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小麦の町の冒険(part3) ~休日~




飲み会が終わった次の日は…

私とルイアは、久しぶりの休日を満喫していました。

天気は相変わらずに晴れ渡っており、今日は絶好の休日日和ですね。




        「ワイワイワイワイ…」



        「ガヤガヤガヤガヤ…」




それで、私達はパーシャの町中を、庶民の格好でショッピングをしていました。私はレンガ造りの風情ある町並みを、どこかの露店で売っていたパンを買って食べながら歩いている。





       「ムシャムシャムシャムシャ…」




それは、魔獣との闘いに明け暮れる騎士の姿とは程遠い…

普通に、どこにでもいる2人の女の子達であった。




「ねぇねぇ、ルイア…」

「そういえば、最近『お菓子の城』とかいう菓子パン屋が出来たみたいわよ。とても美味しくて人気の店みたいだし、用事が終わったら行ってみない?」



「へぇ~、良いわよ」



ルイアは、色々な食材や生活品が入った大きな紙袋を持ちながら言う。

そんな私もパンを片手に、もうひとつの手で大きな紙袋を抱えています。私達は…色々なお店を回りながら、食材や生活品などを沢山買い集めていたのです。









一体、何の為に…



私とルイアは町の、ある大きなお屋敷に着いていました。





「「こんにちは、皆いる~?」」


私はお屋敷の入口の扉を開けて、大きな声で呼びかけます。






           「!!」(子供達)





「あっ、イブ姉ちゃんだー!!」


「ルイア姉ちゃんもー」 



子供達が、私とルイアの下に駆け寄って来ました。




「久しぶり、皆元気だった?」


「うん、元気だよ!!」(子供達)



私達は、子供達との久しぶりの再開に喜んでいました。

そして、子供達の後ろの方から中年の女性が出て来ます。





「久しぶり、エスターナさん」


「久しぶりね、イブ、ルイア…」

「2人とも、立派になったわね」



私とルイアは、手に持っていた紙袋をエスターナさんに手渡します。




「いつも、こんなに沢山有難うね」


「いえいえ…お礼を言うのは、こっちの方ですよ」








         ーこの場所は、孤児院ですー





数十人の子供達が、ここで暮らしています。

エスターナさんは、ここで長年に渡り、子供達のお世話をしている人になります。






           「ワイワイワイワイ…」



           「こっち、こっちー」

          「ギャーっ、捕まった!!」

  



             「ハハハハー」






子供達の遊ぶ声が、ワイワイと聞こえる。


私とルイアは…その後、子供達と外で遊んだりして過ごしました。

そして、しばらくしてエスターナさんと子供達に別れを告げて、孤児院を後にします。




「さてと…」




では、続いての用事です。これは私とルイアが休日の度に、欠かさず行っている恒例の事になります。因みに…先程の孤児院は月に1回くらいの頻度で、食材や生活品を寄付しています。


私とルイアが次に向かう先は、丘の上にある教会の墓地です。



その用事とは、お墓参りです。


それは、誰のお墓かと言いますと…













私とルイアの両親の…










―私の両親は、私が小さい時に死んでしまいました。


私の家は、そこまで裕福ではない小さな小麦農家だったそうです。

そして、私の母は身体が弱く病気を患っていたそうで、その治療費を稼ぐ為に、私の父は本業の小麦農家の傍ら、冒険者としても活動していたみたいです。元々、父は騎士志望で何回か騎士の試験を受けたそうですが、ことごとく落ちて諦めたそうですね。



そんな、ある時ですが…


この町の周辺で、スライムが大量発生した事がありました。父もその討伐に出向いたのですが、無謀にも巨大スライムと対峙してしまい、まぁ…結果は蜂の巣ですよね。その巨大スライムのウヨウヨと動き回る目を、永遠に切る事が出来なかった父は…最期は、そうだったみたいです。







私の父は…巨大スライムの危険さを多分、分かっていたと思うのですが…

治療費を稼ぐ為に、焦っていたのでしょうか。騎士も近くにいたみたいですけど、何故助けてくれなかったんでしょうか…


私の母は、父の死にショックを受けたのか…後を追うように、すぐに死んでしまったそうです。そして、他に身寄りがない私は先程、訪ねた孤児院に引き取られて子供時代を過ごしていたのです。




そこで同じくー



孤児だったルイアと巡り会い…

本当の姉妹の様な存在になったの訳です。








「ルイアも、親が盗賊に殺されたんだっけ…」 


私は、ボソッと声を漏らす。




「そうよ…」 


ルイアは、そう返事をしていた。









私とルイアはー

それ以外は特に何も話さず、教会に向かう為の丘の坂道を歩いていた。少し遠くにはパーシャの町並みが見えます。


そして、私達の騎士団の建物も…





その内に、私達は教会に着いていました。





降り注ぐ日射しに照らされて、白く輝く教会は、私達をどこか神秘的な気持ちにさせてくれます。教会の中に入ると、そこには大きくて立派な女神像があり、いつも変わる事のない温かい表情で、私達を出迎えてくれます。







昔から、よくここに来ていました。




まだ小さい子供の時は、エスターナさんに無理やり連れてこられていたそうです。まだ小さな子供だった私とルイアは、その意味も分からず…この教会の中で遊んで、よくエスターナさんに怒られたみたいですね。



ですけど、ですけど…

何となく寂しかった事は、その時でも、すでに感じていました。そして…それがハッキリと分かったのは、もう少し大きくなってからの事であった。










「チュンチュンチュンチュン―」





私達は、両親のお墓の前にいました。



草原の中にあるお墓は、とても静かで鳥のさえずる声と草原を靡かせる風の音しかしません。そして、遠くを見れば…パーシャの町並みは勿論、その先に広がる大草原の彼方まで、見渡す事が出来ます。





エスターナさんも、良い所にお墓を作ってくれましたね。




私達の両親も、きっと喜んでいると思います。










      「ヒュウウウウウウウウウウウウウウー」







どこからか、爽やかな風が吹く。



雲達は―そんな風に吹かれて、雄大に草原を上を流れていく



ユラユラとゆっくりしたスピードに見えて、実際はとても速い



スピードで、遠く霞んで見える山並みを軽々と越えていきます






私達には、追いつく事が出来ないスピードであの雲達は、一体どこに向かうのでしょうか…




私達は、そんな雲の流れをしばらく、見つめていた。









      「ヒュウウウウウウウウウウウウウウー」








この町には、孤児が多いー



いや、この国全体的にそうなのかも知れない。理由は様々ですが、やはり魔獣(害獣)や盗賊とかに町や村を襲われて、親を失った子供が多いみたいです。



この世界は魔獣も良く出ますし、盗賊もいますので…



この世界は一見、長閑で平和そうに見えますが、言う程に平和ではないのです。そして…私達から見たこの世界は、平和とはあまり言えませんでした。








その時、私とルイアは子供ながら、2人で約束をしました。



『いつか…お互い騎士になって、この国の平和を守っていこう』


『そして、今以上にこの国を平和にしていこう。これ以上、私達と同じ境遇の子供達を作らない為に―』







それが私とルイアが、騎士になった理由になります。


私達は両親のお墓にお参りして、今日の無事を報告します。



「そうだっ!!」

「ここに来た、ついでに報告したい事があるんだ」


私は、意気揚々にルイアに言う。




「何、イブ…?」





少し雰囲気が暗くなっていましたが、ここからは明るい話題になります。



「私の新技を披露します!!」














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