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153話 稽古




「ハァハァハァハァ…」


肩から息をする私。



何とか、私は…


バリアを1回も使わずに、つまり1回も攻撃を受けずにゴブリンを倒していました。どうやって、倒したかと言いますと…私は、持てる全神経をゴブリンの動きに集中させて、距離を保ちながら安らぎの匂いを発動させました。


そして-

ゴブリンの動きを鈍らせながら、隙を見て地道に攻撃をしたのです。



「ハァハァハァハァ…」


今までで、一番頑張ったかも…

例えるならば、泳ぎが苦手な人が無理やりに身体を動かして50メートルを泳いだという感じですよ。凄い、疲れた…




「お、お疲れ様ね…」


リルお姉様は、苦笑いしながら言う。



「イブ…」

「まずはアナタ、基本的な魔力量が少ないわね」

「まぁ、これは…害獣を沢山倒せば、自然と上がってくるからね。ついでに、身体能力も上がるから…筋トレに、そんなに力を入れなくても大丈夫なのよね!!」



「は、はい…」



「ハァハァハァハァ…」



そうそう、この世界の常識として…

害獣(魔獣)を倒すと、その害獣から魔力と生命力を少しだけ貰える事が出来まして、自身の魔法や身体能力が強化されるのです。


RPGで、イメージすれば…

敵を倒す事で経験値を獲得する。そして、経験値を貯める事でレベルが上がり、強くなれるといった感じでしょうか。




「あとは魔法を上手くコントロールする事よ!!」

「イブ…アナタ、全然魔法をコントロール出来てないわ」


「コ、コントロール…?」



「フフフ…」

「ちょっと、見てなさい」


リルお姉様は、剣を構えると-







-水の魔法 水刃-

    




「!!」(私)


水の魔法『水刃』を発動させた-!!

勢い良く振られた剣からは、半月の形をした水の刃が飛び出します。


水の刃は-

数十メートル先にある朽ちたゴーレム兵に当たると、弾け飛んで消えました。



そして、朽ちたゴーレム兵の表面には…


水刃の跡が、線となりクッキリと残っていました。



「フフフフ…」

「じゃあ、もう1回発動するわよ!!」

「よく見てなさい」


「!?」(私)




「「いくわよオオオオ!!」」




-水の魔法 水刃-



リルお姉様は、もう一度同じ魔法を発動させる。

しかし、今度の水の刃は先程と明らかに違った。

出現した刃は、とても薄く…何より刃こぼれが一切無い、綺麗な三日月の形をしています。


流麗な波紋さえ見える。



まるで、研ぎ澄まされた日本刀の様な美しさです。



日差しに、反射した刃は-


ダイヤモンドの様な輝きを放ちながら

朽ちたゴーレム兵に向かっていく!!




 

「「「ズバアアアアアアアアア~ン!!」」」



「おお!!」


朽ちたゴーレム兵は、綺麗に両断されていました。




「どお、凄いでしょ!?」

「実は…今、放った水刃は、さっきの水刃と同じ魔力量なのよ。違う所は、魔法を上手くコントロールしたか、してないかよ。魔法で発現した水を自由自在に操り、より研ぎ澄まされた刃の形に近付けた感じかしらね。勿論、狙いも寸分狂わずね!!」



「へぇ…」



あ~、そういえば、そうでしたね。

私も長い事、この世界でのブランクがあったので忘れていました。魔法を上手くコントロールする事より、必要最低限の魔力で威力を最大限まで高める事が出来るんですよね。


しかし、この事を改めて思い出しますと…

リルお姉様、凄すぎですね。

研ぎ澄まされた刃の形も凄いですが、それ以上に-



今、リルお姉様が放った水刃は、最初に放った水刃と同じ所に当たっていた。朽ちたゴーレム兵は、ここから50メートル以上は離れているのに…最初の水刃が当たった線の跡にピッタリと寸分狂わず、全く同じ所に当たっていました。



凄まじい、コントロール力ね。



これを-


野球で例えるならば、狙った所に確実にボールを投げて、三振の山を築く野球の神様ベーブ・ルースもビックリの大エース級の制球力ね!!



このレベルは、熟練の騎士団長でも真似が出来ない芸当かもしれない。


彼女は、一体…




「イブは、魔獣使役の魔法を使うのね」

「安らぎの匂いは、ある程度ならば匂いを操る事が出来るわよ。風が吹いても、影響を受けにくいし…狙った所に放つ事も出来るから、敵に効率良く匂いを当てる事が出来るわよ」



「そ、そうですね!!」



「魔法を上手くコントロールするのも、地道に練習が必要なのよ。沢山…魔法を発動させて、感覚を掴むの。それで、ここまでの事をまとめるとね。イブ…アナタがこれから行う事は害獣を沢山倒して、魔法を沢山使用する事」



「ゴブリンならば、私が沢山呼び寄せてあげるからね!!」



「あ、有難うございます…」





(もう、1匹で十分なんですけど…)





  「「ドシイイイイ~ン!!」」  「「ドシイイイイ~ン!!」」



「「ドシイイイイ~ン!!」」



「「ドシイイイイ~ン!!」」   「「ドシイイイイ~ン!!」」




「「!!」」(私)


私が疲れ果てていると…

後ろから、大きな足音が聞こえます。

私は、恐る恐る振り返ると-



 

(((巨大ゴブリン-!!)))



草原の向こうには、巨大ゴブリンの姿が-!!

そして…走りながら、こっちに向かって来ます。

ん~、何か怒っている感じがしますが…



「ついでに、巨大ゴブリンもいたから…」

「討伐しようと思ってね!!」

「挑発して、こっちに呼んだのよ!!」


リルお姉様はニヤリと笑い言う。


「!!」(私)


ま、まさか-!!

あの水刃は朽ちたゴーレム兵を両断した後…更に、遠くにいた巨大ゴブリンに当たっていたみたいですね。それも意図的に…





「そうだ、イブ…」


「あと、もう1つ伝えたい事があるわ!!」




剣を構えながら、凛々しい顔でリルお姉様は言う。








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