154話
「「ドシイイイイ~ン!!」」 「「ドシイイイイ~ン!!」」
「「ドシイイイイ~ン!!」」
「「「ウゴオオオオオオオオオ-!!」」」
怒り狂った巨大ゴブリンがこちらに向かって走って来る。怒りの矛先は…どうやら私達でしょうか(汗)
「「「うわアア!!」」」(私)
そして、巨大ゴブリンは-
草原に落ちている朽ちたゴーレム兵の欠片…2~3メートル位の大きな岩をこちらに向けて思いっきり投げたのだ!!
迫り行く、大岩に呆然と立ち尽くす私。
地球ならば、死を覚悟する瞬間でしょう。
しかし、リルお姉様は…
大岩に向かって、トコナッツ君を投げたのだ!!
「「「バコオオオオオオオオオオオ~ン!!」」」
((えええええ~!!))
勢い良く投げられたトコナッツ君は-
朽ちたゴーレム兵の欠片を粉々に粉砕する。
トコナッツ君、強っ-!!
「「「ザバアアアアアアアアアアアア~ン!!」」」
更に直後-
巨大ゴブリンの真下に魔法陣が出現する。
そこから噴水の如く大量の水が吹き出します!!
これは…水の魔法奥義『大噴水』です。
リルお姉様が発動させたのか!!
辺りは、噴水による水のミストで包まれます。
ふぅ~今日の天気は暑いので、これは涼しくて嬉しいですね…
「「ウゴゴゴ…!!」」
「「ウゴゴゴ…!!」」 「「ウゴゴゴ…!!」」
「「ウゴゴゴ…!!」」
それで巨大ゴブリンはと言うと…
緻密に計算された渦巻く水の流れに捕らわれて、噴水の中で溺れていました。どうやら、噴水から抜け出したくても抜け出せないらしい。
「イブ、あとね…」
「魔法は周囲の環境によって、強くする事が出来るのよ。そして、達人は自分が闘い易い環境に変えてしまう-!!」
「「「!!」」」(私)
- 水の魔法 水刃 -
リルお姉様は先程と同様…水刃を放つ。
だがその刃は-!!
巨大ゴブリンに近付くにつれ、どんどん大きくなっている。
(そ、そうか-!!)
水刃は周囲のミストの水分を吸収して巨大になっているのですね。
「「「ズバアアアアアアアアア~ン!!」」」
巨大ゴブリンに当たる頃には-
水刃は巨大な刃になっていた。
巨大ゴブリンは噴水の中で両断されます。
「はい、討伐完了!!」
「「「バシャアアアアアアアアア~ン!!」」」
リルお姉様がそう言うと-
噴水の水は周囲に弾き飛んで消えます。
リルお姉様は慣れた手つきで、クルクルと剣を回して剣に付いた水滴を飛ばす。そして、格好良く剣を収納します!!
「おお…!!」
水飛沫の中の凛々しい彼女のキメ顔は-
ま、まるで、水を操るスーパーヒーローね!!
何か、ヒーローショーを見ている感じですね。
子供が見たら喜びそうかも!!
感心しながら、うっとりと…リルお姉様を見つめる私。
「さぁ、まだまだゴブリンを探すわよ!!」
「は、はあああい」
あっ、感心している場合では無かった。
稽古はまだ始まったばかりなのですね(汗)
((もう、勘弁して下さああ~い!!))
○
「カアカアカア-」 「カアカアカア-」
「カアカアカア-」
「カアカアカア-」 「カアカアカア-」
稽古を終えた私は町に戻っていました。
私達はまた町の緩やかな坂のメインストリートを歩いている。
時間は…もう夕暮れです。
1日って、早いですね。
坂道の向こうにある海を見れば-
今…まさに陽が沈もうとしている所でした。
海面をオレンジ色に輝かせながら…
沈んで行く夕陽は綺麗ですね。
そして、涼しい潮風がヤシの木をユラユラと揺らします。
「ワイワイ-!!」 「ガヤガヤ-!!」
「ワイワイ-!!」
「ガヤガヤ-!!」 「ワイワイ-!!」
そんな町のメインストリートは、相変わらずの人の多さでした。
買い物をしている人や…
こんがりと日焼けをして、海水浴から帰って来た人…
レストランや飲み屋で、皆と楽しそうに食事をしている人達…
「…」(私)
そんな道行く人達の顔や町の活気を見れば、平和そのものですね。バカンスを楽しむ…普通の南国の町です。
見た目は、そんな感じの良い町です。
ああああ、本当に-
この町で魔術品オークションが開かれるのか疑問に感じてしまう。と言いますか、本当に…この王国には沢山の呪具があり溢れているのでしょうか。
町の人達を見る限り、呪具とは無縁に幸せに暮らしていそうですが。
とりあえず、私は…
「ハァハァ…」
もうヘトヘトでした…
疲れた身体と心に、この景色はよく染み込みます。
ですが、ですが、麗しいリルお姉様と一緒に、こんな綺麗な景色を見られるなんて、とても最高ですね~!!
フフフフ、1人で見る景色と全然で違う。
「イブ、お疲れ様でした~!!」
「今までで、一番頑張ったんじゃないの~!?」
ゼニィーは言う。
そうそう、私はゴブリンを10匹も倒してました。
勿論、バリアを1回も使わずね。
まさか10匹も倒すとは…倒せるとは思っていませんでした。
疲れましたけど…
その分、強くなった気がしますね。
「イブ、この道を上にギルドがあるわよ」
少し、前を歩くリルお姉様は言う。
ああ~、そういえば…私は最初ギルドを目指していたんですよね。まぁ、今はそんなに行く必要はないですけど…やっぱり興味はあります。
「ん…!?」(私)
「イブ…」
「あの時はごめんなさい」
リルお姉様は私を背に振り向かず、夕陽を見ながら言う。
「あの時、私はアナタを一度見捨てようと…」
「いや、見捨ててしまった」
「アナタがこれから彼らに何をされるのかを知っていたのに…」
「だけど、そうした私を…」
「ここまで慕ってくれて、本当に有難う」
「…」(私)
あの時…ですか?
ええと、ああ~あの時か…多分、私が人形の倉庫で奇抜な3人組に襲われそうになった時の事でしょうかね。助けを求めた私に対して、目を背けた事を言っているのでしょうか…
フフフフ、まぁ…
地球の頃の私ならば、激おこぷんぷん丸ですが
ここは異世界ですので。
「全然、気にしてないですよ!!」
「リルお姉様は、私の尊敬する師匠様ですよ!!」
私は目をキラキラとさせながら言います。
しかし、リルお姉様は相変わらず後ろを向いていた。
「全て、言い訳になってしまうけど…」
「すでに心に余裕が無かった私は…これ以上、騒ぎになる事は避けたかったの…だから-」
「イブ、アナタは弟子ではないわ」
「本当の妹の様な存在だった…」
「まるで、妹が生き返った様な感じがした」
(リルお姉様…?)
「「ごめんね!!」」
「「アナタを連れていく事は出来ない…」」
「「アナタはこれで真っ当な仕事をして、幸せに暮らしなさい!!」」
「リ、リルお姉様…!?」
リルお姉様は急に振り返り、私の手を握り締めながら言う。私の手の中には札束があった。
「「さようなら-!!」」
「ちょ、ちょっと、リルお姉様-!?」
リルお姉様は雑踏の中に走って行く。
私が呼び止め様としても、彼女は足が速い。
あっという間に、その姿は消えてしまった。
「…」(私)
「あ~あ、フラれちゃったみたいだね~!!」
夕陽を浴びながらゼニィーは言う。
「そ、そうね…」
私は力無く答えた。
いやいや、これは一体どうゆう事なんだアア!?