいる3つの高位の呪具を壊す事なのよ」







「3つの宝具…」









     -ヴェル王国レジスタンス-



         『天の爪』







その創立は、今から百数十年前。


ヴェル王国とバルキード王国の戦争終結後、しばらくしてからであった。つまり、3つの宝具が作られた時期と重なるわ。それ以降、沢山の呪具が王国内に出回る様になった。




そこから-


私達の長い闘いは、世代を超えて続いている。




私達の存在目的は、呪具の脅威に晒される民衆を助ける事、王国に出回る呪具の情報を集めて破壊する事とか色々あるが、最終目的は只1つだけ-




『3つの宝具』を見つけて、壊す事である。




それを壊せば、この王国の呪具の流通は全て止まると言われている。












「へぇ、そんな組織があったのですね」


私は改めて言います。

呪具を壊す事が趣味の私とは、同業者みたいな感じがするわね。何かとても親近感が湧きます。





「天の爪のメンバーは王国各地に散らばり、黙々と活動しているわ。そして皆、騎士と互角かそれ以上の猛者達なのよ!!」



「ふ~ん、そうなんですね」


と言う事はマーシャルさんも、相当の実力者と言う事なんでしょうか!?


(見た感じ、子供かと思いましたが)


私はそんな思いで、マーシャルさんを見つめていますと…





「それはお互い様でしょ!!」



「「いえいえ、何の事ですか(汗)!?」」




「…」(マーシャルさん)


「まぁ、100年以上も3つの宝具を壊せずにダラダラとやっているけどね。前々からドップスは宝具の内の1つを持っていると言われていたわ。でも、今まで調べに行ったメンバーは全員帰って来なかった。私も何とかここに忍び込んだ訳だけど、魔力切れを起こして死ぬ所だったわ。助けてくれて、本当に有難うね!!」




「いえいえ、そんなお礼なんて…」

「ところでマーシャルさん、この場所って一体何なんで…」






【【【ピンポンパンポ~ン!!】】】





「「!!」」(私)


私の言葉を遮る様に、闇夜の墓場に不気味なチャイムが鳴り響く。






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