119話 怨念の廃屋
「コツコツコツコツ…」
「へぇ~、凄いわね…」
ランタンを灯しながら-
少し室内を進んだ私は、ある物に目を奪われていました。
そこには、沢山の絵画が飾ってありました。
「ふ~ん…」
どれも風景画ですね。
かなり、色褪せていますが…広大な山々の風景にグリフィンの姿が描かれている。
そして、床には…
埃に覆われたパレットと、書き途中の絵が置いてありました。どうやら、飾られている風景画は…ここで描かれた物なのでしょうね。
そう思う私。
この廃屋に住んでいた人は、画家だったのでょうか。
私は、ランタンで絵画を順番に照らしていくと-
ある絵画を発見する。
その絵画には、仲良くグリフィンと戯れる人達が描かれていた。
それは、相変わらず埃にまみれて…
色褪せて、ボロボロで…
絵の中の風景は、酷く霞んで見えました。
ですが-
当時の情景は、私の頭の中に色鮮やかに浮かんでいた。
何故でしょうか-
やっぱり、ここはヴェルフィン村だったのですね。
私がその昔、何度も遊びに来た村…
そして、今の私がまた遊びに来ようと思った…
―グリフィン達と仲良く暮らす村です-
絵画の絵を見た私は、そう確信しました。
「…」(私)
(((いやいや、滅茶苦茶、滅んでるじゃん!!)))
「とりあえず、ここから先はどうするの…?」
困った私は、ゼニィーに聞く。
「ん~、そう言われてもね…」
「とりあえず…朝までは、ここにいるのが良いかもね~。アンデッドは、光に弱いから朝になると活動が出来ないからさ~!!」
「そ、そうなのね…」
「大体、朝の4時過ぎまでの辛抱かな~!!」
「その時間になったら、アンデッドは只の屍に戻りま~す!!」
「へぇ、なるほど…」
今は、夜中の2時過ぎですから…あと2時間ですかね。まぁ、そこまでは長くはない。
そして…
私は、ロッキングチェアを発見。パチ村を思い出しますね。
まぁ…多分、外からは見つかる事はないでしょうから。このまま、ここで朝になるのを待ちましょうか。
しばらく、ロッキングチェアに揺られて、仮眠でもしてれば、あっという間の時間ね。
私はやっと、ゆっくり出来そうな感じになります。
「ギイイイイ-」
「ギイイイイ-」
「そうだ、ゼニィー…」
「アンデッド魔獣って、一体何なの…!?」
それで、少し落ち着いた私は…
先程、起きた事を冷静に振り返ります。
私は…普通に慣れた感じで、アンデッド魔獣(朽ちたグリフィン)と言っていましたが…この世界では、前世の記憶を含めて、アンデッド魔獣について、見た事も聞いた事もありませんでした。
そう-!!
私が今、持ち合わせているアンデッドの知識は全部、地球での知識になるのです。ゾンビゲームとかゾンビ映画とかのね!!
でも、まさか…
こんな悍ましい魔獣が、実際に存在するなんて
夢にも、思いませんでした。
「え~とね、アンデッド魔獣はね~!!」
「闇の魔法 “アンデッド創成” で、産み出された魔獣の事で~す!!」
「「や、闇の魔法-!?」」
「うん、そうだよ~!!」
「まぁ、原理としては…亡骸に、自身の魔力と周囲に漂う怨念を注入して、産み出しま~す。イメージとしたら…亡骸に怨念を憑依させて、無理矢理に動かす感じかな~!!」
「へぇ…」
「そうなのですよ…」
「だからね…」
「禍々しい怨念が宿った亡骸はね…」
【【この世の理に反して、動き出すので~す!!】】
「…」(私)
意図的に…
ランタンの灯りに照らされながら言うゼニィー。
あの~、そうゆう演出はいらないからね。
「それじゃあ…」
「この朽ちたグリフィン達は、その…誰かが、アンデッド創成という魔法を使って産み出したという事なの!?」
「まぁ、そうなるかな~!!」
「…」(私)
「もしかしたら、その誰かがさ…」
「この家に、訪ねて来るかもよ~!!」
「イブを探しにね~!!」
「いや、もしかしたら…」
【【既に、この家の中にいるかもしれないよ~!!】】
「「いや、その演出はもう良いわよ!!」」
素直にビビる私。
多分『ゼニィー』と『バリア』と『果ての魔法』が無かったら、恐怖でショック死している事でしょう。
「ごめん、ごめんね~!!」
「でも、これは半分冗談で半分本気で言ってる事だよ~。実際、朽ちたグリフィン達を産み出した術者が、近くにいる可能性もあるからね。術者が、近くにいない事を願うばかりだね~!!」
「え~、そうなの!?」
「まぁ、大丈夫だよ~!!」
「一体、何を根拠に…」
「…」(思考)
しかし、術者か…
誰が、この朽ちたグリフィンを産み出したのでしょうか。
闇の魔法という事は、悪魔でしょうか。それとも、呪具の所有者か。
いや、それとも-
ミズナさんか
私の頭の中に、自然とミズナさんの名前が浮かびます。
いや、流石にそれは…だって、ミズナさんはまだ子供だからね。
「…」(私)
いやいや、外見は関係無いかもしれない!!
見た目は、子供の姿をした悪魔なのかもしれません!!
((ブルブルブルブル…))
想像が止まらない私は…
考えを巡らせる程に、背筋が凍っていく。
もしかしたら、ミズナさんは…
もう、この家の中にいて
暗闇から、私の事を見つめているかもしれない。
無邪気な笑顔を浮かべながら…
「ギイイイイ-」
「ギイイイイ-」
「ミシミシミシミシ…」
(んっ、ミシミシ…?)
「「ガタアアアアアアーン!!」」
「「ギャアアアアアアア!!」」
(モクモクモクモク…)
舞い上がる埃―
ロッキングチェアが突然、壊れました(泣)
やはり、劣化していたのか。
「ハァ…」
ロッキングチェアの残骸と共に、仰向けになる私。
私の安息の時間は、たった3分で終わってしまいま-
(((ウワアアアアア!!)))
天井を仰ぎ見た私は一瞬、ギョっとする!!
(((沢山の人の顔-!?)))
いやいや、只の絵画です(汗)
天井には、絵画がびっしりと飾られていました。
絵画に描かれた人達の顔が…本物の顔に見えてしまいました。
(ゴクンっ)
しかし、天井にまで飾るとは…
絵が飾り切れなくなったのでしょうか。
にしても中々、異様な光景ですね。
キャロットさんの家でも、同じ様な光景がありましたけど…
あれは、夢でしたからね。現実だと、また一味違います(汗)
「…」(私)
しかし、絵画は黒い何かで汚れていた。
これは、カビ…?
(ゾクっ!!)
背筋が凍る私。
暗くて、よく分からないが…
た、多分、これは…
「へぇ~凄いね!!」
「天井にも、絵が沢山だ~!!」
ゼニィーは、ランタンを天井に向けて高々と持ち上げる。
「ちょ、ちょっと、待って-」
「「「ギャアアアアアアアアアー」」」(2人の叫び)
廃屋に轟く叫び声-
天井に飾られた絵画には、沢山の血の手形がついていました。
誰かが、血だらけになった手で、ここに飾ったのでしょうか!!
「「ちょっと、ゼニィー!!」」
「「どこが、1番良い家なのよ!!」」
「「1番、最悪な家じゃないかアアアア!!」」
ゼニィーに、吠える私。
「いや、ボクに言われても~!!」
「外見は、1番良かったんだよ~!!」
「「外見だけじゃ、ダメなんだよオオオオ!!」」
「「私を呪い殺す気かアアアア!!」」
「え~、そんな~!!」
「「ガタアアアアアアーン!!」」
((ビクっ!!))
私がゼニィーを理不尽に責めていると-
突然、奥の部屋から大きな物音がした。
えっ、今度は何…!?