107話 伊勢海老
「モクモクモクモクモクモクモク…」
「パチパチパチパチパチパチパチ…」
辺りは、すっかりと暗くなっていました。
七輪から、立ち上る煙はモクモクと空へと消えていきます。
(そろそろ、焼けそうかしら…)
その七輪の上には、今…
エビや魚達が、見た目は美味しそうに焼けています。
このエビですが…
そう、魚達と同様に私が召喚したものになります。
これは、最近になって分かった事なんですが…魚を召喚していくと、たまに他の魚介類が出てくる事があるのです。今回は、エビでしたが…ホタルイカみたいな小さなイカとか、ホタテみたいな貝が出てくる事もありました。
そして、肝心の味の方ですが…
(モグモグモグモグ…)
「うん…まぁ、美味しいんじゃないの」
魚よりは、美味しいですね。
普通のエビを食べている感じです。
ですが、とても小さいエビが1匹なので全然もの足りませんね。なので、いつも通り、魚を食べてま~す!!
(あ~、エビなら伊勢海老でも出て来ないかしらね~!!)
「「「伊勢海老、食べたアアアア~い!!」」」
「伊勢海老、食べた~い!!」 「伊勢海老、食べた~い!!」
「伊勢海老、食べた~い!!」 「伊勢海老、食べた~い!!」
「食べた~い…」
私の叫びは、こだまになって響き渡っていきます。
まるで、山達が『伊勢海老を食べたい』と言っているみたいで、少しクスっと笑ってしまいました。
「伊勢海老って、何なの~!?」
「聞いた事が無い、エビだけど!!」
ゼニィーが言う。
「伊勢海老はね、とても高級で美味しい大きなエビよ!!」
「へぇ、そんな美味しそうなエビがあるんだ!!」
「サウスヴェルに行けば、食べられるかな~!?」
「…」(私)
「まぁ、似たような大きいエビならば…あるんじゃないのかしらね。ギルドカードの地図を見たら、サウスヴェルは温暖な海に面した港町みたいだからね。海の幸も、それなりにあるんじゃないの!?」
「ふ~ん…」
「じゃあ、サウスヴェルに着いたら伊勢海老を探してみようよ~!!」
「う、うん」
「そ、そうね…」
「そうしましょう…」
まぁ、伊勢海老は無いと思いますけど。
私は、ぎこちなく返事をした。