172話 屋敷の深部へ
「ワイワイワイワイ-」
「ガヤガヤガヤガ-」
雑踏の喧騒の中、私の時間は止まっていた。
((ま、まさか、リルお姉さんが人形に拐われしまったの!?))
私は驚愕して、その場で立ち竦んでしまう。
私に聞いた騎士の人は…いつの間にか雑踏の中に消えていった。
私は頭の中を整理出来ないでいますと-
「人形に拐われるか、あれ何か思い出しそう」
「う~ん、拐われる、拐われる…」
ゼニィーは何やら考え込んでいる。
「「あああああ、そうだアアア~!!」」
「「ええ!!」」(私)
そして、ゼニィーは急に驚いた。
「「昨日の屋敷の探索の時に、ドップスとギレンの会話を聞いたんだ。2人は魔術品オークションの関係者だったんだよ!!」」
「「そして、サーラちゃんが危ないよ。ドップスは昨日の夜、サーラちゃんを拐って商品にするって言っていたんだ。それも拐うのは今日みたいなんだ!!」」
「「ええええ、嘘オオオオ!!」」
「「それじゃあ、早く屋敷に戻らないと(汗)」」
「「うん、そうだね~!!」」
「「今すぐ屋敷に戻って、サーラちゃんを守ろう!!」」
慌てて駆け出そうとする私。
「…」(私)
「あの、その前にちょっと良いですか…」
「「「何ですぐに言わなかったんだアアアア~!!」」」
私はゼニィーに吠える。
「ゴメン、ゴメン~(汗)」
「豪華な料理に、目を奪われちゃって…」
「精霊は1つの事しか、考えられないんだよ~!!」
「「ええええ、何よそれえええ!?」」
必死に走りながら、怒る私。
「「ハァハァハァハァハァ-!!」」
私は全速力で町を走っていく-
途中、何回か転んだでしょうか。
ですが、気にする事なく、ひたすらに進んでいく。
「「ハァハァハァハァハァ-!!」」
((リルお姉様だけでなく、サーラちゃんまで拐われてしまう!!))
((早く、もっと急がないと間に合ええええ!!))
「「ハァハァハァハァハァ-!!」」
「「「バアアアアアアアア~ン!!」」」
私は息を切らしながら、ドップス邸の玄関の大きな扉を開けます。
「あっ、イブさん!!」
「待っていましたよ」
「ハァハァ…」
「あっ、ドップス…いやドップス様」
扉を開けると、すぐにドップスとギレンが待ち受けていた。
「イブさん…」
「アナタにちょっと伝える事がありましてね。サーラさんですが、別の貴族の屋敷でメイドをする事になりまして、つまり転勤ですね。今朝方、もう出発されてしまいました。折角…仲良くなった所、申し訳ないんだけどね。それでサーラさんは皆にお別れを言うと、余計に寂しくなってしまうので、何も言わずにそのまま行かれてしまいました。どうかサーラさんの気持ちを察して下さい…」
「…」(私)
「そ、そうですか…」
「仕事柄、転勤は仕方がない事なので大丈夫ですよ」
「理解して頂き、有難うございます」
「…と言いますか、そんなに息を切らしてどうしたんですか!?」
ドップスは首を傾げながら言う。
「いや、これは何でもないです!!」
「そ、そうですか」
「まぁ、サーラさんが何も言わずに行ってしまった事は寂しい事ですが、お互い立派なメイドになって再び会えば良いじゃないですか。イブさんも無理なく頑張って下さいね」
「は、はい、そうします(汗)」
「フフフ、有難う」
「これからも宜しくね、イブさん」
そう言って、ドップスとギレンは屋敷の奥に消えていく。
(トボトボトボトボ…)
「もう、アンタのせいよ~!!」
私は長い廊下をトボトボ歩きながら、ゼニィーに言う。
「ううう、そんな事言ったて…」
「そ、そうだ、サーラちゃんはまだ屋敷の中にいると思うよ。昨日、ドップスは言っていたんだ。地下に隠し部屋があるから捕まえて、そこに閉じ込めておけって…地下への入り口は、離れの倉庫だと言っていましたよ~!!」
「「ええええ、そうなの!!」」
「「ちょうど、サーラちゃんが怪しいと言っていた場所ね」」
「…」(私)
「フフフフ…」
「それじゃあ、やる事は決まっているじゃないの」
「サーラちゃんを助けにいくわよ」
私は外の闇夜を見つめ、不敵な笑みを浮かべながら言った。さぁ、大分遅れましたが出陣の時間です!!
◯
「「ビュウウウウウウウウウ~!!」」
「「バサバサバサバサ~」」
時刻は21時を過ぎる頃でしょうか。
もう、すっかり夜もふけて周囲は漆黒の闇夜に包まれていました。
私は今…宿舎の部屋のベランダから倉庫の方を眺めている所です。
ここからですと…
バサバサと揺れるヤシの木の合間から、倉庫の姿を遠目ですが確認する事が出来ます。
う~ん、これは結構な距離がありますね。
「…」(私)
どうやって、あそこまで行きましょうか?
私は、しばらく夜風を浴びながら悩んでいました。
すぐにでも、あの倉庫に行きたいですけど…
倉庫周辺の警備は厳重ですし、屋敷の敷地内も警備員がウロウロと歩いている。そして、1番である問題は執事長であるギレンがフォースターと言う事だ!!
一流の上の存在とされる『フォースター』…
すでに常人の域をとうに逸脱している超人と同義。地球で例えるならば、スーパーマンでしょうか。
「フォースターならばね…」
「う~ん軽く見積もっても、この広い屋敷の敷地内の警備でも1人で余裕で完璧にする事が出来ると思うよ~!!」
「「ええ、軽く見積もって、そんなに!?」」
「「じゃあ、屋敷の警備員いらないじゃん」」
味方の時は見た目は怖いけど頼りになるオッサンでしたが…敵になると非常に厄介だ。
「そうだからね~!!」
「気配が駄々漏れのイブがあの倉庫まで、辿り着く事なんて不可能だと思うよ。もうボクだけで行ってこようか~!?」
「いや、私も行かないと意味がないでしょ!!」
「う~ん、でもどうしよう…」
「…」(私)
「もう、これしか…」