51話 カコシ登場
「「「ドオオオオオオオオオオオオオオオオオ―」」」
「「「ピシャアアアアアアアアアアアア―ン!!」」」
あれから…時間がどれほど、経ったのでしょうか。
腕時計を見たら、夜中の2時でした。辺りは…激しい雷雨と共に、黒い何かが蠢いて見える不気味な霧が、視界を遮っていて、漆黒の闇に包まれていた。
「…」(私)
この霧は、多分『カコシ』なのでしょうか。
グレイシスさんから、話しを聞いた通りの不気味な霧ですね。
そして絶賛、大量発生していました。
私の目の前にはー
強雨にうたれたルイアの墓が、変わらずに佇んでいる。
私は、傘を差す事も忘れて…
ずぶ濡れになりながら、ただ呆然と立ち尽くします。
「ルイア…」
私はルイアの墓に向かって、口を重たくして呟く。
私の頭の中には、この少女が生きていた時の記憶が、その光景と共に一気に甦っていた。
このイブという少女が過ごしていた、かつての日々―
遠く彼方の記憶
それは、まるで…
長い夢を見ているかの如く、実際にイブになった様な感覚になりながら、私の頭の中を流れていった。
「…」(私)
一部、地球の記憶が混ざって、変な部分もあった気がしたけどね。
「おはよオオオ~!!」
「あっ、ゼニィー」
ゼニィーが、私に声をかけます。
ゼニィーに聞くと…ゼニィーにも私の記憶が流れ込んで来たらしく、私と同じ今、目覚めたみたいです。
「イブも、中々苦労してたんだね~!!」
「凄く悲しいよ~!!」
「そうね…」
私は、染々と言う。
「イブって、大人なのに…色々な人から子供だと間違われて、とても苦労していたんだね。悲しいね…」
「…」(悲しむ点、そこですかっ!!)
「そ、そうね…」(まぁ、でも私も子供かと思ったけどね…)
「…」(私)
この人、その事を酷く気にしていたみたいだから、これ以上は触れないでおきましょう。
そして―
気持ちを整理する暇も無く、私の中にジワジワと途轍もない程の感情が沸き上がる。まるで、身体中が泣いている様な感じだ!!
私は、今にもー
泣き叫びたくなる程の悲しみに襲われる。
行き場の無い、感情の波が私の心を今にも粉々に壊そうとする。
この『イブ』という人物のとても大切な人であったルイアと…無情にも引き裂かれてしまった悲痛な思いを―
いや、イブにとっての大切な人では無い!!
それは、もう私自身(地球の俺)が、大切な家族を失ってしまった様な感覚であった。何故でしょうか。このイブと身体が同じだからでしょうか。
いや、今はそんな事を考えるよりもー!!
私は、今まで起きた事を思い出して、考えを巡らす。
あの悪夢に出てきて…屍の山に立っていたのは、ルイアだ。
周りには…この『カコシ』と同じ蠢く黒いものがあった。
そして、そして…
ルイアがいた場所は、慟哭の教会だ!!
それは、すぐに分かった。
だって、慟哭の教会は―
―私とルイアが、よく通っていた教会だったから―
私は、確信する。
この『カコシ』を操っているのは、ルイアだと―
「「行くよっ!!」」
「「ゼニィー!!」」
「えっ、ウソ!!」
「てか、どこに行くの~!?」
「「もう怖いなんて、言ってられるかアアアア!!」」
「え~、ちょっと待ってよオオオオー!!」
私達は、すぐに慟哭の教会に向かう事に―




