戦漸弩兇 鷭碑鷲膳 諷昂舞嶄 夢想無双
「ここがイベント会場?」
光が収まって、シロンが目を開けてみると、知らない森の中にいた。
かなり高い木で、根の方は見えない。
緑は置いておいて、ピンク色の葉をしている木は、毒みたいで不気味な雰囲気になっている。
「ここで、できるだけ沢山の人を倒せばいいんだね!」
周囲から、他のプレイヤーのものと思われる羽音が聞こえてきたので、そっちに飛んで行った。
「ん?……誰かいるな」
イベントに参加したけんた君は、羽の音に反応して振り返った。
前やっていたゲームで耳を鍛えたお陰で、索敵は簡単にできる。
剣を構えて、音の主を見てみると……白い塊がすごいスピードで飛び回っていた。
「スピード強化タイプのスキルか?」
だが、けんた君のスキルは【タカ】で、ターゲットを一人設定し、そいつの位置がいつでも分かる上、与えるダメージが上昇する。
タカは執念深い性格をしていて、一度狙いを定めるとしつこく追いまわすので、こういう能力になっているのだ。
もう白い塊にターゲットは設定してあり、どう動いてるか分かる。
どうせスピード特化で、ろくな火力は出せないだろうから、このスピードに慣れた後に攻撃したらいい。
そう思い、白い塊が近づいてきて……
「グア!?」
火力はないハズなのに、一撃で吹っ飛ばされた。
HPバーを見ると、残り2割まで減っている。
さらに、ターゲット設定したやつが、けんた君が吹っ飛ばされた先に回り込んだみたいで、
「とー!」
残り2割のHPも消し飛ばされた。
「うあ!」
「ック!」
「な、なんだあいつ!?」
バトロワの最中、数十人が集まっている場所があったので、木に隠れてハイエナ狙いをしていると……数十人で乱戦をしているのではなく、数十人で一人を狙っているらしい。
「〈ファイアボール〉」
「〈地槍〉」
様々な種類の魔法が飛び交い、剣や槍が振るわれる中で、狙われている幽霊みたいな奴はその全てを避け、
「パーンチ!」
「グフッ!」
また一人、蒼い拳で吹っ飛ばした。
「……なんだありゃ?」
どんなスキル使ったらああなるんだ?
あんなのに構っていられるかと、踵を返した所で、
「ドーン!」
「ヴッ……どけぇ!」
「はぁ!?」
こっちに吹っ飛んで来た奴に圧し潰されて、死んだ。
「本当になんなんだアレは!?」
その後も途中で合流してくる人も合わせて幽霊に立ち向かうが、一向に勝てる気配がしない。
そして遂に、
「こんな強いプレイヤー……そうか、分かったぞ!あれはプレイヤーじゃなくてNPCだ!」
間違った結論にたどり着いた。
「どういうこと?」
「あんなチートみたいな奴がいる訳ないだろ。あれはきっと、イベントマップに特別に配置された、ボスモンスターみたいなもんなんだよ」
「そうか……そうに違いない!」
「やってられるか!俺は降りるぞ」
「えー、でもボスモンスターなら、討伐したら……」
「したい奴だけで勝手にやってろ!」
こうして、数人のプレイヤーを残して、ほとんどのプレイヤーはどこかに散らばっていってしまった。
去り際に、
「あれがナウのトップですか。……面白そうデース」
そう言って、逃げる人と反対方向を向く人がいた。




