117話 嬉しい特典
(キョロキョロキョロ…)
窓から、外を眺める私。
…と言っても、ガラスはありませんけどね。
あるのは、窓枠だけです。
それで外には…
凍てつく強風の中を
グリフィンのアンデッド達がウロウロと歩いています。
「…」(私)
((もう、どうしよう~!!))
「キャロットさんから託された大事な指輪が~」
「ウワアアアア~ン!!」
子供の様に泣き喚く私。
そんな私ですが…今は、上空から華麗に突っ込んだ廃屋にそのまま身を潜めていました。そしてなんですけどね…手に持っていたはずの光彩の指輪を…どっかに失くしてしまったのです!!
恐らく、竜巻に巻き込まれた時でしょうか。
竜巻によって、どこかに飛ばされてしまったらしい。
((本当にどうしよう~!?))
「ウワアアアア~ン!!」
「じゃあ、ボクが探して来ようか~!!」
「ゼ、ゼニィー!?」
見かねたゼニィーが提案します。
そ、そうでした…ゼニィーさんは落ちている物を探すのが得意なのです。
「で、でも…」
「こんな暗闇の中でも、探す事が出来るの?」
(いや、もしかして…ゼニィーの目は、赤外線スコープの様に夜でも問題無く見る事が出来るのでしょうか?)
「まぁ、確かにね…」
「普通ならば、こんな暗闇の中で、探す事は出来ないけどね~!!」
「ボクの角は、何の為にあると思いますか~!?」
「えっ、角…?」
ゼニィーは…頭の上の角を指差しながら言います。
「これは、マネーレーダーと言ってね~!!」
「近くに金目の物が落ちているとブルブルと震えて、教えてくれるので~す。なので、キャロットさんの指輪もこのレーダーを使えば、とても見つけやすくなるので~す!!」
「へぇ、凄いわね…」
「ボクは、いつも長年の勘と、このマネーレーダーを駆使しながら小銭を探しているんですよ~!!」
「へぇ、そうなのね…」
ゼニィーの角は…
只の飾りで、付いている訳じゃ無いのですね。
まさか、そんなレーダーの役割があったなんて。
んっ、ですが…
頭の中に、ふと疑問が浮かびます。
「でも、それじゃあ採算が合わないじゃないの…?」
「マネーレーダーも銭の魔法で有料なんでしょ。落ちている小銭を探す為だといっても、そんなに額が見つかる訳ではないし…」
(まぁ、徳川の埋蔵金みたいな…)
(お宝を探しているのならば、話しは別ですが…)
「フフフ…」
「なんと、これは無料なんだよ~!!」
「えっ、無料!?」
「長年、銭の魔法を使っていると色々な特典があってね。この角も特典の1つで、代金は無料で使いたい放題なんです!!」
「へぇ…」
「だから、昔のボクは角が無かったんだよね~!!」
「後から特典で付けて貰いました。中々、格好良いでしょ~!!」
「そ、そうね…」
「まぁ、そんなんだからさ~!!」
「この村の範囲だったら、すぐに探索を終えられると思うから、ちょっと待っててね。でも、流石に谷底に落ちていたら…もう見つけられないけどね!!」
「は、はい」
「とりあえず、頼んだわよ!!」
「OK~」
「じゃあ、探してくるね~!!」
「行ってらっしゃい…」
「…」(私)
ゼニィーは、指輪を探しに闇の中に消えていく。
1人になって、急に寂しくなる私。
「「「ビュウウウウウウウウウウウー!!」」」
「「「ガタガタガタガタガター!!」」」
冷たい風は、ボロボロの廃屋を容赦無く通過します。
そして、ガタガタと廃屋を揺らしている。
(さ、寒い…)
バリアがあっても、とても寒いです。
ポーチの中には、コートとかジャンバーは入っていませんでした。
これらの冬用の衣類は、この世界で調達するしかなさそうね…
(ブルブルブルブル…)
う~、それにしても滅茶苦茶、寒いです。
吹雪の雪山で遭難して、ポツンとある小屋に迷い込んだ気分です。
強風が吹く度に、そのまま風を受ける私。
そう、この廃屋は穴だらけなので、隙間風だらけなのです。
更に、屋根にはポッカリと大きな穴が空いてますので…
「…」(私)
まぁ、これは私が作った穴なんですけどね。
「「「ガタガタガタガタガター!!」」」
「ギシギシギシギシギシギシ―」
「うわ…」(不安)
強い風で、今にも崩れそうな感じです。
今まで、よく崩れないでいたものです。少しでも、衝撃を与えたら危ないかもね。でも…さっき、私が廃屋に突っ込んだ際にかなりの衝撃を与えてしまったけど、それは大丈夫なので―
「「「「「ガシャアアアアアアアアアアアアアアアアアア~ン!!」」」」」
「「「「「ガラガラガラガラガラガラガラガラガラガラ―!!」」」」」
「「「ウギャアアアアアアアア―!!」」」
(うううう~)
(誰か助けて…)
大きな音を立てながら、廃屋は崩れ落ちました。
瓦礫に下敷きになった私は、力無く呟く。
もう、散々だ…