168話 探索
「パタパタパタパタ~」
「フヨフヨフヨフヨ~」
「もう、ボクの主人は本当に人使いが荒いんだからね。こんなに大きな屋敷を探索しろなんて、どうかしてるよ~!!」
ボクは、暗くなった廊下をブツブツ言いながら進んで行く。外はすっかりと陽も落ちて、もう真っ暗だね…
庭園のヤシの木は、闇夜の生暖かい風に吹かれて、ユラユラと不気味に揺れている。
それで今夜ボクは…
このドップス邸を隅々まで、探索するつもりであります!!
「ワイワイワイワイ…」
(あっ…!?)
途中-
サーラちゃんを含むメイド数名が、ボクの横を通り過ぎて行く。今日遅番だったサーラちゃんは今、仕事が終わった所で、これから部屋に戻って、イブと夕食を食べるのかな~
「あっ、サーラちゃんじゃん!!」
「お疲れ様~!!」
「スウウウウウ-」
「…」(ボク)
ボクの挨拶を無視して、素通りしていくサーラちゃん。ああ、そうか…ボクは人から姿が見えないのか。
たまに忘れちゃうだよね、この設定~!!
なので、寂しくサーラちゃんを見送るボク。
~1時間後~
「パタパタパタパタ~」
「フヨフヨフヨフヨ~」
それで…
ひと通り、屋敷の中をグルグルと回って行くボク。
でも結構回ったけど、今の所…怪しい物なんて何もないな。
…と言うか、凄く眠いんだけど。
(あと、お腹も空いてるけど)
もう面倒臭いから、屋敷を全部探した事にして、広間のソファーで寝てようかな~
「ハァアア~ア」
(んっ…!?)
そう思いながら、暗く長い廊下を進んで行くと-
廊下の先に、明かりが漏れ出している。ボクは吸い寄せられる様に明かりに向かって進んで行きますと…
どうやら…
僅かに開いたドアの隙間から、光が漏れ出してらしいね。
そ~と中を覗くと、そこにはドップスとギレン執事長がいる。
「…」(ボク)
ここはドップスの書斎だろうか…
ドップスは、まるで社長の様な感じで、部屋の中央にある大きく立派な机と椅子に腰掛けている。そして、その隣に立っているギレン執事長と話している所であった。
「パタパタパタパタ~」
「フヨフヨフヨフヨ~」
ボクはフヨフヨと近付き、2人の会話を聞く事に-
「ギレン君、お疲れ様~」
「いや、オークションの前は来客が多くて忙しいね!!」
「本当そうですよね、ドップス様」
「まぁ、王国中の貴族やお偉いさんがサウスヴェルに集まってきますからね。早い人だと、今の時期からバケーションを兼ねて来てますからね。サウスヴェルの高級ホテルや高級コテージも、もう予約でいっぱいらしいですよ」
「へぇ、そうなんだ」
「この町って、有名な観光地だもんね!!」
「いや、お金と時間を持て余している人達は本当に羨ましいね~!!」
「「オ、オークション-!?」」(ボク)
こ、これは…いきなりビンゴだね(汗)!!
やっぱり、イブの睨んだ通り…ドップス達は魔術品オークションの関係者だったみたいだ!!
いきなりの事で焦るボク-
「モグモグ…」
ボクは書斎の机に置かれていた茶菓子を食べながら、息を飲んで2人の会話を引き続き聞いていく。
「そうだ、ギレン君!!」
「サーラちゃんを、今度の魔法品オークションの商品にしましょう。ギレン君なら、誰にも気付かずに簡単に拐えるでしょう。明日、この屋敷の地下に閉じ込めておいて貰っても大丈夫ですかね!?」
「はい、分かりましたドップス様」
「有難う、ギレン君」
「そうだ…あと、ついでに地下の部屋の入り口の鍵の調子が悪いみたいだから、時間がある時に直して貰っても良いかな!?」
「地下の入り口の扉とは…」
「ああ、あの離れの倉庫の扉の事ですね」
「大丈夫です、分かりました!!」
「急で申し訳ないけど…宜しく頼むね、ギレン君」
「人気商品だからね。少しでも多く用意しといた方が盛り上がるからね。主催者は大変だよ。でも、あと1人…茶髪の女の子を用意したいと思っていた所に、イブ君が来てくれたから本当に助かったよ。サーラちゃんの後釜として、しばらくメイドの方はイブ君に頑張って貰いたいね。それで今回も急ぎだから、他のメイド達にはいつも通りの感じで伝えましょう!!」
「ええと、いつも通りとは…」
「ああ『寂しくなっちゃうから、何も言わずに出て行った』ですね!!」
「そうそう、そうな感じで!!」
「分かりました、ドップス様」
「フフフフ…」
「でわギレン君」
【我が魔術品オークションの成功に乾杯-】
【【【【【ハハハハハハ~!!】】】】】
((すぐ、イブに報告だアアアア~!!))
ひと通りに話しを聞き終えたボクは、部屋から飛び出します。
ま、まさか…
ドップスが魔術品オークションの主催者だったとは。そして、サーラちゃんが危ない-
暗い廊下を一直線に飛んで行くボク。
「「ビュウウウウウ~ン!!」」
「クンクンクン…」
(んっ…!?)
(この匂いは…)