145話 夕暮れの迷路
「ワイワイワイ-!!」 「ワイワイワイ-!!」
「ガヤガヤガヤ-!!」 「ガヤガヤガヤ-!!」
「アラ、お店の床に落ちていたのかい!?」
「わざわざ、教えてくれて有難うね!!」
「お店で、預かっておくわ」
「はい、お願いします…」
私は…
人混みを潜り抜けて、やっと辿り着いたお店にて100Gを店員さんに渡します。店員さんは、気さくそうなオバサンでした。これは…話しやすそうですね!!
「そうだ、オバサン!!」
「ついでに少し場所を、聞きたいんですけど…」
「ええ、勿論良いわよ」
「私…旅人で、今日サウスヴェルに来るのが初めてで…ギルドの場所を教えてくれますか!?」
「アラ、そうなのね!!」
「え~とね、ギルドはね…」
(フムフムフム…)
そう、私はギルドの場所を聞いてました。
話すキッカケが欲しかったので、丁度良かったです。フフフフ、まぁ凄い回りくどいですけどね!!
「えっと、分かったかしら…?」
「はい、大丈夫です!!」
「この辺は道がゴチャゴチャとしているから…」
「迷ったら、また誰かに聞いてちょうだいね」
「はい、有難うございます」
「ワイワイワイ-!!」
「ワイワイワイ-!!」
「ガヤガヤガヤ-!!」
「ガヤガヤガヤ-!!」
とりあえず、ギルドの場所を聞いたけど…
相変わらずの人が多さです。
私は再び、人混みの中を進んでいく。
~30分後~
「ワオオオオオオオオオオ~ン」
「ワオオオオオオオ~ン」
「ワオオオオオ~ン」
しばらく、歩いている内にすっかりと夜になっていました。更に空も厚い雲で覆われてしまい、今にも雨が降りそうな感じです。
早くギルドに着けば、良いですけど…
ああ~、疲れた。
夜道を歩きながら、ギルドを目指す私。
ですが、ギルドに到着する目処は立っていません。
そう、道に迷ってしまいましたので…
そんな私は、今どこを歩いているのかと言いますと…
細い路地を歩いていました。メインの通りから外れた裏道的な感じでしょうか。人の姿も疎らになります。
「「ギャハハハハハハ~!!」」
「…」(私)
道端には…数人のグループが座り込んで、酒瓶を持ちながらお酒を飲んでいる。腕にはチラっと入れ墨が見えるし、服装も乱れている…雰囲気的に怖そうな人達です。そして、チラチラと私の事を見ている様でした。
そういえば…
今の私は、見た目はか弱い少女ですからね。
襲われそうで、怖いよ。
ううう~、変な道に入ってしまった。
私は下を向いて…
彼らと視線を合わせない様に、傍を通り過ぎる。
もうギルドよりも、今日の寝床を探しましょうか。
今更ギルドに着いた所で、今日はもう依頼を受ける気力が無い…
オレンジ色の外灯だけを頼りに、もう道なりに進んで行く。
「「ザザアアアア~ン!!」」 「「ザザアアアア~ン!!」」
「「ザザアアアア~ン!!」」 「「ザザアアアア~ン!!」」
「「ガラガラガラガラ-!!」」
しばらく歩いて行くと-
暗闇の中から、波の音が聞こえる。
どうやら、港の方に来てしまったみたいですね。
闇に染まった真っ黒の海には、幾つかの船が停泊している。
それで丁度、今は…
捕ってきた魚を港の中に、運んでいる所なんでしょうか。船から下ろされる網の中には、沢山のピチピチの魚が入っていました。
フフフフ、あれは見るからに大漁ですね!!
「「ギャハハハハハハ~!!」」
「…」(私)
そして…
そこには、狼の獣人が数人います。
粗雑に掛けられた桟橋の上で、仲良くゲラゲラと笑っている。
手には酒瓶?を持っていますね。
彼らは…この漁港の関係者なのでしょうか。
しかし、仕事をしているよりかは、サボっている様にも見えますが…いや、休憩中なんでしょうか。
私は建物の陰から、自然と彼らの様子を伺います。
「「お前、捕ってきた魚を喰うんじゃねぇよ!!」」
1人の狼の獣人が言う。
「「別に良いじゃねぇか、今日は大漁だからよ。お前も食ってみろよ、ほらよっと!!」」
注意された狼さんは、網から魚を取り出すと…
それを注意した狼さんに、向かって放り投げます。
放り投げられた魚は、そのまま『パカっ』と大きな口を開けた狼さんに飲み込まれる。
「「ハハハハ、旨い、旨い!!」」
「「まぁ、別に良いか~!!」」
「「ついでに、お前の飲んでいる酒も分けてくれよ!!」」
「「ああ、良いぞ、良いぞ!!」」
「「ギャハハハハハハハハハハハハ~!!」」
「…」(私)
注意した方の狼さんも、すぐに共犯になってしまったわね(汗)…狼さん達は、その後もゲラゲラと笑いながら宴会をしていた。
んん~、彼らと話せるキッカケを探していましたけど…彼らとは、あまり関わりたくないかも。
ここで見つかったら、どこかに売られてしまいそうな感じ。いや、あの大きな口で『パクっ』と食べられてしまいそうな…
そんな感じさえします。
いやいやいや-!!
見た目はあんなんだけど、中身は気さくで気前の良い漁師さんかもしれないわ。ちょっと、言動が大雑把なだけで…
「「おい、お前ら仕事中に何をしてるんだアアアア~捕ってきた魚を食べるんじゃねぇぞ!!」」
「「!!」」(私)
突然の怒号に、ビクっとする私。
同じ漁港の関係者でしょうか。怒号を出したのは、犬の獣人でした。彼は…狼さん達の行いを咎めたみたいです。やっぱり…今は、休憩中では無かったみたいですね(汗)
「アア…!?」(狼さん達)
(ゴクリっ-)
狼さん達は先程みたいに、また魚を放り投げるのかと思いきや…
両者の間には、全く違う空気が流れる。
波の音だけが、不気味に聞こえる。
「「ザザアアアア~ン!!」」 「「ザザアアアア~ン!!」」
「「ザザアアアア~ン!!」」 「「ザザアアアア~ン!!」」
【【お前、いつもうるせんだよオオオオ-!!】】
【【海の藻屑にしてやるよオオオオ-!!】】
「「「ガシャアアアアアアアアアアアアアアア~ン!!」」」
((ええええええ~!!))
突然、狼さんが犬の獣人に飛びかかります!!
け、喧嘩、喧嘩です(汗)
狼さんは全然、気さくで気前が良くなかった。
もう只の海賊じゃん!!
「「「ガシャアアアアアアアアアアアアアアア~ン!!」」」
「「おい、喧嘩だ、喧嘩だアア-!!」」 「「喧嘩を止めろオオ-!!」」
「「騎士だ、騎士を呼べえええ」」
「「「ガシャアアアアアアアアアアアアアアア~ン!!」」」
一気に慌ただしくなる漁港。
沢山の人の怒号と叫び声が飛び交い、血も飛び散ります。
((ヒイイイイイイイイ~))
私は-
腰を抜かしながら、その場から退散する。
○
「ちょっと、イブ~!!」
「あんなんで、腰を抜かしている様じゃ、呪具オークションに参加する事なんて出来ないんじゃないの~!?」
ゼニィーは、腰を抜かしながら逃げた私に言う。
私は…また迷路みたいな路地裏の道を歩いていました。しばらく、恐怖のあまり走っていたので、息を切らしながらね…
「ハァハァハァハァ…」
「あっ、呪具オークションの事を忘れていたわ」
「ついでに、バリアがある事もね…」
「あのね~!!」
ゼニィーは、呆れながら言う。
「でも、分かった事もあるわ…」
「狼と犬の獣人は、犬猿の仲なのね!!」
「アンタ、何を言ってるんですか~!?」
「…」(私)
ふぅ~まぁ、気を取り直して行きましょうか。
深呼吸をして、少し冷静になります。
それで…先程の喧嘩は、大丈夫だったかな。
狼さんは、犬の獣人にガブガブ噛み付いていましたけど。誰かが騎士を呼ぶと言っていたので、騎士が何とかしてくれるでしょうか。
それならば、戻らなくても大丈夫ですね!!
まぁ、戻りたくても、もう戻れませんけど。
ガムシャラに、ここまで走って来たので…
戻る道を覚えていませんでした。
(トボトボトボトボ…)
そのまま…
トボトボと夜道を歩いていく私。
周りには、3~4階の建物が密集しています。
建物の窓には、ゲラゲラと笑っている人達の影が見える。皆で楽しく夕食でも、食べているのしょうか。
魚介の良い匂いも漂ってくる。
「ハァ…」
お腹も空いたし、もう疲れた。
今日はもう、ここで野宿をしましょうか。
町中にレジャーシートを敷くのは気が進まないけど、仕方がないよね。そう思っていると、ポツポツと雨が降ってきた。
「…」(私)
ハァアアアア…
まるで、ゴールの無い迷路をしているみたいです。
「キャハハハ…♪」 「キャハハハ…♪」
「キャハハハ…♪」
「キャハハハ…♪」 「キャハハハ…♪」
「キャハハハ…♪」
そして、私の恵まれない状況を笑うかの様に。
どこからか、笑い声が聞こえてくる。
もう笑わないで下さ…
「「「!!」」」(私)
いやいや、何だこの笑い声は!?
どうやら、その声は闇夜の道の奥の方から聞こえてくるみたいです。しかも、1人や2人じゃない…大勢の子供の声でしょうか。
楽しそうに、遊んでいる声です。
明らかに、異様に感じてしまう!!
一気に疲れと空腹が吹き飛ぶ私。
「ゼニィーも、この声が聞こえるの…!?」
「うん、聞こえるよ~!!」
「この先に何があるんだろうね…」
「暗くて、何も見えないや~!!」
「ちょっと、行ってみましょうか…」