120話 グリンちゃん登場
「今の音は、一体…!?」
まさか、本当に術者か訪ねて来たのでしようか。
そう思いながら、私は奥の部屋に進んでいく。
「コツコツコツコツ…」
「コツコツコツコツ…」
進んだ先には、扉がありました。
どうやら、この部屋の中で物音が聞こえた様ですが…
(これは、ゾンビゲームだ)
(これは、ゾンビゲームだ)
(これは、ゾンビゲームだ)
頭の中で、連呼する私。
ゲームならば、そこまで怖くないですからね(汗)
「ギイイイイ-」
「ガチャン-!!」
「ワァアアオ!!」
ここは、子供部屋でしょうか。
小さな机や椅子が置いてある。
それで、気になる事とすれば…
床一面には、グシャグシャに丸められた紙屑が散乱しています。
「ガサガサガサガサ-」
紙屑の上を歩いていく私。
この部屋も、中々の異様な光景ですが…先程の天井の絵よりは、異様で無いですね。もう感覚が麻痺している感じがする私。
それで…
クシャクシャになった紙を広げると、クレヨンで書いたグリフィンと女の子の絵が書いてありました。
「…」(私)
う~ん、この家の画家の子供なのでしょうか…?
色使いが、とても綺麗ですね。
バックの山の背景も、色鮮やかな緑で塗られています。やはり…才能は、受け継がれていくのですかね。
私は、染々とそんな事を思う。
そして…
緑の綺麗な首輪をつけたグリフィンは、グリンちゃんと書かれている。
どうやら…
グリンちゃんと遊んでいる絵なのでしょうね。
フフフフ、微笑ましいわね。
「何か、癒されるね~!!」
ゼニィーも、そう言います。
「そうね、さっきの色褪せた絵と違って、凄い鮮やかで綺麗な絵ね」
「心がほっこりとするわ~!!」
私も染々と言う。
「…」(私)
んっ…この絵、綺麗過ぎないか。
飾られた絵画達は、色褪せてカピカピに乾燥していたのに…
まるで、ほんの少し前に書いた様な綺麗さです。
クレヨンの筆跡が、不気味な程に瑞々しい。
とても、80年以上の月日が経過しているとは-
【グルルルルルルルル…】
「「「!!」」」(私とゼニィー)
背後から、獣が唸る声が聞こえますけど(汗)
私達は恐る恐る、振り返ると…
「「ギャアアアアアアアアアア-!!」」
グリフィンのアンデットがいました!!
大きさ的には、大型犬でしょうか。
これは、子供のグリフィンです!!
「「ギャアアアアアアアアアア-!!」」
「「「バアアアアアアア~ン!!」」」
私とゼニィーは、驚いて廃屋から飛び出します!!
飛び出したと言うか、ドアを突き抜けていました。
後ろを振り返えれば、綺麗な人の形をした穴が開いている事でしょう。
しかし、そんな余裕は無い-
廃屋から出ると、そこには朽ちたグリフィン達が-
「「「ガキイイイイ-ン!!」」」 「「「ガキイイイイ-ン!!」」」
「「「ガキイイイイ-ン!!」」」
「ヒイイイイイイ~!!」
私は、もうガムシャラに走り抜ける。
かぎ爪を何回も喰らいながら。
「「まさか、家の中にもいたなんて~!!」」
ゼニィーは言う。
「「多分、あれはグリンちゃんよ!!」」
「「えっ、グリンちゃんって…何!?」」
「いや、緑の首輪を付けていたから…」
「あ~、あの絵のね(汗)!!」
「「ハァハァハァハァ…」」
そして、気付けばー
村の入り口が見えて来ました。
もう、このまま村の外に脱出しますか!!
しかし-
【【【グロオオオオオオオオオオオオ-!!】】】
入り口の前には、数体の朽ちたグリフィンが立ち塞がる。
「「イブ、イブ~」」
「「光彩の指輪を貸して下さ~い!!」」
「は、はい、分かったわ!!」
「「オリャアアアアア、光彩の指輪-!!」」
「「「バアアアアアアアアアーン」」」
今度は、ゼニィーが光彩の指輪を発動させます!!
すると、光を浴びた朽ちたグリフィンは…魂が抜けた様に倒れてしまいました。更に、後から追ってきたグリフィン達も、怖がっているのか近付こうとしません。怯んでいるのか…全く、動かない。
さ、流石は…精霊の魔力でしょうか(汗)
私が発動させるのと、一味違います。
「「よし、今の内に~!!」」
「「は、はい~」」
それで何とか、村の外に出られた私。
また、星屑の天蓋までの山道が続く。
◯
「ハァハァハァハァ…」
「…」(私)
しばらく、私は走っていましたが…その内に速度が落ちていきます。
そして、息を切らしながら、次第に歩いていました。
「サアアアアアアアアアアア-」
気付けば-
村に吹き荒れていた強風は、いつの間にか止んでいた。その代わりに…濃い霧が出てきまして、すぐ先の視界を遮ります。
「ハァハァハァハァ…」
しかし、勢いで村の外に出てしまったけど…
むしろ、こっちの方が危ないかもしれない。こんな足場の悪い所で、襲われたれたら、谷底に簡単に落ちてしまう。
「とりあえず、今の内に村から出来るだけ離れるわよ。もし、また追いかけてきたら…」
「その時は、宜しくね。ゼニィー!!」
私は、唯一の武器である光彩の指輪に期待しますが…
「指輪の魔法の事ですか~!?」
「指輪は、しばらく使わない方が良いと思うよ~!!」
「えっ、何で!?」
「さっき、フルパワーで使ったから、かなり熱が籠ってま~す。次に使ったら、多分オーバーヒートを起こして、壊れる可能性があるよ~!!」
「え~、嘘オオ!?」
「てか、オーバーヒートって…電化製品ですか!!」
【【【グロオオオオオオオオ~!!】】】
「「「!!」」」(私)
考える暇も無くー
小さいグリフィンの姿が追ってくる!!
「「あれは、グリンちゃんよオオオオ」」
「「嘘オオオオ~!!」」
叫ぶ私達。
「「指輪が使えないなら、どうするのよ~!?」」
「「くそオオオオ~!!」」
「「ならば、これでどうだ~!!」」
「「銭の魔法奥義、封印バリア-!!」」
ゼニィーは、任意バリアを発動させる!!
グリンちゃんはバリアで覆れて、その動きを封じます。
このバリアの使い方は…
私がパチ村で巨大ゴブリンを閉じ込めたのと、同じですね。そして、幸いな事に姿が見えたのはグリンちゃんだけでした。他のグリフィン達の姿は見えない、諦めたのでしょうか…
「只の任意バリアだけど、10分のタイマー付きで~す!!」
「凄い…」
「つまり、10分間は動きを止められるのね!!」
「…」(私)
(でも、任意バリアは1分で3,000Gだから…10分で3万G!!)
「値段、高すぎだアアアアア」
「「奥の手だよ~!!」」
「「さぁ、今の内に急いで離れるよ~!!」」
「もう、クタクタよ~(泣)」
もう一晩中、走っている感じです。
眠さと疲れがピークに…こんな辛い思いをするならば、もう崖から落ちてしまった方が楽なんじゃないかしら。
ヘトヘトになりながら、そう思う私。