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163話 フランクフルト





「はい、お疲れ様で~す!!」


「あっ、ゼニィー…」


私はアンダーギルドから出た後、また賑わう街中を歩いていますと…どこからかゼニィーが戻って来ました。



「アンタ、どこに行っていたの!?」


「小銭を探していました~!!」

「でも見つからなかったよ~!!」

「そうだ、イブの方は良い依頼は見つかったの~!?」


「はぁ、アンタね…」


他人事の様に聞いてくるゼニィー。

ゼニィーがギルドで突然…消えた後に色々とトラブルがあったので、私はムスっとした顔になります。



「まぁ、色々とありまして、メイドになろうかと…」



「「ええ、メイドに!?」」


驚くゼニィー。



「と言うのもさぁ…」

「依頼の貼ってある掲示板を吹き飛ばしちゃって、覚えている依頼がそれだけだったのよ」


「「えええ、掲示板を吹き飛ばしたの!?」」

「「一体、何があったんですか~!?」」



「まぁ、色々とありまして…」








(う~ん、ですが…)






「そういえば、メイドとなる場所がドップス伯爵のお屋敷だったのよ…」


「ドップス伯爵と言えば、サウスヴェルの町長でもあり、サウスヴェル大商会の会長でもある人なのよね。そこの屋敷でメイドとして仕えるから、ドップス伯爵に近付いて、サウスヴェル大商会の情報を得る事が出来るわよ!!」



「ああ~なるほど」

「一応、考えてはいるんですね~!!」



「あとは…呪具を全部壊して、旅が終わった後は定職に就いて働かないといけないからね。その為に、今から何かしら仕事の練習をしておきたいと思ったから…」




そう-


私は掲示板を吹き飛ばした後…親身じゃないオジさんから聞いたのですが、メイドの仕事はいつでも辞めても良いとの事であった。これは短期バイトみたいな感じね。地球にいた頃はよくやっていたわ。


この世界の社会勉強ね…




「そして、更にいい-」

「リルお姉様もドップス伯爵が率いるサウスヴェル大商会の下で働いているわ。だから…もしかしたら、その内にまた会えるかもしれないわね!!」


私はクルクルと回りながら言う。





「ハァ…」

「まだ諦めてなかったんですね~!!」



「「ハハハハ、当たり前じゃないの!!」」

「「もしかしたら、もう屋敷の中にいるんじゃないかしら!?」」




「そうだと良いね~!!」








「カアカアカア-」



「カアカアカア-」





私は…軽やかな足取りでサウスヴェルのメインストリートである緩やかな坂道を上がっていく。時間は、もう夕暮れに近付いて来ました。後ろを振り向く度に、眼下に広がる海は次第にオレンジ色に染まっていきます。



そして-


その内に通りを歩く人の姿も疎らになっていく。



気付くと…私は閑静な住宅街を歩いていました。

辺りを見渡せば、とても大きな庭を携えた高級な邸宅が建ち並びます。芝生の庭には…ワンちゃんと子供達が楽しそうに遊んでいますね。


何か癒されます。



う~ん、そういえば確か…


坂上の一帯は、主に貴族や富裕層の屋敷や別荘が建ち並ぶ高級住宅街でしたよね。何か…とても場違いな所を歩いている感じです。そう思いながら、私は親身じゃないオジさんから手渡されたメモの住所を進んで行きます。





「テクテクテクテク…」




白い石畳の道に、綺麗に整列している街灯達はボンヤリと明かりを灯し始めていました。



外は…段々と薄暗くなってくる。




そして、しばらくして-




(ふ~ん、ここかしら…?)




ドップス邸に到着していました。


大きな正門の前に立ち止まる私。



「へぇ、凄いわね…」




門の向こう側には、立派な庭園が広がっています。そして、その奥には白く宮殿の様な立派なお屋敷がライトアップされて見えますね。


綺麗なイルミネーションです。


ドップス邸は…この高級住宅街の中で1番敷地が広くて、大きな建物の様な感じがしました。





「…」(私)






「ゼニィー、1つ言っとくんだけどさ…」

「ここで変な事をしてわダメよ」



「えっ、変な事って何ですか~!?」



「ほら、貴族と言えば裕福だからお金も沢山持っているし、豪華な食事だって食べていると思うわ。だから、例えば冷蔵庫の中を漁ったり…大金に目が眩んで、そのお金を勝手に使ったりとか間違ってもしないようにね」



私は少し心配して、ゼニィーに言います。


普段…

道に落ちている小銭を拾って喜んだり、虫を美味しそうに食べているゼニィーが…貴族の別世界の贅沢な生活を見てしまうと我慢が出来なくなって、その様な頂けない衝動に駆られてしまうのではないかと思いまして…


あとですが、身分が天と地の違いがある…貴族である主人の食べ物を盗み食いしたり、お金を勝手に使ってしまったとなると、間違いなく処刑されそうね。


なので…




(まぁ、大丈夫だと思うのですが…)



一応、ゼニィーに釘を刺しときます。





「僕もその位はわきまえているよ~!!」

「失礼だな~!!」


不機嫌そうに言うゼニィー。

まぁ、余計な心配でしたね。



「そう良かった…」


私は安心して言う。






「…」(私)






「ところでアンタ、手に何持っているの!?」


私は両手にフランクフルトを10本持っているゼニィーに聞きます。



「ああ、これはそこの売店で買いました~!!」

「支払いなら、売店のカウンターにお金を置いといたから大丈夫だよ。お金はイブのお財布から出しときました~!!」



「そうなの、なら安心ね…」

 


「うん、そうでしょ~!!」





「…」(私)




「「テェメえええ、言ったそばから何してんだアアアア、主人の金を勝手に使いやがってえええ!!」」


私はゼニィーに吠えます。


「「いやいや、違うんだよ、これは反射でつい~!!」」


「「余計、信用出来ないわアアアア」」

「「それ全部、寄越せえええ!!」」

「「私…召喚した不味い魚しか食べてないのよオオオオ!!」」


「「ええええ、そんな~!!」」







「あ、あの~どうしたんですか!?」

「だ、大丈夫ですか!?」





「「!!」」(私)


私とゼニィーがフランクフルトの取り合いをしていると、後ろから誰かの声が聞こえる。振り返りますと、そこには可愛らしいメイドの格好した少女がいました。



と言うかヤバい…またやってしまいました(汗)


我に返った私の手には、ゼニィーから回収した沢山のフランクフルトを持っていました。周りから見れば、私はフランクフルトを沢山持ちながら、1人で大声を出している変な人にしか見えないのです。



「あ、あのですね…」

「あっ、これはコントの練習をしているんですよ!!」


「決して、怪しい者ではありませんよ」


私は咄嗟に答えるが-



「えっ、コントって何ですか!?」


メイドさんは戸惑いながら言う。




「…」(私)


この世界はお笑いという文化が無いんでしょうか。

それじゃあ、弁解のしようが…




「お、お近づきの印に1本どうですか!?」


「あ、有難うございます」


どうするか困った私は…

とりあえず、フランクフルトをお裾分けする事にする。







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