140話 パーティ(前編)
「「「「「ジリリリリリリリリ~ン!!」」」」」
「「「「「ジリリリリリリリリ~ン!!」」」」」
「「ハァハァハァハァ…」」
けたたましい非常ベルの音が-
のどかな町を切り裂く様に響き渡る。
相変わらず嫌な音ですね。特に私にとっては-
この音は…
前世の私の脳裏に焼き付いている。
私は非常ベルの音を聞いた後に、死んでしまいましたからね。
「イブ、イブ、あそこだよ~!!」
「有難う、ゼニィー!!」
町を飛び出て、そのまま走っていくと-
すぐに緑色の大きな塊を発見しました。
そう、巨大ゴブリンだ!!
手には大きなこん棒を持っていて、それを振り回している。更に巨大ゴブリンの周りには、20匹以上のゴブリンがいた。
ゴブリン様の団体ですね!!
「「ウゴオオオオオオオオオオ~!!」」
「「ドゴオオオオオオオオ~ン!!」」
「「オリャアアアアア~!!」」
「「ガキイイイイ-ン!!」」 「「ガキイイイイ-ン!!」」
「「ガキイイイイ-ン!!」」 「「ガキイイイイ-ン!!」」
そして-
ゴブリン達に混じって、誰かがもう闘っていました。男の人と女の人…2人いる。騎士でしょうか。
いや、格好を見れば違うかも…普通の冒険者かな!?
ゴブリン達は-
私に気付くと、私の方に向かって走り出す。
「ふうううう~う…」
深呼吸をする私。
そして、ゴブリンをギラリと睨み付けます。
今が、この魔剣を試すチャンスよ-!!
「ズバン-!!」 「ズバン-!!」
「ズバン-!!」
私は剣を3回振った。
すると、3匹のゴブリンは私の目の前から消滅する。
滑らかな過ぎる私の流麗な剣技は、斬られたゴブリン自身も斬られた事に気付いてないでしょうね、きっと。
私も、また『今、斬ったんですか?』みたいな澄ました顔をします。
((凄い、凄いよ…))
まるで、普通の自転車から電動自転車に乗り換えた気分です。
何か…もう色々とアシストしてくれる感じです!!
かつて、騎士だった頃の私の動きを彷彿させる。
この剣があれば…
バリアとか、果ての魔法とか必要が無いんじゃ。
普通に闘える。
私は140年ぶりの感覚に、何も言えなくなっていました。
只々…剣の柄を強く、握り締める。
((そう、私はナイスガール!!))
「「オリャアアアア-!!」」
更に私は-
魔獣使役の魔法 “魔獣の気持ち” を発動させる。
すると、ゴブリンの次の動きが気持ちいい程良く分かる。
私は、ゴブリンの攻撃を最小限の動きで避ける。周りから見れば、華麗なステップでダンスをしている様に見えるでしょうね。
そして-!!
軽く剣を振り上げる。フフフフ、適当に振り上げた訳ではありませんよ。
私の剣は、ゴブリンの急所を的確に捉えていました。
剣を1回振れば、1匹のゴブリンが消滅する。
最高の気分ね!!
「応援が来たのね、有難う!!」
「私の名前はカナタよ」
「周りのゴブリン達は、アナタに任せたわ!!」
巨大ゴブリンと闘う冒険者風の女の人が言います。
カナタさんと言う名前なんですね。ミディアムヘアーで茶髪の若い女性ですね~!!
闘いに関係無いけど、美人さんだね。
「俺の名前はバンビだ!!」
「宜しく頼む!!」
続けて、冒険者風の男の人も言います。
バンビさんですね。金髪で、顔立ちが良い中々のイケメンさんですね。
見た目は、カナタさんと同じ位の年齢でしょうか。
「わたしの名前は、イブよ!!」
「ゴブリンなら、何匹でも任せて頂戴!!」
私も張り切って、言います。
何か…パーティを組んで闘っているみたいね。
いや、実際そうなのかもしれない!!
「ウゴオオオオ-!!」 「ウゴオオオオ-!!」
「ウゴオオオオ-!!」 「ウゴオオオオ-!!」
ゴブリンは、まだまだ10匹以上います。
私に向かって走って来る。ですが、問題はありま-
「グキっ!!」
「うぎゃあ-!!」
「イブ、ちょっと大丈夫~!?」
「ううう…」
ちょっと、ハシャぎ過ぎたみたい…
あ~、腰がイテテ…そういえば、地球の頃の私は慢性的な腰痛に悩まされていましたね。5年位前にぎっくり腰をなってから、そんな感じでした。この世界に来て、この身体になって治っていたので忘れていましたけど…
「よっこらしょっと…」
「まぁ、何とか大丈夫よ」
私は腰を押さえながら言う。
「本当に大丈夫なの~!?」
「もう無理しないで、あの2人に倒して貰ったら~!?」
ゼニィーは、心配しながら言う。
「さっきみたいに…華麗な動きをしなければ大丈夫よ(多分)。それに、あの2人の信頼を裏切る訳には…いかないわ!!」
「「オリャアアアア-!!」」
「ズバン-!!」 「ズバン-!!」
「ズバン-!!」
「ズバン-!!」 「ズバン-!!」
「ううう…」
私は冷や汗を流しながら、何とか残りのゴブリンを倒します。最後の方は、気力で倒しましたね…
さぁ、あと残すは巨大ゴブリンだけです。
その巨大ゴブリンは、相変わらずこん棒を振り回していた。
カナタさんとバンビさんは、特に攻撃する訳でも無く…ヒョイヒョイとこん棒を避けている。避けながら攻撃するタイミングでも、伺っているでしょうか。
とりあえず、私も魔法を発動させましょう!!
2人を援護しますよ!!
「魔獣使役の魔法 “安らぎの匂い” 発動-!!」
魔法が強化されている今ならば、巨大ゴブリンにも効くはずです。そう、願って-!!
すると、すぐに-
ゴブリンは、フラフラとし始めた。
凄い、C2の害獣にも私の魔法が効いている!!
結構、感動してしまう。とりあえず、今の内に攻撃ですね。バンビさんとカナタさんに伝えましょう。
「さぁ、私が発動させた-」
「私が発動させた、安らぎの匂いが効いてきたわ!!」
カナタさんは言う。
「!!」(私)
「巨大ゴブリンに効いたのは、カナタさんの安らぎの匂いだね~!!」
ゼニィーは、クスクスと笑っていた。
「…」(私)
(あ~、そうですか。恥ずかしい…)