62話 タッグバトル
「「クソっ、次から次へと邪魔が入る!!」」
「「アイツは…」」
ルイアは、顔を曇らせる。
私達の行く先に佇んでいた内の1人は、サルジャールでした。
そして…もう1人は、全身にオレンジ色の光を放った鎧を着て、巨大な剣を握っている。
【【ガシャアアアアーン】】 【【ガシャアアアアーン】】
【【ガシャアアアアーン】】 【【ガシャアアアアーン】】
あれは―
文献で見た、当時のバルキード王国軍の2人の最高指揮官の内の1人である “炎天の剣士 ナハリタ” であった。ナハリタは、当時のバルキードの最強の剣士であり、その巨大な剣は全てを薙ぎ倒し、高熱に輝く鎧は-
触るもの全てを蒸発させたという。
「アイツからは、超巨大サラマンダー以上の禍々しい魔力を感じるよ…」
ゼニィーは、言う。
そして…
ルイア曰く、この異空間で悪霊になってから、その力は更に強大になったらしい。ナハリタとルイアは…この異空間で度々闘い、その勝敗は五分五分みたいです。
因みに…
闘いに敗れた時は、気付くと魔法陣の近くで復活しているそうで、何事も無かった様にまた闘いを始めていたとの事です。
「…」(私)
無限に出てくるゴーレム兵やサラマンダー…
そして、闘いに負けても、また復活して闘い続けるエンドレスな闘い。
これは、この『カコシ』の呪具の思惑なんでしょうか。
「「勝率もそうだか―」」
「「勝つにしても、いつも長期戦になってしまうぞ!!」」
ナリハタとルイアの剣術は互角で、中々お互いの攻撃が入らず、決着するが長引いてしまうらしい。
そしてー
サルジャールが怪しげな呪文を唱えると…
ナリハタの巨大な剣が、更に強大な炎に包まれていた。
明らかな、パワーアップですー!!
モタモタと時間をかけていたら、魔法陣を破壊する前にまた禍々しいルイアに逆戻りしてしまう!!
(果ての魔法を使ってみるか―!?)
―いや、まだだ!!―
この『カコシ』の呪具の全貌は、まだあまり分かっていない!!
カコシは、パーシャの町を中途半端な平和にして終わりなのでしょうか。
いや-
空をビッシリと覆い尽くすカコシを見れば…
それは、違うと心が全力で否定していた。
この闘いすらも、まだ前哨戦の感じがしました。
(そもそも…)
(((こんな雑魚相手に切り札を使ってられるかアアア―!!)))
「「ルイア―!!」」
「「アイツを一撃で、仕留められる技はあるかしら!?」」
私は、駆けながらルイアに言う。
「「一応あるけど、大振りすぎて、簡単に躱されるわよ!!」」
「「!!」」(私)
((大振り…まさか、あの奥義ですか!!))
「「ルイア―!!」」
「「私がアイツの気を盛大に逸らすから、その隙にその技で思いっ切り攻撃するのよ!!」」
「「大丈夫なの、イブ!?」」
ルイアは、私に心配して言う。
「「大丈夫、何があっても私はもう死なないわ!!」」
「「…分かったわ!!」」
時間が惜しい、一瞬で終わらせるわ!!
「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ~!!」」」
私はポーチから剣を抜き出して、一直線にナハリタに向かう!!
【雑魚が、どけええええ―!!】
そして、私に―
「「「「「「「ガキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ―ン!!」」」」」」」
ナハリタの全てを、なぎ払う強烈な斬撃が入った!!
「「「「「ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド―!!」」」」」
「「「「「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ―!!」」」」」
辺りには、ナハリタの一撃による衝撃波と土埃が広がる。
私達を取り囲む様に見物をしていたゴーレム兵達は、衝撃の余波で発生した突風に吹き飛ばされない様に、必死に堪えている。
斬擊の余波だけで、凄まじい威力だった-!!
「「「「「ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド―!!」」」」」
「「「「「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ―!!」」」」」
「…」(私)
しかし、私は…
人差し指1本で、ナハリタの剣を受け止めていた。
【【【えええええええええ~!!】】】(周りのギャラリー)
【【【いやいやいやいやいやっ】】】(周りのギャラリー)
周りを囲っていたゴーレム兵達が、口を揃えて驚愕していました。
【えっ、あの~…】
【マ、マジですか…】
ナハリタも、かなり動揺していた。
なんせ、渾身に振った一撃をか弱い少女?に、指1本で止められたのですからね。まぁ実際は、ナハリタの攻撃時に、私の周囲に任意バリアを発動させて、ナハリタの剣を受け止めた感じです。
そして、私はすかさずナハリタの剣に、指をチョンっと添えたのです。
周りから見れば、指で止めた様に見えるでしょうか…
(えっ…?)
(バリアである事が、すぐにバレてしまうかですって…?)
(その心配は、ありません!!)
そう、なんと―
バリアには特殊な仕掛けがしてあり、他者からは見えない仕様になっているらしい。これは、敵に手の内を晒さない様にする為だとか。
(んん~、相変わらず高性能なバリアですね!!)
それとなんですが…
バリアを容易に壊す様な技を有している相手が近付いた場合は、バリアが点滅して教えてくれるそうです。まぁ…バリアを容易に壊す様な敵は、そうそういないそうですが、一応そんな仕様になっているとか。
なので、あとは―
(度胸とタイミングさえ揃えば、簡単に騙される!!)
―イブ・スーパーイリュージョン!!―
これは…
元は、闇に堕ちたルイアの虚を衝く為にゼニィーが考えた策でした。
ゼニィーは、その昔-
名も無き1人の侍と共に、悪名高き大剣豪共の心を、このやり方でへし折ってきたそうです(本当かどうかは、知りませんが…)
し、しかし…バリアが守ってくれると分かっていましても、それはかなりの恐怖がありました。私は、冷や汗ダラダラで今にも卒倒しそうであった。
「「こんな…お遊戯会の剣じゃ、私は斬れないわよ!!」」
私は、必死にポーカーフェイスをしながらナハリタに言います。
そして、更に―
「「剣を少しでも離したら、お前の身体は木っ端微塵になるぞ!!」」
ハッタリで、ナハリタの動きを止める。
【くううっ―!!】
ナハリタは、どうすれば良いか判断に困る。
私的には、一瞬だけ判断を遅らせる事が出来れば良いのです。
【【【ナハリター、後ろだアアアア―!!】】】
いつの間にか、建物の屋上で見物していたサルジャールが叫んだ!!
【【【なっ…しまった!!】】】
ナハリタは、慌てて言った。
てか、アンタら普通に喋れたんかいっ!!
ナハリタが、私に気を取られて唖然としている間に-
ルイアは、ナハリタの背後に回っていました。
ルイアは、ナリハタに向かって力強く剣を…では無く、魔法で作り出したバットを持っていた。バットは、白く眩しい炎に包まれている。
ナハリタも反応こそするが―
ルイアを迎え討ちたいが―
(((ナハリタは、人生で一番悩んだ一瞬だろう、多分)))
「「ゼ、ゼニィー、出番よ~!!」」
「「オリャアアアア、思いつきのマネーアタック!!」」
「「ゴツンっ!!」」
【ウォっ―!!】
ゼニィーが、ナハリタの身体に体当たりをして、刹那の思考を巡らすナハリタの体勢を崩した。ナイス、ゼニィー!!
「「「サルジャール、ナハリタアアアアアアアア!!」」」
「「「アンタらも、もう目を覚ましな」」」
「「「悪趣味な仮装パーティーは、これで終わりよ!!」」」
【【【クソオオオオオオオオオオオオオオオオオ―!!】】】
「「「出血大サービスだ!!」」」
「「「これで、天国まで飛んでいけええええ!!」」」
ルイアは、そう叫ぶと-
両手に握り締めたバットを大きく振りかぶった!!
「「「「「「「カッキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ―ン!!」」」」」」」
【【【【【ウギャアアアアアアアアアアアアアア―!!!】】】】】
火の玉となって飛ばされるナハリタは、屋上で見ていたサルジャールにぶつかり、一緒になって空高く打ち上がる。
それは、まるで-
特大ホームランの如く
2人は仲良く、カコシで覆われた雲をぶち抜けて、そのまま空の彼方に消えていった。
―キラアアアアアア―ン―
(ん~、ナイスバッティング!!)
このルイアの魔法は―
遠い昔に、私に見せてくれた火の魔法の奥義です。
炎で包まれた魔法のバットを作り、害獣を攻撃する技です。
横に大きく振れば、遠くまで打ち飛ばす事も出来ます。
ルイアはよく…
この魔法を巨大スライムに叩きつけて、一発で蒸発させていましたね。
(あ~、懐かしい…)
遠くに飛ばされたアイツらは、夜空の星にでもなったのかしら。
ナハリタの鎧は…
よく光輝いていましたので、きっと綺麗な星になる事でしょう。
私は、カコシの空を見上げて…そう思います。
さぁ-
雑魚は、片付きましたので、魔法陣に向かいましょう!!




