127話 村の過去
「ウォン、ウォン!!」
「ウォン、ウォン!!」
グリンちゃんは、ゼニィーに向かって吠えています。ゼニィーと話しているのでしょうか…?
あっ、そういえば、ゼニィーは動物の言葉が分かるのでしたね!!
「ふ~ん、なるほどね…」
「じゃあ、ボクが訳しますね~!!」
ゼニィーが、グリンちゃんに言う。
そして、ゼニィーが訳し始めます。
「グリフィンの群れの一同より、そして、グリンこと…ボクより、ミズナさんに伝えたい事があります。折角…全てを思い出せたのに、気持ちが上手く伝わらないから、どうしようかなと思っていたけど…」
「まさか、ゼニィーさんが代弁してくれるとはね」
「今は、とても驚いているよ…」
「…」(私)
ゼニィーは、グリンちゃんの後ろに隠れて話していた。その方が、グリンちゃんが話している様に見えるからね!!
「す、凄いわね」
ミズナさんは、感心しながら言う。
グリンちゃんの真剣な眼差しを見た、ミズナさんはゼニィーの言っている事が、嘘では無いと思ったのか…
「じゃあ、グリフィードさん」
「まずは、あの時に見た事を教えてあげて!!」
「分かりました」
「でわ、私が…あの時、見た事を話しましょう」
グリンちゃんの隣にいたグリフィンが吠える。
…のをゼニィーが訳す。
◇
「「ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウ-」」
「「ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウ-」」
「「バサバサバサバサバサバサ-!!」」
あの時、私…グリフィードは、数匹の仲間と共に、広大な山並みを見渡しながら空を飛んでいました。天気は、清々しい晴天であった。
そして、丁度
ヴェルフィン村の近くに通りかかった頃-
(折角だし、少し顔でも見せに行くか…)
そう思った私達は、村に寄ろうとしていた。
しばらく、花々が綺麗に咲き乱れる星屑の天蓋の上を進んで行く。
「!!」
すると-
遠くの崖の方に、人影を発見した。2人いるな…
1人は、ヴェルフィン村の村長である、いつも沢山の餌をくれる優しいオジサンであった。そして、気になるのが…もう1人の方だ。
その人は、全身に黒いローブを纏い、フードを被っていた。如何にも…怪しそうな格好をしている人であった。
(黒いフードの人は、一体何者なんだ…?)
だが、村長と一緒にいるという事は、別に怪しい人では無いだろうな。そう思う私。それで…そこには、子供のグリフィンが4匹遊んでいた。
村長は、子供のグリフィンを手で招いて呼んでいる様だ。
子供のグリフィンも、慣れた相手なので、安心して近付いていく。
そうそう、人間の中には…グリフィンの子供を拐っていく悪い人がいるからな。そうゆう人達の事を、密猟者と呼んでいるらしい。
大人の私達は、強いので…
標的は、自然と弱い子供になるのだろうか。
そうだから、グリフィンの子供達には怪しい人を見たら、近付かずに、すぐに逃げる様に言っているのだ。
「…」(私)
村長達は、子供のグリフィンと戯れているのか。
折角だし、私達も一緒に遊んでやるか。
そうだ、後ろからソ~っも近付いて驚かしてやろう。
そう思った私達は、翼を静かに羽ばたかせて、そこに向かって行く。
だが-
「「「「「!!」」」」」
私達は、驚愕した!!
村長は、近付いた子供のグリフィン達を檻に閉じ込めていたのだ!!
閉じ込めた子供のグリフィン達は、フードを被った人が手際よくアタッシュケースに仕舞っていた。
あのアタッシュケースは、収納の魔法具か-
フードの人は、密猟者だったのか-!?
村長は、密猟者と手を組んでいたのか-!?
一番信頼していたはずの村長が…
(((私達を裏切ったのかアアアア-!?)))
「「「グロオオオオオオオオオオオ-!!」」」
私達は、怒りで吠えた!!
怒りの咆哮に、気付く村長達-
だが、2人はそれほど驚いた様子には、見えなかった。
そして、密猟者は-
信じがたい行動に、出たのだ!!
「「「ガラガラガラガラガラ~!!」」」
((な、何をしてるんだアアアア!!))
密猟者は-
アタッシュケースから、子供のグリフィンが入った檻を1個、取り出すと、それを崖から突き落としたのだ!!
これは、自身が逃げる為の時間稼ぎなのか-!?
だが、その思惑通りに私達は、急斜面に転がり落ちていく檻を追った。
「「「ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ-!!」」」
しかし-
凄まじいスピードで、転がり落ちる檻に追い付くが出来ず。
結局、追い付いたのは、崖底に激突した後であった…
子供のグリフィンは、大破した檻の中で、無惨に朽ち果てていた。
「「「「「グロオオオオオオオオオオオ-!!」」」」」
私達の怒りは、頂点に達する!!
そして、すぐに群れに呼び寄せて、逃げた村長達の匂いを追った。その匂いは、案の定グリフィン村に続いていた。
「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオ-!!」」」
「「「!!」」」(私達)
村に着いた私達は、更に驚愕した。
村人達が武器を携えて、私達に襲ってきたのだ!!
死に物狂いで、攻撃してくる村人達-
まさか、村人達もグルだったのか-?
そう思いたくは無いが…
そう感じざる得ない状況であった。
信じ難い光景の連続に、もう私の思考は疲れ果てていた。
昨日まで、あんなに仲が良かったのに!!
一体、どうして!?
その迷いか、襲い来る村人達はなるべく殺さない様にした。しかし、村人達は全力で殺しにくる。手加減していたら、こっちも殺されてしまう!!
私達は…
戦えない村の子供や老人達は、村の中央にある集会所に避難している事は知っていた。なので、そこには攻撃を当てない様に気を付けた。
群れの共通意識で、そこだけは攻撃しない様にした。
「「ガッキイイイーン!!」」 「「ガッキイイイーン!!」」
「「ガッキイイイーン!!」」 「「ガッキイイイーン!!」」
とりあえず、残りの子供達を助け出す事が先決だ!!
後は…村長と謎のフードの奴を血祭りにして、この村とは今後関わらない様にしよう。私達は、村人の攻撃を切り抜けながら、子供を探す。
村の中には、連れ去られた子供のグリフィンの匂いが漂っていた。
私達は、その匂いを追っていく。
まるで、誘導されているかの様に、綺麗に匂いは続いていた。そして、たどり着いた先は-
井戸だった。
井戸の中を見ると、残りの子供のグリフィン達が檻ごと沈められていた。まだ皆、息はしている。苦しそうにもがいている。
私達は、井戸の中に入ろうとするが、頑丈な防壁の魔法が中に仕掛けられていた。そして、結界を壊そうする私達の隙をついて、村人達は攻撃してくる。
これは、村人達の罠なのか-!?
それとも、村人達は中に子供のグリフィンがいる事に気付いてないのか!?
村人達に妨害されて、結局…
結界を壊す事が出来なかった。
その内に…
子供のグリフィンは皆、溺死してしまう。
そんな私達の身体も、村人からの攻撃で、もうボロボロだった。
【【【グロオオオオオオオオオオオオオオオオ-!!】】】
群れの怒りが頂点に達して、感情が爆発したのか。
思考より、先に身体が動いていた。
私達は、一切の手加減を止めて、風の合体魔法を発動させる。
「「「「「ドオオオオオオオオオオオオ-!!」」」」」
無数の竜巻が、村を蹂躙する。
そして、村人達との死闘は、お互いの命尽きるまで続いた。