123話 奥底に眠る亡骸
「悪霊になるには、いくつかのパターンがあるんだよ~!!」
「強い未練がある上で、更に満たさないといけない条件があるから、悪霊というのは、そうそう生まれない存在なんだけどね~!!」
「今回は、一番王道なパターン…」
「闇と幽世の合成魔法 “死者の怨言霊” だよ~!!」
「「!!」」(私)
「死者の怨言葉と言うのはね~…」
闇と幽世の合成魔法 “死者の怨言霊” とは-
まぁ、ザックリと言うと怪しい呪文を唱える事で、幽体離脱が出来る魔法らしい。そして、幽体離脱している間…つまり、魔法を発動している間の術者の肉体は、その術者の意思とは関係無しに…まるで何かにとり憑つかれた様に、呪文を唱え続けるみたいですので、その名前の由来にされているとか。
見た目も、不気味な魔法みたいですね。
その発現条件は-
明確には分からないらしいが、特に強い未練がある人に発現するそうです。そして、発現するタイミングは大体…
死ぬ直前だとか。
死ぬ直前に発現した、この魔法を発動する事によって、幽体離脱が出来る訳なのですが…その抜け出した霊体が悪霊と呼ばれる存在みたいですね。『死者の怨言葉』は、闇属性の魔法なので…代償が大きく、そのまま術者の精神はグニャグニャに歪んでしまうそうです。
そして-
抜け殻になった肉体の方は、どうなるのかと言いますと。
元々、瀕死状態だった肉体は…勿論、時間の経過と共に絶命して、ミイラになっていきます。
しかし-
死んでも尚、呪文を唱え続けるらしい。
それは、例えミイラになっても
悪霊に対して、最も効果的な攻撃というのは…
ミイラを壊して、呪文を止める事らしい。
ミイラを壊して “死者の怨言霊” の魔法を阻止する事により、幽体離脱が解除されて、悪霊は消滅するという。
「「つまり、ミズナさんのミイラがどこかにある訳なのね!!」」
私は、ゼニィーに言う。
「まぁ、そんな感じかな~!!」
「じゃあ、それはどこにあるのよっ!?」
「それは、分からないよ~!!」
「「ええええ~!!」」
【【!!】】(ミズナさん)
「んっ…!?」
ミズナさんは、少し驚いた顔になった。
因みに、ミズナさんには、ゼニィーの姿は見えていません。
精霊の目隠しが、一応は通用しているみたいですので。
なので、ゼニィーと私のやりとりは-
ミズナさんから見れば、私の痛い1人芝居でしょうか。
それとも、恐怖で気が動転している様に見えるのか…
しばらく-
ミズナさんは、そんな私の行動を楽しんでいるかの様にニコニコと眺めていましたが。
【流石…】
【ここに戻って来れただけわあるわね~】
【私の弱点を知っているなんて…】
【フフフフ…】
【それじゃあ、私の弱点を見抜いた、ご褒美に教えてあげようかしら?】
(えっ、教えるって…)
【私の身体はね…】
【【【【【この凍りつく広大な湖のねええええ~!!】】】】】
【【【【【とても、奥深く深くに沈んでいま~す!!】】】】】
【【アハハハハー♪】】 【【アハハハハー♪】】
【【アハハハハー♪】】
【【アハハハハー♪】】 【【アハハハハー♪】】
【【【因みに、湖の底までカチカチに凍ってるわよ。そして、普通の氷じゃないわ。私の魔法の力で、ダイヤモンド並みの強度になっているわよ。だから、底から見つけ出す事なんて、満天の夜空から流れ星を捕まえるくらい難しい事なのよ~。でも、折角だし…探してみたら!?】】】
【【【3分だけ、何もしないで待ってあげるからさ~!!】】】
【【アハハハハー♪】】 【【アハハハハー♪】】
【【アハハハハー♪】】
【【アハハハハー♪】】 【【アハハハハー♪】】
「「よっしゃアアアアアア、3分貰ったぞ~!!」」
「「イブ!!」」
「「急いで、掘るよ~!!」」
「「シャベルとか、持ってない!?」」
「…」(私)
【あら、何もしないの!?】
【折角、3分は何もしないのに…】
ミズナさんは、凍った湖面に呆然と立つ私に問いかける。
【ふ~ん、手持ち無沙汰で困ったわね…】
【それじゃあ、ちょっと紹介しちゃおうかな~♪】
【皆、来てちょうだい~!!】
ミズナさんが、そう言うと…
朽ちたグリフィンの間から、ゾロゾロと人が出てきます。
その人達は一見、綺麗な身なりで、肌の血色も良く、普通の生きている人なのかなと思いましたが。
すぐに、亡骸である事が分かった。
だって、彼らには目が嵌まっておらず、目の部分が真っ黒なのだ!!
【この人が、私のママとパパよ♪】
【ねぇ、ママ、パパ…今日は、何して遊ぶ~♪】
【ミズナ~】 【ミズナ~】
【ミズナ~】
【ミズナ~】 【ミズナ~】
「…」(私)
ミズナさんは生き生きと、男女の亡骸に話しかけている。
男女の亡骸も、カタコトで返事をしているが…
これは…中々の吐き気を催す、異様な光景です。
【でも、まだ目が嵌まらないのよね。それに…しばらくしたら、また屍に戻っちゃうのよ。まぁ、それでも…最初の頃よりは、大分マシになったんだけどね】
「…」(私)
(一応、目が嵌まっていない事については、疑問に感じているらしい)
【まぁ、こんな感じでさぁ~】
【今は中途半端にしか、蘇生が出来ないけど…魔法を強化していく事で、いずれは目も嵌まって完璧な蘇生が出来るかもしれないわ。だから、魔力を集めているの!!】
【憎いコイツらを使ってね!!】
「コイツら…?」
【貴方を…わざわざ村に案内したのは、コイツらに殺させる為よ。コイツらが食った餌は…そのまま、私の力になるのよね。だから、私の大切な村と人達を、全て壊したコイツら達に、その責任を取らせる為に働いて貰っているのよ。まぁ、あとは…この星屑の天蓋は、私のお気に入りの場所だから、荒らされたくなかったのもあるかしら…】
「…」(私)
饒舌にペラペラと話すミズナさん。
久しぶりに、人と話してテンションが上がっているのでょうか。
【はいはい、3分経ちました~】
【お喋りは、ここまでよ!!】
【今まで、ここまで戻ってきて、私に勝負を挑んだ人が何人かいるけど…最期は皆、四肢を噛み千切られて、コイツらの餌になったわよ】
【でも、大丈夫。手加減してあげるから…】
【それで、少しでもコイツらを痛めつけくれるかしら?】
【そうすれば、私の気も晴れるからさ】
「雑魚共と一緒にするなよ…」
【…】(ミズナさん)
【貴方…】
【魔力の感じから、魔獣使役の魔法を使い手だと思うけど…このグリフィン達には効かないわよ。何でか、分からないけど】
「魔獣使役の魔法は、生きている魔獣にしか効果がないからね~!!」
「それで、イブどうす…」
「「ヒィィィィ-!!」」
ゼニィーは、血まみれのミズナさんを見た時より-
驚いて、怯えていた。
-勘違いするなよ、馬鹿が-
-待ち伏せされてたんじゃない-
-俺がお前達を、ここに全員集めさせたんだ!!-
私の頭の中から、謎の声が聞こえる。
私は、それを無意識に言葉に出していた。
-さぁ、果ての魔法の発動だ-
-魔獣使役の超高位魔法-