115話 闇の中から
私達はグリフィンの亡骸を背に歩き出してから、すぐに…ある場所に着いていました。『ある場所とは、村である』と勿論言いたいのですが、そこは…何かが違った。
(ここが、ミズナさんが言っていた村なのか!?)
「「ビュウウウウウウウウウウウウウウウウウ―!!」」
「「バサバサバサバサバサバサー」」
村らしき入り口の前に立つ私。そこには、肌を刺す様な冷たい強風が吹き荒れていた。これに雪が混じれば、吹雪となる事でしょう。
私は、靡く髪を押さえながら考える。
入り口からチラホラと見える何軒かの家には、明かりが灯っていない。それは、真夜中だから…と言う訳では無くて、今にも強風で崩れそうな気がするボロボロの家だった。
見るからに、廃墟でしょうか…
人が住んでいる気配を感じさせない。
「…」(私)
(途中で、道を間違えたのかしら…?)
ですが…
星屑の天蓋から、ここまでは一本道であった。なので、間違えようが無いのです。もし…道を外れようものならば、崖下に転落してしまうのですから。となると…やっぱり、ここがミズナさんが言っていた『ヴェルフィン村』なのでしょうか。
(とりあえず、中に入ってみましょうか…)
◯
しばらく…村を中を探索した私は、1つの判断を下していました。
ここは、廃村であると―
どの家も酷くボロボロでした。
念の為…何軒かの家の中に入って、確認しましたが人はいませんでした。本当に誰1人としていない、暗闇に包まれた村ですね。
明かりと言えば…
私のランタンの小さな明かりが1つあるだけです。早く宿屋の温かいベッドで寝たいと思っていた私の呑気な考えは…凍てつく風で、一気に吹き飛んでいた。
(し、しかし―)
どういった経緯で、廃村になってしまったのかは知りませんが…村の朽ち果て具合から見ると、廃村になってからそれなりの時間が経っている様ですね。
(そして、気になる事としましては…)
村の至る所…
家の壁とか地面とかには、巨大な掻き爪の跡がある。
そして、所々には黒く何かが飛び散った様な跡もある。恐らく…血の跡でしょうか。これは、何かの争った形跡でしょうか。
少し、廃村になった経緯が気になってしまう。
「「ビュウウウウウウウウウウウウウウウウウ―!!」」
「「ギィィィィィィ―!!」」 「「バタン―!!」」
「「ギィィィィィィ―!!」」 「「バタン―!!」」
「「ギィィィィィィ―!!」」 「「バタン―!!」」
強風に吹かれた廃屋のドアや窓はー
鈍い音を出しながら開いたり、閉じたりを頻繁に繰り返している。まるで…誰かが、明け閉めをしていると感じてしまう。
ですが―
夜中2時過ぎの山の上の廃村には、私達しかいません。
「「ビュウウウウウウウウウウウウウウウウウ―!!」」
「コロコロコロコロ…」
「…」(私)
そして、私の目の前にはボールがコロコロと転がってくる。私は、何となくボールを蹴り飛ばすと…すぐに蹴り返す音と共に暗闇の中から、またボールが戻ってくる。
(えっ…!!)
少し、ゾクっとした!!
いやいや、どこかの家の壁に当たって跳ね返っただけでしょうね。
因みに…ゼニィーは、私のフードの中で寝ています。
私は、確かめにボールが来た方に歩いていくが…
そこには、家はありませんでした。
そして跳ね返る様な物も、全く見当たりません。じゃあ、何で…!?
私は、ボールを何となく蹴飛ばしてしまった事を後悔する。
暗闇の先を見つめながら、呆然と立ち尽くす私。
「もしかして、ミズナさんじゃないのかな~!!」
「あっ、なるほど…」
いつの間にか、私の横を飛んでいるゼニィーは言う。
(フムフムフムフム…)
じゃあ、ミズナさんは先回りをしてこの場所に来ていて、私達を驚かせようしているのでしょうね。もしかして…グリフィンでも乗って先回りをしたのでょうか。全く、何てお転婆な子なんでしょうか。
ならば…ボールが来た方を、このまま行けばミズナさんがいるのかも!!
そして、私達を本当の村に案内してくる感じなのね。私は少し安堵したがら、そう思う。
「「ビュウウウウウウウウウウウウウウウウウ―!!」」
((てか、風が強過ぎだろ!!))
―私は、吹き荒れる強風に逆らいながら闇の中を進んでいく。