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129話 果ての仲直り





「只の時間稼ぎの為じゃ無いと思うわ!!」

「別の考え方も出来ると思うわよ!!」 



突然、現れた謎のオバサンが言う。

そう言えば、この人はアンデッドで蘇ったミズナさんのお母さんだったでしょうか…



「あっ、副村長のオバサン!!」


ミズナさんは言う。



「…」(私)


(えっ、どうゆう事、お母さんじゃないの!?)



「この人は、副村長のクロケットさんよ」

「お母さんと間違って、アンデッドにしていたみたい、ハハハハ…」


苦笑いを浮かべながら、ミズナさんは言う。



((いやいや、適当だな、ミズナさん!!))



「久しぶりね、ミズナちゃん」

「それで村長以外は、皆…グリフィンの密猟には、関わってないわよ。これは、彷徨ってる村人達の魂から聞いた事だから、本当よ!!」



「そ、そうなんですね…」




クロケットさんの女神の様な微笑みに、何故か納得してしまうミズナさんと私。そうそう、因みにですが…王国の許可無くグリフィンを捕らえたり、飼育する事は、禁止されてます。まぁ、これは前世の私が健在だった頃の話しですけど…今も、大体そんな感じなのでしょうか。



グリフィンは-


個体数が少なく希少な魔獣である為、王国では保護の対象になっているのです。日本で例えるならば、天然記念物と言った感じでしょうね。


まぁ、しかしながら…

やはり悪い人もいまして、グリフィンを捕まえて、国内外に売り捌く人がいるのです。グリフィンの格好良い姿は、とても人気があるので、そこには悪いファンも少なからず存在するみたいです。


狙われるのは、主に力が弱い子供のグリフィンや、雌のグリフィンになります。雄のグリフィンは、戦闘能力が高く、手強くて捕まえるのが、非常に難しいからです。





当時の王国は-



グリフィンの保護に尽力しており、天魔の山脈周辺は、全騎士団の中で選抜されたトップクラスの実力を持つ騎士達で構成される『グリフィン保護特別部隊』によって警備や巡回が行われて、密猟者の魔の手からグリフィンを守っていました。


なので…

そう簡単に、密猟が出来る環境では無かったです。実際、過去数十年にあった密猟は、全て未遂で終わっているのです。


因みに巡回は、特別な訓練を受けた屈強な雄のグリフィンや大きな魔鳥に乗り、空から行っていましたね。別名『大空部隊』とも呼ばれていました。


私も、その部隊に入りたかったなぁ。


まぁ、今は無さそうですけどね。







「まぁ、私達の身の潔白は、ともかくとしてね…」


しばらく-

微笑みながら、私を見ていたクロケットさんは、話しを再開する。



「グリフィンの密猟は、何もグリフィンの子供や雌だけが対象になっている訳では無いわ。グリフィンの子供や雌が、密猟の対象になっているのは…只、単純に雄のグリフィンより弱くて捕まえやすいから…そして、別に生け捕りにする必要も無いのよ。密猟されたグリフィンの使用用途は様々で、それは…剥製だったり、毛皮にしたり、牙や爪を加工して高貴な装飾品や魔法具の素材にしたりするわ。因みに、子供は観賞用として使われて、大人になったら殺されるわね」



「恐らく、村長と黒いフードの人の狙いは…村人達との闘いの末に、死んだグリフィンの死体だったと思うわ!!」




「な、なるほど…」


クロケットさんの予想に頷く私。




「確かに…」 

「それなりの数の仲間の死体が消えていましたね」


そして、グリフィードさんが、驚いた感じで言う。



「ええ、そうでしょ」

「多分、比較的状態が綺麗な死体を優先して、回収したのかしらね。一応、死体の損傷が酷くても…死後、時間が経って腐乱していなければ売り物として、成立するけど…死体の状態が綺麗であればあるほど、その価値は生け捕りの場合と同じになるからね」





「そうなんですね…」(私)




「それで…」

「子供のグリフィンを捕まえている所を見つかった村長と黒いフードの人は、最悪の機転を利かせて、狙いを子供のグリフィンから、闘いで死んだグリフィンの死体にしようとしたのかしらね」






         いや、それとも-






「最初から狙いは、闘いで死んだグリフィンの死体だった事も考えられるわね。わざと意図的に、子供のグリフィンを捕まえている所を発見させた。そして、生け捕りにした子供のグリフィンを使い、グリフィンの群れを村に誘き寄せた…村長と黒いフードの人が、仕掛けた罠だった可能性もあるわね」





「ふ~ん…」





「…」(私)


まぁ、とりあえず…

黒いフードの人と村長だけの犯行になるのでしょうか。地平線の彼方を見ながら、染々と思う私。






「でも、村長もね…」

「この村の生まれで、私とも昔からの付き合いだった」



「ヴェル王国とバルキードとの戦争以降、王国はグリフィンの事に関心が無くなってしまったのか…天魔の山脈の警備を止めてしまったわ。だから、村の皆でグリフィン達を守ろうと奮起していた。村長は、その第一人者で、グリフィンを誰よりも我が子の様に可愛がっていたし、密猟する人を許さないとも言っていたわ。だから、決して…こんな事をする人とは思えない…」







「村長は一体、どうして…!?」






「まぁ、それは…今となっては、もう分からないけどね」



クロケットさんは、地平線の彼方を見ながら染々と言った。







「ふ~ん…」






「「ヒュウウウウウウウウウウウウウウ-」」


「「バサバサバサバサバサバサバサバサ!!」」






大体の話が終わった、一同。


気付けば-

もう、朝陽が昇る事でしょうか。

霧も晴れて、遠くまで見渡す事が出来ます。


遥か遠くに見える、空と大地の境目の曲線は、赤く眩しく光輝いて…このベオン星が、丸いという事を教えてくれます。



吹き荒れる春の風は、そのまま山並みを駆け巡る清々しい朝の風に変わり、相変わらず私の髪を靡かせていました。そういえば…この広大な高原の中で、生きている人は私1人だけなんですよね。



朝陽を浴びた、他の皆は半透明であった。


まるで、夢か幻を見ているかの様です。




本当は-

只1人ポツンと、この広大な誰もいない高原に立っているみたいで、寂しい気持ちになります。私はこんな所で、1人で何をやっているのでしょうか。


そんな事も思ってしまう。









「イブ、私はどうすれば良いの?」






「んっ…?」


色々な情報が頭に入り、判断に困ったのか…

ミズナさんは、私に聞いてくる。




「フフフフ、そうね…」




私は朝陽を背にゆっくりと、ミズナさんに近付きます。





「実は、私…呪具を壊す旅をしているの」

「良かったら、私と一緒に壊しに行かない!?」







          「呪具…?」

   





「あっ、そうだ!!」

「あと、ついでに密猟者も倒しましょうよ。私もグリフィンが好きでさ。密猟する人が許せないからね。でも、只…倒すんじゃ駄目よ」






 -折角、倒すのならば、格好良く倒しましょう-






私は、ピースサインをしながら

朝陽をバックに、キメ顔で言った。








「格好良く…」






ミズナさんは、ポカーンとしていた。

何か…また恥ずかしい事を言ってしまったわね。

穴があったら。入りたいわ。





「バリバリバリバリ…」




(んっ、バリバリ…!?)





「「「バシャアアアアアアアアアア-ン!!」」」





「「ギャアアアアアアアアアアア-!!」」


  

私が立っていた場所の氷が割れる。

ミズナさんの闇の魔法が解けたので、氷が溶けかかっていたのでしょうか。

湖の中に、格好悪く落ちる私。






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