表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

151/187

151話 町巡り





「ワイワイワイワイ-!!」


「ガヤガヤガヤガヤ-!!」



午前の爽やかな日差しに照らされた

町の通りを歩いていく、私とリルお姉様…

あとゼニィーもね。


昨日の雷雨はすっかりと止みまして、空は青一色の夏空でした。今日も暑くなりそうですね。



そして…


相変わらず、通りには沢山の人達が行き交っています。



「ここは、サウスヴェルのメイン通りよ!!」


リルお姉様は言う。



「へぇ~、そうなんですね!!」


その通りは、緩やかな坂道でした。

広い道の両側には、街路樹と共にお店がズラーっと建ち並びます。サウスヴェルも…パーシャの町みたいに緩やかな丘の傾斜に立地しているみたいですね。



坂の下の方には、透き通る水色の海が見えます。


まるで、サンフランシスコの坂道を歩いている気分ですね。


もし、間違って…

缶ジュースを落としたら、浜辺まで転がってしまいそうかも。





「あのお店のスイーツのトロピカル・サウスパフェは、とても美味しいわよ。色々なフルーツが、沢山トッピングされてるからね!!」


「へぇ~、そうなんですね!!」




「こっちのお店はね、お肉屋さんなんだけど…」

「店頭で焼いて売っているフランクフルトがとても美味しいよね。特選の魔豚を使用したフランクフルトを、炭火でこんがりと焼いたサウスヴェルでも人気のグルメなのよ!!」


「う、旨そうですね…」


これは、リアルに食べたいかも!!




「フフフフ…」

「今…ここで食べたら、お昼が食べられなくなっちゃうからね。後で食べましょう」


「そうそう、イブ」

「こっちに来てみてよ!!」

 

「は、はい…」


私は言われるがままリルお姉様に付いていくと、そこはお土産屋さんでした。




「ほら、トコナッツ君だよ」

「欲しかったんでしょ、記念に買ってあげる!!」

「ようこそ、サウスヴェルへ」


「あ、有難うございます…」




「…」(私)


リルお姉様は、私にココナッツの形をした謎の人形を買ってくれました。あ~、そういえば…昨日、そんな類いの話しをしていたわね。


別にそこまで、欲しくはないんですけど…


ふ~ん、名前はトコナッツ君と言うんですね。



「常夏の町のココナッツ…略して、トコナッツ君よ」

「トコナッツ君はね、私が雇われているトコナッツ大商会のイメージキャラクターでもあるのよ!!」


「な、なるほど…」


そして、トコナッツ君を触ると硬いです。

まるで、本物のココナッツの様な固さですが…




「フフフフ、驚いたでしょ!!」

「トコナッツ君は、本物のココナッツの様に硬いからね。だから、害獣に投げたりして、武器として使う事も出来るわよ!!」



「ま、マジですか…」


(何だ、その無駄な機能性は…)




    


「ハハハハハハ…」





トコナッツ君を手に持って、少し笑ってしまう私でした。






「坂の上の方は、特に行かなくていいかな…」


坂の上の方を見上げて、リルお姉様は言う。




「…」(私)



リルお姉様曰く-


小高い丘の上にあるのは、高級な別荘や貴族のお屋敷みたいです。私達、庶民には行きにくい場所でもあるんですかね…



「それじゃあ、海とか港の方に行くわよ」

「やっぱり、サウスヴェル一番の魅力は新鮮な魚介類だからね!!」


「はい、楽しみです!!」




そして-

道なりで、港の方に向かう私達。


日差しも徐々に燦々と地面に照り付けて、段々と暑くなってきました。


そんな強い日差しから逃げる様に、私達は細い路地裏の日陰の道を進んでいく。メインの通りを外れると、そこは静寂に包まれていました。





「ヒュウウウウウウウウウ-!!」




密集する家の隙間からは-


爽やかな海風が通り抜けて、私の長く細い黒髪を揺らします。少し遠くには、青い海に浮かぶヨットがチラホラと見えます。


そして、海へと続く…

狭くて長い階段を駆け降りていく。


両側にはヤシの木が生い茂り、垣根には色鮮やかなハイビスカスの花が咲いています。


階段を降りた先には-






「ザザアアアアア~ン」    「ザザアアアアア~ン」





「ザザアアアアア~ン」







私の目の前には…


どこまでも、広がる紺碧の海がありました。





(へぇ…)




「私、海を見るのは初めてなんですよ…」


私はポロっと声を漏らす。

勿論、この世界に来てからの話しですよ。




いや、違う-


初めてでは、無いかもしれません。

遠い昔に…この景色を眺めている様な気もしました。





「そ、そうなの!?」

「イブ、アナタは本当にどこから来たの…?」


リルお姉様は、遠くに浮かぶ雲を見つめながら言う。





「それなりに遠い場所からですよ…」

 

「でも、夜になれば…見る事が出来るかもしれませんね」






私達は-

しばらく海を見ていました。






「ザザアアアアア~ン」   「ザザアアアアア~ン」





   

      「ザザアアアアア~ン」









「ちょっと、早いけどお昼にしましょうか」


リルお姉様は言う。

そうそう、時間はもうお昼前になっていました。


「ここから、少し歩いた所に美味しいレストランがあるのよ。新鮮な海の幸を食べられるわよ!!」


「やったああ!!」

「それは楽しみです!!」


一度は…サウスヴェルでは、何も口に出来ないと思っていた私。それがまさか、美味しいレストランで食事が出来るとは…とても嬉しいです!!



「人生、何が起きるか分からないですね!!」


私は歓喜して、よく分からない事を言う。



「全く、イブは大袈裟ね!!」


リルお姉様は微笑みながら言った。





       



さぁ、行きましょう-










          ◯











「ザザアアアアア~ン」   「ザザアアアアア~ン」





      「ザザアアアアア~ン」





昼食後-


私達は、浜辺を歩いていました。

海からは絶え間無く、さざ波が押し寄せる。


波打ち際ギリギリを歩く私は、軽やかにジャンプをして…押し寄せる波達を避けていきます。これは何をしているのかと言うと…ちょっと遊んでいます。


それで、私の少し前にはリルお姉様が歩いている。





「…」(私)

 



そうそう、レストランの昼食は…

まぁ、美味しかったですね。

雰囲気はイタリアンレストランみたいな感じでしょうか。海の幸を沢山、使用したパスタとかピザとかを食べましたね。


デザートは、フルーツの盛り合わせで…

半分に割ったココナッツの中に沢山のフルーツが入っていました。いや、本当にスマホが無いのが残念です。写真が撮れれば、インスタ映えしたんですけどね!!



因みに…

どのフルーツも地球と同じ様なフルーツだったので、これにも驚きましたね。ハハハハ。



そして、更に-


ロケーションも抜群で、私達が座ったテラス席からは、サウスヴェルの海を一望出来ました。強い日差しが反射した海面はキラキラと輝いて、とても綺麗な景色でした。


まさに、南国の楽園です!!

そんな味もロケーションも最高なレストランでした。



まぁ、そうでしたけど…





「イブ、良かったね~!!」

「本当に美味しかったでしょ~!!」



「…」(私)


しつこく、言ってくるゼニィーさん。




「ええ、凄い美味しかったわよ…」

「だけど、アンタがずっと隣で指を咥えて、見つめてくるから、全然食べた感じがしなかったわ。何…自分が食べられない事に対しての当てつけなの!?」



「それは違いますよ~!!」

「精霊の心は、清らかだからね」

「誰かを憎んだりして、仕返しをしたりとかはしませんよ~!!」



「アンタ、本当に精霊なの…!?」

「でも…それだと、これから困ったわね」

「まともに食事を食べる事が出来ないわ」



「ボクの事を教えちゃえば~!?」


「姿が見えないアンタの事を教えても、多分信じてくれないわよ。それに他にも、隠し事をそれなりにしているからね、ハァ…」




「…」(私)




「ゼニィー、とりあえず…」

「魔術品オークションが終わるまでは、このままで辛抱しなさい」



「ええ~、そうなの~!?」

「じゃあ、魔術品オークションが終わったら、どうするの~!?」」


「それは…今、考えているわ!!」




(う~ん、そうね…)


確かに今は、その場の流れで師匠と弟子の関係になってますが…この世界から呪具が無くなった暁には、全てを打ち明けて-


正式にリルお姉様をパーティに迎え入れたいという計画はあるにはあります。




ですが…

そうなるには、とても長い時間を要すでしょう。

リルお姉様やゼニィーが、待てる様な時間では無いから。


そう、だから私は-




「イブ、誰かと話しているの…!?」




「!!」(私)


リルお姉様は振り返り、不思議そうに聞いてくる。

しまったああ、油断した!!



「「いや、貝と会話してるんですよ!!」」

「「ほら、貝を耳に当てると…誰かの声が、聞こえてくるんですよね~」」


私は咄嗟に落ちている貝殻を拾い、耳に当てながら言う。



「フフフフ…」

「イブ、アナタ…面白い人ね!!」





「ハハハハ、有難うございます…」




「そうだ、イブ!!」

「これから、アナタの力を見せて頂戴…」





「んっ、実力-!?」









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ