146話 闇夜の葬路
「キャハハハ…♪」 「キャハハハ…♪」
「キャハハハ…♪」
「キャハハハ…♪」 「キャハハハ…♪」
「キャハハハ…♪」
闇夜の道の向こうから…
まるで、私達を誘っているかの様に、沢山の子供の声が聞こえる。この声は、一体…!?
「道の先に、保育園でもあるんじゃないの~!?」
ゼニィーは言う。
「あっ、なるほど!!」
それもそうですね。
とりあえず…ちょっと興味があるので、確認に行ってみましょう。
「「ザアアアアアアアアアアアア~!!」」
「「ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ-!!」」
声がする方に向かって、歩いていく私。
その内に-
雨は本降りになり、雷も鳴り始める。
周りの視界も、強雨で酷く霞んでいきます。
地面を打ち付ける雨音と、轟く雷鳴は…
周りの建物から聞こえていた楽しそうな食卓の声を掻き消します。
しかし-
不気味な声は掻き消されるどころか、より鮮明に聞こえてくる。そして…その声は徐々に異様な形に変化していきます。
【【【コラアアアアアアアア~!!】】】
【【【追え、追え、逃がすんじゃねぇぞオオオオ】】】
「「キャアアアアアアアアアアアア~!!」」
「「誰か、助けてええええ-!!」」
【【【どこに隠したんだアアアアアア!!】】】
【【【探すんだ、草の根を分けても見つけ出すんだアアアアアア!!】】】
「「「「「ピシャアアアアアアアアアアアアアアアアア~ン!!」」」」」
「「!!」」(私)
これ、幻聴じゃないよね(汗)
激しい雷雨の音に混じって、誰かの悲鳴が聞こえた。嵐の中で、誰かが襲われているのでしょうか!?
さ、先程は-
情けなく逃げてしまいましたけど、今回は違いますよ。敵の姿は確認出来ませんが、すぐさま私はポーチからパーシャ騎士団の剣を取り出す。そして、構えます!!
「「さぁ、どこからでも来なさい!!」」
威勢良く言う私-!!
「でも、人の気配はしないけどね~!!」
「誰かの幻覚を見せる魔法の可能性が高いかもよ~!!」
しかし、ゼニィーは言う。
「えっ、そうなの!?」
「まぁ、可能性だけどね~!!」
「あと威勢は良いけど、足腰がガクガクに震えてるよ。ちょっと、大丈夫ですか~!?」
ゼニィーは、半分笑いながら言う。
「「う、うるさいわね!!」」
「「震えてなんてないわよ!!」」
絶賛、足腰が震えながら言う私。
((ブルブルブルブルブルブル…))
道を進めば、進む程…
聞こえる声は おぞましい叫び声や怒声に変わっていた。もう絶対、保育園じゃないと思うけど。まぁ、これは最初から何となく分かっていたけどね!!
恐怖を紛らわす為に、自分についた嘘でもありましたからね。
「「「「「ピシャアアアアアアアアアアアアアアアアア~ン!!」」」」」
そして…
雷雨の中、行き着いた先は-
古びた倉庫みたい所であった。
「「ウワアアアアア~ン!!」」 「「助けてえええ~!!」」
「「キャアアアアアアアアアア~!!」」
「「早く誰か来てくれええ~!!」」 「「殺されるうう~!!」」
「…」(私)
この倉庫の中から、間違いなく声が聞こえます。
まさか、この中に大勢の人達が閉じ込められているのでしょうか!?
だとしたら、早く助けないと…
私は、恐る恐る錆び付いた倉庫の扉を触ると…
「ガラガラガラガラ-」
(あ、普通に開いた…)
別に、鍵とかは掛かっていません。
そして、開けた瞬間…声が一斉に消えました。
倉庫の中は、真っ暗で何も見えない。
私は仕方がないので、闇の中に入っていきます。
闇の中に数歩、足を踏み入れると…
そこは、嘘みたい静寂に包まれている。
外の嵐の音が遠く聞こえます。
「…」(私)
闇の中から、沢山の視線を感じる…様な気がする(汗)
四方八方から見つめられている感じです。
只の気のせいでしょうか。
それとも-
やはり、ここに誰かがいるのでしょうか…!?
「イブ、イブ~!!」
「ランタンを早く~!!」
「そ、そうね…」
「パチン-」
私はポーチからランタンを取り出して、明かりを灯すと…
「「「!!」」」(私達)
ギャアアアア、暗闇の中から沢山の顔が現れる!!
こ、これは一体!?
私は、心臓が止まりそうになるが-
「に、人形…!?」
「うん、人形だね~!!」
冷や汗を掻きながら、ゼニィーも言う。
倉庫の中には、沢山の棚が置かれていまして…
その棚の上には、人形達がビッシリと整列させられて、置かれていた。人形の大きさは、皆どれも…数十センチ位でしょうか。
子供がお人形遊びをするのにも、又はインテリアとして部屋に飾っておくのにも、丁度良い大きさですね。
まぁ、そうなんですけど…
(((怖アアっ)))
彼らは、とても精巧に作られていた。
目も…口も…肌も…髪の毛も…とてもリアルです。
闇の中で、見てしまうと本物の人間だと思ってしまう。
「この人形さん達が声を出していたのかな~!!」
ゼニィーは言う。
「…」(私)
「まぁ、そうかもね…」
「多分、この人形達はお喋りが出来る機能が搭載されているのよ。いや~、最近の人形は凄いわね!!」
「へぇ、そうなんだ~!!」
「人間の技術力は凄いね~!!」
感心しながら言う、私とゼニィー。
決して、恐怖を紛らわす為に…
自分についた嘘では無いですからね!!
まぁ、地球にも喋る人形は普通にありますからね。この世界にも、そうゆう人形はあるんですね!!
私は…
お人形さんを作る工場に迷い込んでしまったのでしょうか。人形に囲まれた中を進んでいく私。
そして、すぐに行き止まりでした。
この倉庫自体、そんなに大きくは無い様-
「「「「「ウワアアア-!!」」」」」
私は思わず、叫んでしまう-!!
もう1回、心臓が止まりそうになります!!
「「「ひ、人!?」」」
沢山の人形の中に、人が紛れていたのです(汗)
な、何でこんな所に…その人は、行き止まりの壁に立っている。見れば、少女でした…ここの見張りでしょうか!!
彼女も、人形と同じ様なドレスを着た可愛らしい格好をしている。でも、この状況だと滅茶苦茶不気味だよ~(汗)
私は尻餅をついて、後退りします。
「「イブ、イブ~!!」」
「「これも人形だよ~!!」」
「え…?」
「…」(私)
いや、人形じゃああああん(汗)
ゼニィーの一言で、我に返る私。
もう、なんて紛らわしい…彼女も人形でした。
「ハァハァハァハァ…」
しかし…
彼女は他の人形達と違い、等身大の大きさでした。
年齢は10歳位の女の子でしょうか。彼女も他の人形と同じく、とても精巧に作られていました。等身大だと、もう本物の人間と勘違いしてしまいますね。
「ハァハァハァハァ…」
「ふぅうう…」
私は息を整えて…
改めて、彼女を見つめます。
彼女の目は、サファイアの様に青く輝いています。
髪の毛はキラキラとした金髪です。とても、美人さんですが…
そんな彼女は、私の事を見て…
何かを訴えている様にも思えた。
「アナタが幻を見せたの…!?」
私は思わず、人形に聞いてしまう。
相変わらず、情けなく床に座り込みながら…
すると-
(んっ…?)
手に何かを触れる。
床に…何かが落ちていました。
拾ってみますと、それは古びた鍵でした。
「イブ、イブ~!!」
「その鍵、どうしたの~!?」
「あ~、これは床に落ちてたの…」
「何の鍵か-」
「「「バアアアアアアアアアアアアア-ン!!」」」
「「おい、ここで何をしている!!」」
「「!!」」(私)
突然、後ろから聞こえる怒鳴り声-!!
振り返ると、4人の不気味な影が…これも幻!?