114話 鬼ごっこスタート?
―泣くなアアアアアアアアア!!―
―良いから早く、逃げろオオオオ!!―
―お前だけはー
ーどうかー ーどうかー
ー生き延びてくれ―
―そして、生き延びて―
―生き延びて―
ー生き延びてー
ーイキノビテー
【【【【【次はアイツらに、地獄を見せてやれ―!!】】】】】
【【【【【そうだ、復讐だあアアアアアア―!!】】】】】
【【【【【首を洗って、待っていやがれえ!!】】】】】
【【【【【ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ―!!】】】】】
◇
「ルンルンルンルンルンルン―♪」
「ランランランランランラン―♪」
私は、ミズナさんと似た様な歌を口ずさみながら、光の道を歩いていました。今日は、ゆっくりと村の宿で休んで…明日は、グリフィンに乗せて貰いたいわね。あっ、それでそうだったわ!!
ミズナさんに、今でもグリフィンの試乗体験はやっているのか、聞けば良かったですね。
まぁ…村に着いたら、宿屋の人にでも聞いてみましょうか。
「ルンルンルンルンルンルン―♪」
「ランランランランランラン―♪」
「ミズナさんの方が全然、歌上手いね~!!」
ゼニィーは、言う。
「「う、うるさいわね!!」」
「「それより、この光る虫は食べちゃダメだからね!!」」
「は~い、分かってますよ~!!」
私は、星屑の天蓋に観光をしている気分でウキウキしていました。
まぁ…スタンスとすれば、観光メインの旅ですからね。
しかし―
「アララ…」
光の道は、その内に終わってしまいました。
そして、その先には本当の道が現れます。その道は、一寸先も見えない漆黒の道です。とりあえず…ここらかは、ランタンの明かりを頼りに進んで行きましょうか。
まぁ、ミズナさんは…村には、歩いてすぐに着くと言っていましたので、10分くらいで着くでしょうかね!?
そんな事を思いながら、私は進んで行く―
(テクテクテクテクテク…)
~1時間後~
「ガラガラガラガラガラガラ~!!」
「「イブ、イブ!!」」
「「ちょっと、大丈夫ですか~!?」」
「ハっ―!!」
((あ、危ない、危ない!!))
石コロが-
ガラガラと急斜面を転がっていく。
いや…急斜面と言いますか、殆んど崖ですね。そして、私はフラフラとして、崖から落ちそうになっていました。
時間は…
もう深夜の2時になっています。
「ごめん、ごめん!!」
「流石に、疲れと眠気でフラフラとしていたわ!!」
「ボクも、同じだよ~!!」
「てか、もう引き揚げる体力は残って無いからね。もし今度、崖に落ちたら、崖下で夜を過ごして貰うからね~!!」
「「もう…何回も言わなくても、分かっているわよ!!」」
…そうなのです。
私は、星屑の天蓋を出発してから、ゼニィーに耳にタコが出来るくらい、この事を言われていました。なので、気を付けているはずなんですけど、やっぱり…眠気には勝てませんね。気付けば、またフラフラとしながら歩く私。
「ファアアア~ア…」
それとなんですが…暗闇の道の唯一の目の保養であった星空ですが、次第に雲に覆われて、見えなくなっていました。今は、只々…暗闇の急傾斜の道をひたすらに歩いている苦行になっていました。
「…」(私)
「ていうか、いつ村に着くの…!?」
私は、ゼニィーに聞く。
「いや、ボクに聞かれてもね…」
ゼニィーは、困った顔で言う。
そんな私達は、もう1時間近く歩いていました。
(ミズナさんは、すぐに着くと言ったのに一体、何故!?)
(ミズナさんが嘘を言ったとは、考えにくいですし…)
あっ、もしかして…山々に囲まれた壮大な環境で暮らす彼女にとったら、1時間くらい歩いて着く場所でも、それは『歩けば、すぐに着く場所』という認識なのでしょうかね。
山暮らしは、逞しいわね…
(具体的に、どれくらい歩けば良いのか聞くべきでしたね…)
「ハァ…」
「ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウ―」
暗闇から、ヒンヤリとする風が吹く。
(寒っ…!!)
(ブルブルブルブルブル…)
「…」(私)
そういえば、そんな彼女ですが…半袖の白いワンピースとサンダルとか、それは夏の格好でしたよね。昼間なら、問題無いと思いますけど…夜は、山の頂上だけあって、それなりに冷え込みますからね。
私の服装も春先に着る薄手のものですから、風が吹くと少し震えてしまいます。
(具体的に、今はどれくらいの温度なんでしょうか…!?)
そう思った私は、ポーチから室温計を出します。
『現在の気温』 『湿度』
2℃ 45%
『熱中症危険度』 『洗濯物』
それより、風邪を引くなよ!! 普通
「ワァオ!!」
想像よりも、寒かった!!
東京ならば、真冬の朝の様な寒さですね。厚手のコートと手袋とマフラーが必要な寒さです。ですが…私はそれ程、寒さを感じていませんでした。
これは、やっぱり…
「ボクのバリアは、高性能だからね~!!」
「不快に感じる寒さや暑さとかは、ブロックしてくれるよ~!!」
「へぇ…相変わらず、凄いわね!!」
「…」(私)
しかし、この温度で…
ミズナさんは、あんな格好で寒くないのだろうか。
絶対、風邪を引きそうですけど。
本当に、山暮らしは逞し―
「「「!!」」」(私)
「「「「ガラガラガラガラガラガラガラガラ~!!」」」」
「「「ギャアアアア―!!」」」
突然、山の上の方から何かが滑り落ちてくる。
私は、驚いて悲鳴を上げます。
「んっ、イブ…!?」
「やっぱり、また落ちたね~!!」
「ファアアア~イ…」
「イブの今夜の宿は、崖下で決定で~す…!!」
少し前を行くゼニィーは、あくびをしながら言う。
「「いや、私は落ちてないわよ!!」」
「あっ、本当だ!!」
「てっきり、足を踏み外して落ちたかと思ったよ~!!」
「「そんな、ポンポンと落ちないわよ!!」」
「「一体、何が―」」
「「「「「!!」」」」」(私とゼニィー)
「な、何よ…これ」
―私の目の前には、グリフィンの巨体が横たわっていた。
近くで見ると、とても大きいですね。例えるならば、軽トラみたいな大きさと存在感です。それで危ない、危ない…もう少しで、軽トラの下敷きになっていた所でした。
そして、そのグリフィンはピクリとも動きません。
しかも、よく見ますと所々に怪我をしていた。
居眠り運転による事故でしょうか…!?
「「ゼニィー!!」」
「「このグリフィン…怪我をしているわ!!」」
「「ど、どうしよう…」」
「「とりあえず、何か手当てをしないと…」」
私は、急な出来事にオロオロします。
「いや…もう、その必要は無いよ…!!」
「えっ、何で…!?」
「…」(私)
―いや、そのグリフィンはもう死んでいた。
少し冷静になれば、すぐに分かった。
そのグリフィンの身体は、酷く腐っていて…所々、骨も見えている。
それは、素人の私にも明らかに死んでいると、簡単に判断が出来る程に。
腐り具合から見て…
死んでから、それなりの時間が経過しているのでしょうか。
(でも、可哀想に…)
「ヒュウウウウウウウウウウウウウウウウ―」
暗闇に染まる崖の道で、しばらく考え込む私達。
ランタンの薄暗い明かりは、グリフィンの亡骸をユラユラと揺らしていた。
「前に…山の上の方で死んだグリフィンの亡骸が、何かの拍子で滑り落ちてきたのかしらね!?」
「そう考えるのが、妥当かもね~!!」
「…」(私達)
「とりあえず、村に着いたら…」
「村人達にこの事を伝えて、対応して貰おうよ~!!」
ゼニィーは、言う。
「そ、そうね…」
「じゃあ、村に行きましょうか」
私達はグリフィンの亡骸を背に、また村に向かって歩き出します。
【【【グルルルルルルルルルルルルルル―】】】