175話 慟哭の地下墓地
「へぇ、珍しいお客さんだね」
「どうだい、ゆっくりしていってくれよ」
「「「だ、誰!?」」」(私)
突然、闇夜の中から誰かに話しかけられる!!
私は驚いて、高々と飛び上がります。見ますと、一部が骸骨になった人がお墓に腰掛けていた。そして、私に向かって手を振っている。
これは、お、お、お、お化けえええ!?
「ウワアア…うぐうう」
叫びそうになる私の口をゼニィーは抑える。
「「イブ、イブ~!!」」
「「ちょっと落ち着いてよ~!! 」」
((これが落ち着いていられるかアアアアアア~!!))
「へぇ、珍しいお客さんだね」
「どうだい、ゆっくりしていってくれよ」
「へぇ、珍しいお客さんだね」
「どうだい、ゆっくりしていってくれよ」
「…」(私)
その一部が骸骨になった人は、繰り返し同じセリフを言っていた。
「これはお化けと言うか只の人形だね~!!」
ゼニィーは言う。
「「に、人形ですとオオオオ!?」」
マジか…
私は恐る恐る、一部が骸骨になった人の所に近付いて行き、ジロジロと彼を見てみますと、おお確かにこれは人形…
いやいやいや、生身の人間の様にリアルなんですけどオオ(汗)!!
ですが…
ゼニィーがそう言うのならば、やっぱり凄くリアルに出来た人形なんでしょうね。何だ、只のお化けの人形だったんですね。
ボロボロの洋服を着たお化けの人形は、口がパカパカと動いて喋っている。
そして、一定のパターンの同じ動きをしていますね。
「…」(私)
これは、どこぞのテーマパークのお化け屋敷を思い出しますね。
まぁ、テーマパークだったら面白いんだけどね。
これは実際だからね(汗)
【【ハハハハハハハハ~!!】】
【【キャハハハハハハ~!!】】 【【ワハハハハハハハハ~!!】】
【【アハハハハハハハ~!!】】
それで墓場の中を、特に目的もなく進んで行く私達。
朽ちた人形達は…
墓場の中を楽しそうに走り回ったり、歌ったりしていますね。
ボロボロの楽器を持って演奏している人達もいる。この空間に不気味に流れる音楽は、彼らが奏でていたんですね。
それから、子供のお化けの人形が朽ちた子犬と楽しそうに追い駆けっこをしています。ボールを蹴ったり投げ合ったりして、遊んでいる子供達もいますね。やっぱり、子供は無邪気なものです。
(まぁ、その子供達は皆、頭が無いんですが…)
そして、向こうを見れば…
あらら大変、半分骸骨になったバルキードの騎士とヴェル王国の騎士が剣で闘っていますね。これは一昔前にあったバルキードとの戦争をイメージしているのでしょうか。
(ふふ~ん、良く出来ているわね)
ドップスは、お化け屋敷でも経営してるのでしょうかね!?
私はそんな事を考えながら、愉快な墓場の中を歩いていきます。
ああ、因みに『バリア(ゼニィー)』と『果ての魔法』があるから、こんなに余裕なんですよ(汗)…『バリア(ゼニィー)』と『果ての魔法』が無かったら、恐怖で一歩も歩けず、そのままショック死している事でしょう。
(んんっ、この場所は…!?)
それでしばらく…
墓場の中を歩いて行きますと、少し開けた場所に出ました。ここは広場でしょうか?
その広場の奥の方へ進んで行くと、そこには-
とてもとても大きくて、立派なお墓がありました。私は何かに導かれる様に、自然とお墓の前まで来ていました。
「…」(私)
このお墓は、大きな十字架を抱えた女神像と一緒に建てられている。
女神像は5~6m位ありそうでしょうか。
その姿はこの異様な地下墓地の中でも、一際目立っていますね。
その女神像は、漆黒の暗闇の中
私の事を何も言わずに見下ろしている
(このお墓は、誰のお墓でしょうか…!?)
私は墓石の名前を見ようとしますが…
しかし、墓石に彫ってある文字は全く読む事が出来ない。
墓石には、何かで引っ掻いた様な跡が沢山あるのです。
それは墓石に彫られた文字が読めない程、傷だらけなのです。
そして、その傷跡は所々黒く滲んでいる。
これは恐らくですが、このお墓の下に埋まっている故人を強く嘆き悲しんだ誰かが、お墓の前で泣き叫びながら手で引っ掻いたのだろう。
(きっと、そうでしょうか…)
(((いや、そうに違いない-!!)))
私には確信があった。
それは何故か-!?
【【ハハハハハハハハ~!!】】
【【キャハハハハハハ~!!】】 【【ワハハハハハハハハ~!!】】
【【アハハハハハハハ~!!】】
【【ギャハハハハハハハ~!!】】
【【【【【ウワアアアアアアアアアアア-!!】】】】】
【【【【【ギャアアアアアアアアア~!!】】】】】
【ガリガリ-】 【ガリガリ-】
【ガリガリ-】
【ガリガリ-】 【ガリガリ-】
((ゴクリ-))
だって、このお墓の前にいると…
この墓場に流れる陽気な歌声や音楽は全て、おぞましい叫び声や泣き声に聞こえてくるのだ!!
そして更に、私の頭の中に-
お墓の前で、泣き叫ぶ誰かの姿が鮮明に頭の中に浮かんでくる。
耳を塞ぎたくなる様な大声で泣き叫びながら、墓石をガリガリと引っ掻いている!!
「ウウウ…」
私は思わず、お墓から後退りしてしまう-
「これは残留思念と言われるトリック魔法の1つかな~!!」
ゼニィーは言う。
「「ざ、残留思念!?」」
「「こ、これもトリック魔法なの!?」」
しかし、残留思念とは…
地球でも聞いた事がありますけど。
「残留思念とはね~」
「…」(私)
ゼニィー曰く…
残留思念とは、強い悲しみや怒りを抱いた時に無意識に発動する魔法であり、悲しみや怒りと言った思念が魔力と共にいつまでも、その場に留まり続けるそうだ。そして、その思念と魔力が渦巻く空間に入った者は、当時その感情を抱いた人が見た光景が生々しく頭に浮かんでくるとか。
「残留思念がある場所の近くには、よく悪霊が存在すると言われていますよ。悪霊は皆、生前に強い悲しみや怒りを抱いて死んでいるからね。残留思念が起きやすいんだよね~!!」
「そ、そうなのね…」
と言う事は、この近くに悪霊が…
ミズナさん2号がいるという事なのでしょうか。
(ブルブルブルブル…)
まぁ、ここが誰のお墓である事も気になる所ですが、それ以上に1番気になる事がありまして、それは…
そのお墓の手前には、ポッカリと大きな穴が開いているのだ。
多分…
ここに故人が埋まっていたと思うのですが、墓泥棒の被害にあったのでしょうかね。何も誰も入っていません。
(ううう~ん…)
私は首を傾げながら、もう一度傷らだけの墓石を眺めていると…唯一、読める文字を見つけた。
『いつまでも、天からアナタを見守っています』
「…」(私)
天から見守ってます…と言っても、ここは地下だから天井からだねよ。まさか、忍者みたいに天井にぶら下がって見守っているんですかね、ハハハハ!!
【…】
「「!!」」(私)
と思ってると、急に背筋に寒気がした。
なんか、上から視線を感じる様な気がする(汗)
私は恐る恐る上を見てみますと…
そこには、真っ暗な暗闇が広がっているだけでした。な、何だ、気のせいか。安堵した私は、乱れた息を整えようとしますが…
「「「キャアアアアアアア~!!」」」
「「「誰か助けてええええ~!!」」」
「「「ええ!!」」」(私)
安堵する間も無く、どこからか悲鳴が聞こえてくる。